「たんぽぽクイズ」で主体的に説明文を読む
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執筆者: 青山 由紀
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単元名:「たんぽぽのちえ、はっけん」 教材:「たんぽぽのちえ」(光村図書2年上) 授業者:青山由紀(筑波大学附属小学校教諭)
青山由紀先生による、「たんぽぽのちえ」(光村図書2年)の授業を公開します。単元の導入にあたる本時(第1時・第2時)は、たんぽぽクイズの答えを予想し、教科書を読んでヒントを見つけることを目標に、教材を読んでいきます。子どもたちの知っている知識や生活科で既習のアサガオの特性などと比べながら、クイズに対して様々な考えが出されています。子どもが前のめりで授業に取り組む様子をご覧ください。
私たちが説明的文章を読むのは、書かれている内容が知りたいからです。それは、子どもであっても、授業であっても同じです。ところが、子どもが知りたいことと指導者のねらいは異なるため、教えたいことをつい優先させがちです。すると、子どもは受け身の姿勢で説明文を読むこととになってしまいます。
本単元では、導入のクイズで教材文を読む必然をもたせ、意欲的、主体的に読むように仕組みました。また、クイズの中に第1教材を読むだけでは解けない問題を入れておくことで、第2次へと子どもの「問い」がつながるように単元を構想しました。
第一次 | 「たんぽぽのちえ」を読む (1~6時) |
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第二次 | 「たんぽぽ」を読む(7・8時) |
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第三次 | 科学的読み物を読む(9・10時) |
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これまで、教科書の扉詩として掲載されている「たんぽぽ」(まど・みちお)を練習してきた。授業のはじめに、暗唱発表を行う。発表者の表現をよく聞き、評価させることで、自身の読み方によいところを取り入れたりできるようにさせたい。話の聞き方として「目で話をきく」ことをクラスルールとしており、聞く側の子どもも全体でとりあげて評価している。
青山:「たんぽぽ」の暗唱に挑戦できる人?
-たくさんの児童の手が挙がる。暗唱する児童は前に出て、クラス全員と目を合わせながら読んでいく。
聞く人は暗唱のあと、★1~3(それ以上は4)で評価をしていく。 ※★1 正しく/★2 はっきり大きな声で/★3 感じを出して
青山:みなさん、よく読めましたね。「感じを出して」もよかったですよ。 聞く人も、目でしっかり握手できていた人が増えましたね。続きはまた次回にしましょう。
デジタル教科書のワークから、準備しておいた「たんぽぽクイズ」へと入った。身近なたんぽぽについて「意外と知らないことが多い」と興味を喚起し、教材を主体的に読む態度作りをねらった。答えやすい○×クイズとし、テンポよく進めたいところである。
青山:ところで、みんなは「たんぽぽ」を知っていますか?
児童:知っています!
青山:本当に? では、黒板をみてください。問題です。たんぽぽの花はどれでしょう?
1番だと思う人は1、2番だと思う人は2、3番だと思う人は3を手でだします。せーの!
全児童:(3を手で示す)
青山:みんな3ですか? では、1は何ですか?
全児童:アサガオ!
青山:1年生に種をあげるからみんなで準備したよね。2は何でしょう?
全児童:トマト!
青山:写真の中にヒントがありましたね。では3が?
全児童:たんぽぽ!
児童:花がなくても葉っぱの形で分かる。
青山:たんぽぽについて詳しそうですね。では、さらに問題を出します。ノートを出して、日付から書きましょう。
題名は「たんぽぽ」でかぎとじなしにしておいてください。たんぽぽクイズと書きます。問題は書かなくてよいですよ。
第1問「たんぽぽの黄色い花は、さいてから二、三日たつとかれる。」5秒で○か×か、予想をノートに書いてください。あとで変えてもよいです。○だと思った人?
-数名の児童が手を挙げる
青山:×だと思った人?
-多くの児童が手を挙げる
青山:では、×に手を挙げた人はどこが違うと思いましたか。
児童:枯れないと思う。
青山:では、第2問。みんなで読みましょう。
全児童:「黄色い花はひるまはひらき、夕方にはとじる。」
児童:何かの花で似たようなことを聞いたことある
児童:アサガオの花じゃない?
青山:たんぽぽではどうでしょうか。○だと思う人?
-児童数名が手を挙げる
青山:×だと思う人?
