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    5分でわかる 子どもの学びが深まる発問のスキル -どうする? 文学的な文章での発問-

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    5分でわかる 子どもの学びが深まる発問のスキル -どうする? 文学的な文章での発問-

    5分でわかる 子どもの学びが深まる発問のスキル -どうする? 文学的な文章での発問-

    執筆者: 来栖 称子

    |

    2025年8月28日

    8月号の「5分でわかるシリーズ」は、来栖称子先生(東京都・練馬区立開進第三小学校)に、国語の授業で子どもの思考を促すためには、どのような発問が考えられ、何を意識して行えばよいのかについて、ご提案いただきました。
    今回は特に、展開部分で学びを深める焦点化発問に着目し、登場人物の心情や物語の構造に迫れるような、子ども主体の対話的な学びを促す発問例についてご執筆いただきました。

    目次

    1. 発問って難しい! 2. 何を意識して発問を考えるのか 3. どんな発問をすることで、子どもの学びが深まるのだろうか

    1. 発問って難しい!

    先日、本校の教員と話していたときのことである。

    • 「物語の授業って難しいですよね」
    • 「そうですよね。先生はどんなときに一番難しさを感じていますか?」
    • 「登場人物の気持ちを問うような一問一答になってしまって、授業をうまく展開できないんです」
    • 「どんな発問をすれば、子どもたちが前のめりに授業に参加するのでしょうか……」

    熱心な若手の先生たちである。自分が授業を引っ張るのではなく、子どもたちを主役にした授業をしたいと考えているからこその悩みだと言える。
    子どもの思考は教師の言葉がけで変わってくる。どんな力を付けさせたいのか、何を考えてほしいのか、教師が意識して「子どもの学びが深まる発問」をすることが大切である。

    では、具体的に何を意識して発問を考えればよいのだろうか。
    さらに、どんな発問をすることで、子どもの学びが深まるのだろうか。

    2. 何を意識して発問を考えるのか

    石井英真氏は『授業づくりの深め方-「よい授業」をデザインするための5つのツボ-』(ミネルヴァ書房、2020)の中で、発問の機能の1つを「教科内容に即して子どもの思考を促し、教師が教えたいものを発見させ」るものであると述べている。

    「子どもの思考を促す」とはどういうことだろうか。国語科における発問を考えるときに、私は以下の3つを意識するようにしている。


    ①子どもたちが、私はね……! だってさ……! なぜなら……! と言いたくなるような発問になっているか


    わかったことにうれしさや楽しさを覚え、子どもたちの表情がぱっと変わり前のめりになる瞬間がある。教師に教えてもらってわかるのではなく、自分で気づいたときほどこの喜びは大きくなると感じる。教師が気づきにつながる発問をすることによって思考を促し、子どもが自分の力でできた、わかったと思えるようにしたい。


    ②子どもたちが本文に目を向けたくなる発問になっているか


    ともすれば、想像が広がりすぎて物語と離れて思いを語ってしまう場合がある。国語の力を高めるには、子どもたちが根拠をもって話すことを身に付けさせたい。どうしてか、なぜそう思ったのかを本文から探し、自分の考えと結び付けるような思考を促す発問をする必要がある。


    ③友だちはどうだろうかと、他の人の考えを聞きたくなる発問になっているか


    自分はAだと思って疑わなかったのに、隣の友だちは絶対にBだと言っている。こんな様々な考えが出てくることが、子どもにとっても教師にとっても授業のおもしろいところである。そして考えのズレが生まれたあとには決まって、「なぜだろう?」という思考につながる。ズレが生まれる発問をすることで、思考を促したい。

    これらの発問はすべて、子どもの学びが深まるかという前提で考える必要がある。その発問でどんな思考がなされるのか、ねらいにせまり、学びを深められる発問にしたい。

    白坂洋一氏は『子どもの思考が動き出す 国語授業 4つの発問』(東洋館出版社、2021)において、発問数の多さが一問一答形式に陥り、子ども主体の授業から遠ざかってしまうことを指摘した上で、授業展開における発問構成を以下の4つに分類している。

