
「おにぎり石の伝説」 —物語文第一教材からリアルな音読を楽しもう!-
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執筆者: 安達 真理子
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本教材は、おにぎり石ブームがクラスの上下関係をつくりつつあることに違和感を覚えながらも、クラスから取り残されたくないと焦る中心人物「真」の様子が描かれます。おにぎり石の秘密が明らかになる後半は、驚きや喜びから落胆へと、感情の変化を表す会話文が多く、音読を通して人物の心情を想像したくなることでしょう。
今回は安達真理子先生(カリタス小学校)に、おにぎり石に熱狂する匿名の「ぼくたち」と、少し落ち着いている「ぼく」の視点の違いを叙述から捉え、その違いを意識した音読活動を行うことで、登場人物の心情を深く想像することができる授業づくりをご提案いただきました。
中心人物「ぼく(真)」や「ぼく」のクラスメイトたち、対人物「一成」もみな、学習者と同じ5年生である。また、物語が「ぼく」の視点(一人称視点)で描かれているため、学習者は「ぼく」に自分を重ねながら読むことができる。
物語の舞台は、日本のごく普通にある小学校。題材は高学年の学級で起こり得そうな「○○伝説」ブーム。どこにでもありそうな日常の出来事に、学習者は多くの部分で共感を得ながら読むだろう。しかし、ブームには、限られた集団でのみ共有される価値の特殊性や、その価値が一気に膨張していくような流行性、微妙な上下関係が生じかねない危険性も孕んでいる。作者は、これらの真実を軽いタッチで描き出しながら、静かに警鐘を鳴らしているのかもしれない。
中心人物「ぼく」は、ブームの火付け役やリーダー的存在ではなく、また傍観者でもない。しっかりと流行に乗りながら、徐々にもやもやと感じる部分が生じてくる中間層的な立場。もやもやした感情を抱きながらも、それを口に出して周りの友だちから反感を買うことを恐れ、困惑している。ブームには、このような中間層が多く存在するのが常である。「ぼく」がそのような人物だからこそ、学習者の共感度はさらに増す。もし自分がこのクラスの一員だったら、「ぼく」と同じような立ち位置になるだろうなと考える子どもが多いのではなかろうか。
価値観が揺れ動く多感な時期、自分の中の流されやすい部分を自覚するだけでなく、違和感をもち始めてもやもやする部分、思わぬ問題解決に安堵する部分、周囲に働きかけるまでに変容する部分にも共感しながら、その変化を一緒に楽しめるとよい。思春期に差しかかる5年生の物語文第一教材に相応しい、新感覚の新教材と言える。
物語は、とてもシンプルな5場面構成である。
冒頭(第1場面)は回想から始まり、「ぼく」の視点で、5年2組に巻き起こるおにぎり石伝説ブームの経緯が語られている。
第2場面では、第三者的存在である1組の「一成」が登場し、ブームに水を差すが、おにぎり石ブームのからくりに「ぼく」はまだ気づかない。
第3場面、「ぼく」は「一成」の家で、伝説が伝説ではなかった事実を知り、衝撃を受ける。しかし、夢から覚めたことに安堵し、2組のみんなにも真実を伝えようと勇気が湧く。
そして、クライマックスの第4場面では、クラスメイトを「一成」の家に集合させ、極めて穏便におにぎり石伝説ブームが終了する。
第5場面は、円満な問題解決に至ったお礼を「一成」に伝え、ブームの一件落着を告げる。
物語文第一教材は、これくらいシンプルな構造が丁度よい。4月の国語授業開きでは、新しいクラスの全員が気持ちを揃えて、物語を楽しむことが重要だからである。
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