「おかゆのおなべ」 -低学年物語文でも根拠が大切であると実感できる授業-
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執筆者: 柘植 遼平
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単元名:かぎ(「」)の役割をマスターしよう
教材:「おかゆのおなべ」(光村図書・1年)
本教材では、「おかゆのおなべ」の呪文を、誰が知っていて、どのように言ったのかということが、この物語の起承転結をつくる鍵となっています。本教材の学習を通して、物語文を読む上で重要な、会話文を押さえることに意識が向くようになるでしょう。
今回は柘植遼平先生(昭和学院小学校)に、かぎ(「」)の役割や知識を深めつつ、かぎ(「」)が誰のセリフなのか本文を根拠にしながら読み進めることで、文学のおもしろさにふれられるような授業づくりの工夫を紹介いただきました。
目次
国語の読みものの学習は説明文と物語文の2つに大別される。説明文は、客観的に読みやすいこともあり、本文を根拠に具体的な言葉に注目しやすく、用語などの指導事項について、系統を意識した読みがわかりやすい。その反面、物語文の学習は登場人物の気持ちを問う活動があることから、どうしても主観的であったり、抽象的な学習になりがちであったりした。もちろん、物語文も言葉にこだわり、本文を根拠にした授業の実践例はいくつもある。しかし、いまだに気持ちのみを問うような実践も見受けられる。それが悪いとは一概にはいえないが、系統を考えていく上では必ずしも適切とはいえない。
そこで、この課題を解決すべく、より系統を意識した授業ができないかと考えた。系統を意識する上では、該当学年で必要な知識や用語の学習をきちんと行っておく必要がある。
光村図書の場合、1年生の物語では、
の学習が必要である。
現状の学習で、①と②については、1年間の物語文で繰り返し学習することで学ぶことができている。その反面、③については、「くじらぐも」「たぬきの糸車」などで行っているが、十分とはいえない。それは、2年生「お手紙」の学習時に実感することができる。2年生を担任するたびに、すっかり忘れている子どもを何人も目にしてきた。この③を今回は、なんとかしたいと考えた。
国語の学習に限らず、子どもたちは日常生活の中でかぎ(「」)を目にしている。それは、本や絵本であったり、何かの宣伝CMやポスターであったりする。本や絵本の場合はかぎ(「」)が会話文(セリフ)であることが多い。しかし、宣伝CMやポスターなどでは会話ではなく「強調」の役割として使われている。大人はそれを理解しているので勝手に、「1年生で学習したし、よく見るものだからわかっているでしょ」と思ってしまっていることがある。「③カギかっこ=会話文」ということを学んだ後に、詳しくふれる機会が少ないのである。
かぎ(「」)については、算数でいう繰り返し出合うことで理解していく習熟に当たる学習が、1年時に足りていないことを表していると感じた。そこで、かぎ(「」)について学習を行うために適した教材で、授業づくりの工夫を考えた。
近年、様々なところで耳にする「探究」。このキーワードが学習指導要領に位置付けられたのは2008年、なんともう16年も前のことである。 大きな自然災害や世界中で猛威を振るった感染症など、想像もしていなかった様々な出来事が次々と起こり、変化の激しさを実感せざるを得ない現在では、「探究する国語授業」が自分の一番の研究テーマとなっている。 答えのない問題を解決しなければならない社会。このような社会で生きていく子どもたちは、「探究する学び」が必要であろう。授業後も学び続ける子ども、答えのない問題に向き合い粘り強く解決していこうとする子どもを育てていかなければならない。
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。