-○よりも多い人数の児童が手を挙げる
青山:では、次に第3問。
児童:「わた毛ができるころに、じくがのびて、せいをたかくする。」
青山:わた毛って何ですか?
児童:わた毛は種みたいで、飛んでいって、土に落ちてそこからまたたんぽぽが咲く。
青山:では、「じく」はどれか分かる人、前に来て指してみて。
児童:このあたりじゃないかな(花のうらのあたり)。
児童:くきの部分じゃないかな(くきの部分を指して)。
青山:今言ってくれたように「くき」とも言うけれど、ここでは「じく」と言います。
青山:〇だと思う人?
-3分の2の児童が手を挙げる
青山:×だと思う人?
-3分の1の児童が手を挙げる
青山:では、第4問。
児童:「たんぽぽのねは、百センチいじょうのものもある。」
青山:百センチはどのくらいかというと・・・・・・。地面の下にこのくらい根が生えているということですね(定規で黒板に線を書きながら)。
児童:そんなに長いのはありえないよ。
青山:○だと思う人?
-数名の児童が手を挙げる
青山:×だと思う人?
-多くの児童が手を挙げる
青山:次の問題です。「たんぽぽの花は一つである」○か×か。〇だと思う人?
-だれも挙手しない
青山:×だと思う人?
-ほとんどの児童が手を挙げる
青山:では、最後の問題にいきます。読んでください。
児童:「わた毛は、いつもいっぱいにひらいている。」
児童:えーこれは分かるでしょ。
青山:つぼみから花が開いたあと、閉じたりしない?
児童:風で飛んでいくから、開いている。
青山:アサガオは開いた後、夕方にはしぼむのですよね。わた毛もそうなるかな? 〇だと思う人?
-半数の児童が手を挙げる
青山:アサガオみたいに、しゅんとなる。×だと思う人?
-半数の児童が手を挙げる
1年生で学習した「段落」の復習である。全員が一斉に指で示すことで、誤っていたり困ったりしている子どもを容易に把握できる。答えがどこに書かれているかを共有できるよう最初に段落番号を振らせ、答えを見つけさせた。
青山:このクイズの答えを先生はまだ言いません。
教科書にたんぽぽのお話が書いてあるので、読んでみましょう。
みんなで読む前に、全部で何段落あるか番号を振ってください。
-児童がそれぞれ教科書に段落番号を振る
青山:では、聞いてみます。段落の番号をいくつふれたか手で示してください。せーの。
-児童がそれぞれ手で、10や9、8と示す
青山:では、段落読みで順番に読み、確認しましょう。ふりがなをふってもいいです。また、クイズの答えを見つけたら、線を引いておきましょう。
-児童が段落ごとに順に音読していく(段落番号を確認しながら)
青山:全部で何段落でしたか?
全児童:10段落。
青山:では、隣の人と段落が間違っていないか確認しましょう。
-児童がペアで段落を確認する
青山:もう一度音読します。先ほど線を引き忘れた人も、今度はクイズの答えのヒントが分かるところに線を引きましょう。
-児童が段落ごとに順に音読していく(線を引きながら)
青山:問題1の「たんぽぽの黄色い花は、さいてから二、三日たつとかれる」のヒントはありますか?
児童:あった!
青山:ヒントが書いてあるページを開いてください。何段落に書いてある?
児童:2段落!
児童:2段落と3段落。
青山:前にでてきて、どこかを教えてくれる人?
児童:2段落の「二、三日たつと、その花はしぼんで、だんだん黒っぽい色にかわっていきます。」の文。
青山:二、三日たつと黒っぽくなるということは、枯れるからではないの?
児童:ちがう、3段落に「かれてしまったのではありません」と書いてある。
青山:本当だ。「けれども、たんぽぽは、かれてしまったのではありません。」とありますね。二、三日たつと黒っぽくはなるけど、枯れないから答えは×でしたね。
<<第1時はここまで 以下に本時の板書を示す>>
第1時では、1問ずつ提示して考えさせることで、全員が同じ話題に集中して取り組めるようにした。ノートには、問題の番号と○か×かの記号しか書かれていない。そのため、問題文の書かれたワークシートを配り、答えやその根拠となる段落番号も書き入れさせるようにした。
青山:問題が書いてあるプリントを配るので、1問目のところに答えの「×」と書いておきましょう。でも、普通は黒くなったり、倒れたりしたら枯れているでしょう? 枯れてないという証拠はあるかな? 隣の人と話してください。
-児童がそれぞれ隣同士で確認
青山:先ほど見つけたヒント以外に証拠がありましたか?
