「帰り道」 -物語の「かかれ方」を捉え、転移する読む力を育てる-
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執筆者: 三浦 剛
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「帰り道」(光村図書 6年)の授業づくりを紹介します。本教材は、同じ出来事を通した二人の心のすれ違いが、それぞれの一人称視点で書かれている物語です。等身大の二人のやりとりに共感しながら、書きぶりのおもしろさを味わうことができます。
今回は三浦剛先生(東京都・町田市立鶴間小学校)に、物語の「かかれ方」に着目することで、他教材に転移させられる読みの力を育む授業づくりについて、ご提案いただきました。
「帰り道」は、6年生の「読むこと」領域における第一教材である。新年度を迎えて最初に出合う教材だからこそ、やる気に満ちあふれている子どもたちの思いに応えられるような授業をしたい。
最も重要視したいのは、物語のおもしろさを味わえる授業づくりをするということである。ただ、そのおもしろさのベクトルが「内容」にだけ向いてしまうと、内実の伴わない授業に陥ってしまう可能性がある。
そこで強調したいのが、形式面、つまり、物語の「かかれ方」に注目するという点である。物語のかかれ方に注目することによって、学びの実感や他教材へと転移する読みの力を育むことができる。「どうして作者はそのような描き方をしたのか」を考え、「その描き方による効果は何なのか」を追求することで、物語のおもしろさを、より深い次元で味わうことができるだろう。
以上のことから、本教材を通して、物語の内容面だけでなく、形式面も視野に入れながら読み味わう授業展開を考えていくことで、物語を読むことのおもしろさを味わえるような授業ができるようしていきたい。
近年、様々なところで耳にする「探究」。このキーワードが学習指導要領に位置付けられたのは2008年、なんともう16年も前のことである。 大きな自然災害や世界中で猛威を振るった感染症など、想像もしていなかった様々な出来事が次々と起こり、変化の激しさを実感せざるを得ない現在では、「探究する国語授業」が自分の一番の研究テーマとなっている。 答えのない問題を解決しなければならない社会。このような社会で生きていく子どもたちは、「探究する学び」が必要であろう。授業後も学び続ける子ども、答えのない問題に向き合い粘り強く解決していこうとする子どもを育てていかなければならない。
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。