子どもが「問い」をつないで読むー「スーホの白い馬」(光村図書二下)ー
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執筆者: 青山 由紀
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【読むこと】の授業では、子どもが主体的な学習者として「問い」をもって読み進めることが求められています。これまで、低学年では次のような姿を認めることができました。
1年生の「ずうっと、ずっと、大すきだよ」では、作品の冒頭部分を一文ずつ示しながら出合わせることで、
「『せかいでいちばんすばらしい犬』って、何が素晴らしいのかな?」
「『エルフはぼくの犬だったんだ』とあるけれど、家族みんなの犬のはずなのに、『ぼく』だけ何か特別なのかな?」
と、子どもから自然と「問い」が生まれるようにしました。
2年生の「お手紙」では、初読後の「これまで読んできた物語の中心人物は1人だったけれど、この話はがまくんとかえるくん、どちらが中心人物なのだろう?」という子どもの素直な疑問を「問い」として、それぞれの人物の変容を読み取っていきました。
さらに、2年生の「わたしはおねえさん」では、初発の感想として多くの子どもが抱いた「すみれちゃんは、なぜ妹の絵を消さなかったのか?」という「問い」を追究することで、変容を読み取ったり、山場を理解したりしました。
教師は、作品を読み深めるための疑問や課題を求めますが、子どもたちの目的は作品を読むことであり、「問い」をもつことではありません。そもそも、初読段階での「問い」は、すぐに答えが見つかるものから、読み深めて解釈しなければならないもの、あるいは作品を読み返しても答えは見つからないものなど様々なレベルのものが混在します。まだ、「主題を捉える」というゴール意識をもたない低学年では、それがより顕著となります。結局、教師主導となったり、取り上げるのは読むことが得意な子どもの「問い」となりがちで、「みんなの『問い』」とはなりません。
以下、2年生の物語文学習「スーホの白い馬」の実践を例に、低学年が「問い」をもち、追究する学びについて探ります。本単元の提案は、次の3点です。
新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
今回は三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、物語文の学習で、登場人物が出合った出来事を実際に疑似体験することで、登場人物の心情の揺れ動きを実感を伴って理解することができる、「共感読み」を取り入れた授業づくりをご提案いただきました。共感読みから生まれた自分なりの問いを全体で共有することで、子どもたちが「考えたい問い」が立ち上がり、子どもたちと一緒に単元をつくることができます。
新教材「ロボット」は、「問い」と「答え」、「まとめ」がわかりやすく段落で分けられており、説明文の基本的な3部構成を確かめることのできる教材です。今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、この説明文の3部構成をしっかりと押さえつつ、「問い」の「答え」となる事例の紹介のされ方や順序に意識が向くようになる、問いかけの工夫についてご紹介いただきました。
今回の5分で分かるシリーズは、根本俊彦先生(神奈川県・私立清泉小学校)に、物語文の中心人物になりきり、心情を短歌で表現する言語活動を通して、叙述一つひとつのへの意識が高まり、楽しみながら主体的に読めるようになる工夫をご紹介いただきました。
「想像力のスイッチを入れよう」の授業づくりを紹介します。本教材は、SNSが拡大する現代において、情報を適切に吟味したり、違う視点から考慮したりする大切さを伝え、これからの社会を生きる子どもたちにとって重要な情報リテラシーについて考えることができる教材です。 今回は藤田伸一先生(神奈川県・川崎市立中原小学校)に、問いかけやゆさぶり発問の工夫によって、子どもの読みたい意欲を引き出す授業づくりについてご提案いただきました。