児童:「花とじくをしずかに休ませて」の文。
青山:枯れたのではなくて、休憩中ということ?
児童:みんなが夜寝るように、わた毛をつくるために倒れて横になって休んでいる。
青山:今、言ったことは分かった?
児童:みんなが横になって寝るように、たんぽぽも横に倒れて休んだ方が栄養をたくわえられるのではないかということ。
児童:人間が寝ると背が伸びるのと同じで、たんぽぽもわた毛になった後に背を伸ばすために備えて栄養をためているのだと思う。
青山:でも、栄養をつくっているってどこかに書いているの?
児童:栄養をおくっているとは書いてある。
青山:どこにある?
児童:「たねに、たくさんのえいようをおくっているのです。」の文。
青山:種に栄養をおくるというのは、どこからどこに? 土から花の方に? それとも花の方から地面の方に? 話してください。
-児童が隣同士で確認する。
青山:栄養はどこからどこにいっているの? どちらの矢印の向きだろう。
児童:ぼくは、地面から花の方に栄養がおくられていると思う。なぜかというと、地面にたくさん栄養があってそこから栄養を取り入れられるから。
児童:ぼくは、種はこれから作る花のほうだから、地面から花の方だと思う。
児童:私はどっちもだと思う。栄養は地面からくるけど入りきらなかったら下にもどる。
青山:証拠はある?
児童:証拠はないけど、そう思った。
青山:証拠があればそうかもしれないね。証拠で確認してみますよ。栄養は地面から花の方にいって、種をどんどん太らせる。文章から分かるのは青色の矢印の方だったので、教科書に書いておきましょう。
児童:違う意見なんだけど、二、三日たつと黒っぽくなると書いてあるから、そのときには花から地面の方に栄養がもどって、倒れて休んでいるときには反対に栄養を戻していると思う。
青山:なるほど。整理しましょう。
青山:第1問の答えは「×」で、その理由は何でしたか?
児童:花とじくを休ませていた。
青山:では、ワークシートに理由も書いておきましょう。花とじくを休ませて・・・・・・。何のために?
児童:種に栄養をおくるため。
青山:では「たねにえいようをおくるため」も書いておきましょう。
青山:2問目の答えは書いてあった?
児童:書いてなかった。
青山:教科書には書いてなかったね。ほかの本を調べてみたら答えが見つかるかもしれないですね。2問目は「?」を書いておきましょう。
では、3問目は? 証拠が見つかった人?
児童:6段落「そうして、せのびをするように、ぐんぐんのびていきます」の文。
青山:6段落に答えが書いていましたね。では3問目は「〇」ですね。続いて第4問、これは〇ですか? ×ですか?
児童:分からないから「?」。
青山:教科書には答えは載っていなかったのですね。第5問はどうでしょうか。
児童:僕は、花びらみたいに見えるものが花一つひとつで、たくさん集まって一つの花のように見えているのだと思う。
児童:私は花の離れているところで一つだと思う。
青山:これも証拠が書いてないから、確認してみないといけません。第6問はどうでしょうか。わた毛はいつもいっぱいに広がっている?
児童:「すぼんで」の意味が分からない。
児童:辞書で調べたらいいよ。
青山:では、辞書を持ってきている人は「すぼむ」の意味を調べてみましょう。
児童:咲いている花が閉じる。すぼむ。花がすぼむ。だんだん細くせまくなる。
青山:では、みんなでやってみましょう。開くは?
―全員で手を広げて、わた毛が開いているように表現する
青山:すぼむは?
―手を閉じて横に倒れたり、細くなったりとすぼんでいるように表現する
児童:先生、わたげは開いたり閉じたりすると思う。
青山:どういうこと? 今言ってくれたことが分かった?
児童:わた毛全体がすぼむというか、毛のところだけ開いたりすぼんだりするんだと思う。
青山:毛の一つひとつが・・・・・・?
児童:開いたり、すぼんだりする
青山:いつもいっぱいに開いているわけではないんですね、証拠はどこ?
児童:9段落。
青山:開いているのはどんなとき?
