
5分でわかる 子どもの学びが深まる発問のスキル -どうする? 文学的な文章での発問-
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執筆者: 来栖 称子
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8月号の「5分でわかるシリーズ」は、来栖称子先生(東京都・練馬区立開進第三小学校)に、国語の授業で子どもの思考を促すためには、どのような発問が考えられ、何を意識して行えばよいのかについて、ご提案いただきました。
今回は特に、展開部分で学びを深める焦点化発問に着目し、登場人物の心情や物語の構造に迫れるような、子ども主体の対話的な学びを促す発問例についてご執筆いただきました。
先日、本校の教員と話していたときのことである。
熱心な若手の先生たちである。自分が授業を引っ張るのではなく、子どもたちを主役にした授業をしたいと考えているからこその悩みだと言える。
子どもの思考は教師の言葉がけで変わってくる。どんな力を付けさせたいのか、何を考えてほしいのか、教師が意識して「子どもの学びが深まる発問」をすることが大切である。
では、具体的に何を意識して発問を考えればよいのだろうか。
さらに、どんな発問をすることで、子どもの学びが深まるのだろうか。
石井英真氏は『授業づくりの深め方-「よい授業」をデザインするための5つのツボ-』(ミネルヴァ書房、2020)の中で、発問の機能の1つを「教科内容に即して子どもの思考を促し、教師が教えたいものを発見させ」るものであると述べている。
「子どもの思考を促す」とはどういうことだろうか。国語科における発問を考えるときに、私は以下の3つを意識するようにしている。
わかったことにうれしさや楽しさを覚え、子どもたちの表情がぱっと変わり前のめりになる瞬間がある。教師に教えてもらってわかるのではなく、自分で気づいたときほどこの喜びは大きくなると感じる。教師が気づきにつながる発問をすることによって思考を促し、子どもが自分の力でできた、わかったと思えるようにしたい。
ともすれば、想像が広がりすぎて物語と離れて思いを語ってしまう場合がある。国語の力を高めるには、子どもたちが根拠をもって話すことを身に付けさせたい。どうしてか、なぜそう思ったのかを本文から探し、自分の考えと結び付けるような思考を促す発問をする必要がある。
自分はAだと思って疑わなかったのに、隣の友だちは絶対にBだと言っている。こんな様々な考えが出てくることが、子どもにとっても教師にとっても授業のおもしろいところである。そして考えのズレが生まれたあとには決まって、「なぜだろう?」という思考につながる。ズレが生まれる発問をすることで、思考を促したい。
これらの発問はすべて、子どもの学びが深まるかという前提で考える必要がある。その発問でどんな思考がなされるのか、ねらいにせまり、学びを深められる発問にしたい。
白坂洋一氏は『子どもの思考が動き出す 国語授業 4つの発問』(東洋館出版社、2021)において、発問数の多さが一問一答形式に陥り、子ども主体の授業から遠ざかってしまうことを指摘した上で、授業展開における発問構成を以下の4つに分類している。
これらは、「教師の教えたいことを子どもたちから引き出す」ための発問構成であり、子ども主体の授業によって学びを深める方法である。
ここでは、「焦点化発問」を中心に考えていく。
焦点化発問とは、
「論理構成に着目したり、新たな視点を取り入れたりすることで学びがより一層深くなることを意図した発問」
としている。
つまり学習の展開場面において、題名、初めと終わりの行動や言葉の違い、中心人物の心情の変化など、考えが焦点化されるよう意識した発問をすることで、教師が教えたいことを詰め込みすぎて子どもも教師も苦しくなってしまう……という授業を回避することができる。
教師主導で授業が進むのではなく、焦点化発問を通して、子どもたちが考えたい、聞きたい、読みたいと前のめりになり、目を輝かせる姿を目指したい。 例えば、文学的な文章の展開場面では、次のような発問が考えられる。
もちろん、これらの発問が子どもたちの問いとして上がってくることもあるだろうし、この発問をしても、ねらいや子どもたちの思考の流れにそぐわなければ、意味をなさないこともある。
子どもたちが何に疑問を覚え、何がわかれば自分の思いや考えを話したくなる授業になるのか、ねらいを明確にし、学びが深まる発問を精選していきたい。
【引用・参考文献】
来栖称子(くるす・しょうこ)
東京都・練馬区立開進第三小学校
今月の「教師の必読書」をご紹介いただくのは、赤木詞友先生(福岡県・北九州市立鴨生田小学校)です。子どもの学び方自体が問い直されている今、授業観、教師観自体も大きく変わろうとしています。これからの教育についてリードする著者の、バイブルともいえる1冊を紹介いただきました。
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