    • [導入] きっかけ発問
    • [展開] 誘発発問
    • [展開] 焦点化発問
    • [終末] 再構成(再考性)発問

    これらは、「教師の教えたいことを子どもたちから引き出す」ための発問構成であり、子ども主体の授業によって学びを深める方法である。

    ここでは、「焦点化発問」を中心に考えていく。
    焦点化発問とは、

    「論理構成に着目したり、新たな視点を取り入れたりすることで学びがより一層深くなることを意図した発問」

    としている。
    つまり学習の展開場面において、題名、初めと終わりの行動や言葉の違い、中心人物の心情の変化など、考えが焦点化されるよう意識した発問をすることで、教師が教えたいことを詰め込みすぎて子どもも教師も苦しくなってしまう……という授業を回避することができる。

    3. どんな発問をすることで、子どもの学びが深まるのだろうか

    教師主導で授業が進むのではなく、焦点化発問を通して、子どもたちが考えたい、聞きたい、読みたいと前のめりになり、目を輝かせる姿を目指したい。 例えば、文学的な文章の展開場面では、次のような発問が考えられる。

    • このときなんて言っていると思う?
      「がまくんとかえるくんは、お手紙を待ちながらなんて言っていると思う?」
      2年「お手紙」
      → 書かれていない2人の会話を想像することで、初めの玄関前の様子からどのように変化したのか考えさせたい。

    • 初めの○○と最後の○○で変わったことは何かな?
      「初めのかげおくりと最後のかげおくりで変わったことは何かな?」
      3年「ちいちゃんのかげおくり」
      → 始めと終わりの行動で変わっていないことと変わったことを、登場人物や語り手、読み手の視点から考えさせたい。

    • ○○したかったのかな?
      「ごんは兵十に気づいてほしかったのかな?」
      4年「ごんぎつね」
      → こっそりつぐないをしていたにもかかわらず、神様のしわざと言われたことを引き合わないと思う、相反する言動に着目し、ごんの心情を考えさせたい。

    • 本当に○○なのかな?
      「東君と西君は、本当に仲よくなったのかな?」
      4年「友情のかべ新聞」
      →「本当に?」とゆさぶりをかけることで、それまでの東君と西君との変容を考えさせたい。

    • ○○になんて伝えたと思う?
      「家に帰ってお母さんになんて伝えたと思う?」
      6年「たずねびと」
      → その場にいなかった母に何を言うか問うことで、綾の心情の変化を考えさせたい。

    • 登場人物の気持ちが一番変わったところはどこだろう? なぜ変わったのかな?
      「カルの気持ちが大きく変わったところはどこだろう?なぜ変わったのかな?」
      6年「ぼくのブック・ウーマン」
      →「一番」と問うことで、物語の主題について考えさせたい。

    • なぜこの題名にしたのかな?
      「作者はなぜ十二月にしか出てこないやまなしを題名にしたのかな?」
      6年『やまなし』
      → 題名について問うことで、作者が落ちてきた「やまなし」にどんな意味を込めたのか考えさせたい。

    もちろん、これらの発問が子どもたちの問いとして上がってくることもあるだろうし、この発問をしても、ねらいや子どもたちの思考の流れにそぐわなければ、意味をなさないこともある。
    子どもたちが何に疑問を覚え、何がわかれば自分の思いや考えを話したくなる授業になるのか、ねらいを明確にし、学びが深まる発問を精選していきたい。



    【引用・参考文献】

    • ・石井英真(2020)『授業づくりの深め方-「よい授業」をデザインするための5つのツボ-』ミネルヴァ書房
    • ・白坂洋一(2021)『子どもの思考が動き出す 国語授業4つの発問』東洋館出版社

    来栖称子(くるす・しょうこ)

    東京都・練馬区立開進第三小学校

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