児童:天気がいいとき。
児童:種が飛んでいくときは開いていないと飛んでいかない。
青山:天気のことが出てきましたが、教科書に書いてあった? 隣の人と確認してください。
児童:「しめり気の多い日や、雨ふりの日には、わた毛のらっかさんはすぼんでしまいます」の文。
児童:「よく晴れて、風のある日には・・・・・・」も書いてある。
青山:8段落は晴れたとき、9段落はじめじめしているときのことが書いてありますね。プリントにも理由を書いておきましょう。
「晴れているときは~、でも〇〇のときは~」という形で書いて下さい。
―児童がそれぞれプリントに書き込む
青山:そうだ、大事なことを忘れていました。「たんぽぽ」の話だけど、題名は「たんぽぽ」ではなかったですね。
児童:「たんぽぽのちえ」。
青山:「ちえ」ってなんだろう。
児童:考えていること。知っていること。
児童:かしこさ。
青山:たんぽぽって考えたりするのかな? 次回はそこから考えていきます。
授業が終わってからも「何となく『ちえ』って分かる気がする」「1問目は『ちえ』だと思う」「答えがわからなかった問題が気になる」「何で調べたらわかるのかな」という声が聞かれた。導入でありながら、答えの証拠の叙述を指摘させることで内容を読み取り始めた。次時には、そのまま「『たんぽぽのちえ』とはどのようなものか」「いくつのちえが書かれているか」と、子どもの問いがつながり、読み進めていくことができた。
また、図書室や電子書籍読み放題サービス「Ymokka!」(ポプラ社)で、自主的にたんぽぽに関して調べる姿も見られた。まだ答えのわからないクイズについて、第二次で指導者がリライトした文章を使った情報読みにも無理なくつなげることができそうである。
※撮影は4月に行いました。授業中の児童のマスク着用については、個人の判断です。
青山 由紀(あおやま・ゆき)
筑波大学附属小学校教諭
全国国語授業研究会理事/日本国語教育学会理事/光村図書小学校『国語』教科書編集委員
文学の授業における、初発の感想を書かせるという活動に替わるものとして、「読後感」を書くという実践を以前掲載した。これを基にした授業づくりについてこれから述べていきたい。 文学作品に出合ったときの新鮮な気持ちを大切にしたいと思う。教師主導で学習課題を設定することもあるだろうが、やはり子どもが自ら読んでいくための問いをもてるようにするためにはどうしたらよいかと考えたとき、読後感から問いをつくっていくということは、その1つの方法であると考える。
記事を読む今回は、田中元康先生(高知県・高知大学教職大学院教授/高知大学教育学部附属小学校教諭)に、教材「インターネットは冒険だ」(東京書籍・5年)の授業づくりの工夫について、紹介していただきます。説明文の学習で当たり前のように行われる「要旨をまとめる」とはどういうことなのか。あらためてその意味や方法を確認しながら学ぶことで、汎用的な読みの力が育ちます。
記事を読む本教材「まいごのかぎ」(光村図書・3年)は、登場人物 りいこが次々と遭遇する不思議な出来事が、第三者目線とりいこの視点とを織り交ぜて描写されることで、読み手もまるで巻き込まれていくかのように展開し、ワクワクしながら物語の中に入り込むことができます。 今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、一つひとつの叙述を自身の経験を想起しながら丁寧に押さえ、りいこの気持ちや行動と比較することで、人物像に迫っていく授業づくりを、紹介していただきました。
記事を読む今回は髙橋達哉先生(東京都・東京学芸大学附属世田谷小学校)に、新教材「文様」(光村図書・3年上)について、続く教材「こまを楽しむ」を踏まえた上で分析し、授業づくりのポイントとその具体例を紹介していただきました。 3年生はじめ、説明文に親しむための【れんしゅう】として、本教材にはどのような特性があるのでしょうか。 また、どのようにすれば主体的に読みを深められるのか、「ゆさぶり発問」のアイデアにもご注目ください。
記事を読む柘植遼平先生(千葉・昭和学院小学校)に、新教材「アイスは暑いほどおいしい?―グラフの読み取り」の授業づくりについて、「雪は新しいエネルギーー未来へつなぐエネルギー社会」と合わせて紹介していただきました。 今回の新教材の追加で、グラフや表などの資料が筆者の主張を分かりやすく伝えるための工夫として、捉えやすくなったことに着目し、資料を中心に説明文読解が深まるような単元づくりを行います。
記事を読む今月の5分で分かるシリーズは、藤平剛士先生(神奈川県・相模女子大学小学部)に、授業開きで確認し合いたい、すべての学びの基礎となる4つのスキルについて、実際の授業展開に沿ってご紹介していただきました。
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