
「友情のかべ新聞」で自分なりの『読み』をもち、子どもの『問い』に臨む
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執筆者: 山本 純平
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本教材「友情のかべ新聞」は、対立していた東君と西君が、失敗を隠そうとする中でお互いを理解し、友情を深めていく物語です。2人の変化を観察・推理する、いわゆる探偵視点の語り手である「ぼく」も、クラスや人間関係に関心をもつように変容しています。
今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、本教材の授業づくりを行うに当たって、「何が、どうして、どのように変化したのか」叙述から丁寧に整理をする教材研究の方法をご提案いただきました。子どもの「なぜ?」を引き出し、なぞについて整理し、読み進めたくなる意欲を生む仕掛けが見いだせることでしょう。
文学作品の教材分析では、何が何によってどう変わったかを把握したい。そのためには、登場人物を把握しておく必要がある。教科書の文学作品では、最初の場面に設定が書かれていることが多い。まずはそこから人物像を整理する。
文学作品の教材分析では、何が何によってどう変わったかを把握したい。そのためには、登場人物を把握しておく必要がある。教科書の文学作品では、最初の場面に設定が書かれていることが多い。まずはそこから人物像を整理する。
ぼく |
気になることは答えが出るまで考え続ける。 必ず答えにたどりつく。(しかし、時間がかかる) 東君と西君の関係をあまり気にしていない。 |
東君 |
西君と、とっても仲が悪い。 好きなのは サッカー、算数、ねこ、青色 |
西君 |
東君と、とっても仲が悪い。 好きなのは 読書、国語、犬、赤色 |
クラスのみんな |
東君と西君の関係にあきれている人と、おうえんしている人がいる。 |
中井先生 |
東君と西君をしかっている。 |
「母さん」は登場人物に入れない。物語が動き出すp.68以降、全く名前が出てこなくなるため、子どもたちも納得するだろう。
設定場面の「母さん」は「ぼく」の人物像の補足をする役割をもっている。それは、答えにたどり着くまでに時間がかかるというものだ。
では、この物語は「何が何によって、どう変わった話」なのだろうか。すぐに浮かぶのは、東君と西君の関係性の変化だろう。
「対抗心を燃やし合っていた東君と西君が、仲よくなった」という変化である。失敗を隠そうとお互いを監視し合ったことによって、お互いの理解が深まったため仲よくなったのだ。
また、東君と西君を見つめる先生の変化、クラスのみんなの変化もある。 特に クラスのみんなの変化は、東君と西君の変化を読み取るより、1つ深まった読みとなる。
設定場面でのクラスみんなの反応を見直してみよう。みんなの反応は、2人にあきれたり、応援したりと割れていた。2人の大さわぎに対して、同調するか、引いているかの二択なのだ。 最後の場面を見ると、クラスのみんなは、2人が仲よくなったことに嬉しさを感じるようになっている。みんなでまとまって、仲よく過ごすことに価値を見いだしている。東君と西君が本当に仲よく過ごす姿を見ることで、クラスのみんなに変化が生じたのだ。
さらに、「ぼく」自身も変わっている。「クラスの人間関係を気にしていなかったのが、クラスの人間関係に興味をもつようになった」と読み取れる。
子どもたちが読み進むうえで、「ぼく」の変化に気づく子もいるだろう。しかし、子ども自身がその根拠を言語化することが難しい。そんな場合は、教師が注目する叙述のヒントを出すとよい。
p.67「ぼくは、あまり気にしていない。」とp.79「今度、二人がかべ新聞を作ったら、いったいどんなものになるのだろうって。」という最後の一文を比較することで、根拠を明確にして「ぼく」が変わっていることを説明することができるようになる。
また、p.74「そんな中、ぼくは思い切って、────。」の一文も重要な根拠となる。クラスのみんなから距離を置いていた「ぼく」が、思い切って距離を詰めに行ったのだ。東君と西君の関係性は、クラスみんなが注目していた問題だ。東君と西君の問題に関わることは、クラスに関わることと同じ意味をもつ。
「ぼく」の変化のきっかけは、西君と東君が作ったかべ新聞に違和感をもったことである。
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