楽しく字がキレイに書けるようになる「花丸ポイント」!
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執筆者: 古沢 由紀
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今月の5分で分かるシリーズは、古沢由紀先生(大阪府・大阪市立柏里小学校)に、字をうまく書いたり、練習することに意欲がもてない子どもでも、字形の特徴を「花丸ポイント」として親しみやすい言葉で捉えることで、楽しみながら学びに向かうようになるアイデアをご紹介いただきました。
字の練習というと、お手本の字を見ながら何度も繰り返し書く学習が一般的である。
しかし、やみくもに書いても字が上達することはなく、子どもの意欲を失ってしまいかねないだろう。まずは、正しく字形を捉えられない理由を把握し、どんな声掛けや練習が必要か考え、一人ひとりに適した方法で練習することが必要である。
以下は、子どもたちの、字形を捉えて書くことが難しい主な理由である。
下の写真の字は、ある子どもが書いたひらがなの「お」である。字形の捉え方について指導する前と指導した後では、大きな変化が見られた。
時間をかけて練習するのではなく、わずかな時間であっても学んだことが日常に生かされ、字を書く楽しさや喜びを体感できるような学習時間を設けることが大切である。
綺麗な字を書くためには文字をよく観察し、字形を捉えることが必要である。
それを子どもたちに促すために「花丸ポイント」という活動を取り入れた。字形を捉えることができるようになれば綺麗な字が書けるようになり、「花丸がもらえる」ため「花丸ポイント」と呼んでいる。
字形は「線の傾け方」や「止め」「跳ね」「間隔」「折れ」などの特徴がある。字形の特徴を見つける際、子どもたちが親しみやすいような言葉に変えていくとおもしろい。
例えば、「め」の1画目と2画目の始まりは、1画目より2画目の方がやや上から書く形になっている。そのことを気づかせるために、それぞれの画のはじめを線で結ぶと、斜めの線になるため「ななめライン」として子どもたちと確認する。
他にも「へ」であれば、折れの部分に「お山さんが入りそう」と、字形から想像を膨らませて、子どもたちと共に「花丸ポイント」を作ってゆくと楽しい学習になるだろう。
「ほかにも『花丸ポイント』はあるかな」と問うと、子どもたちは一生懸命探し出し、まるで「遊び」のような感覚で取り組む。
以下は、「花丸ポイント」例の一部である。
学級に合わせて呼び名を変えたり工夫したりすると違いが出ておもしろい。
また、きまりが複雑になってしまうと、子どもたちの学習の妨げになってしまうため、できるだけシンプルなルールにすることも楽しめるポイントの1つである。
このようにして、「花丸ポイント」を子どもたちと共に作る中で、子ども自らが文字と向き合って字形を捉えることができるようになれば、自立した学び手を育てる文字指導となる。
学習は、主に「スキマ時間」を用いて行っている。
「スキマ時間」について、森川(2010)は「授業中や日常生活中(子どもにも教師にも)で生まれてくる少しの時間、およそ5分から10分くらいで、ともすれば何となく無駄に浪費してしまっているような時間」であると述べている。例えば、掃除が終わって5時間目までの間の時間や課外学習で少しだけ空いてしまった時間などのタイミングである。短時間であっても、毎日の積み重ねによって有効に活用できれば有意義な学習となるだろう。
低学年であれば教師が先導して授業を行ったほうがよい場合もあるが、高学年であれば、進行と書記の役割を分担して学習を進めることができるだろう。
以下は、子どもたちが進行して行う際の活動の流れである。
このような一連の流れを繰り返す中で、子どもたち自身の力で、字形を捉えて字を書く力がより身に付く。書けるようになることで、意欲をもって取り組むことも勿論大事だが、何より、子どもたちが楽しく学習する中で、相手にとって読みやすい字を書こうとする気持ちを育めるだろう。
情報化が進むにつれて、タイピングをはじめとするICT機器の操作が重視され、字を書くことの必要性が薄くなってきているようにさえ感じる。しかし、今一度字と向き合い、字から伝わる相手の気持ちや温かさを大切にしたい。
【引用・参考文献】
古沢由紀(ふるさわ・ゆき)
大阪府・大阪市立柏里小学校教諭
全国大学国語科教育学会/国語科学習デザイン学会/国語教育探究の会/「子どもの論理」で創る国語授業研究会/関西国語授業研究会/国語教育伸の会(代表)
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