個別最適な学びをつくる前夜
|
執筆者: 青木 伸生
|
個別最適な学びは、子どもが自分の課題意識をもち、自分の学び方で課題を解決していくという学びのプロセスである。これは、「主体的・対話的で深い学び」と軸を同じにする考え方であり、子どもを主語にした学びの姿そのものであるといえる。
逆に言えば、1人でも学ぶことのできる主体性のある学び手を育てなければ、個別最適な学びは成立しない。何をどうすればよいのか分からない学び手は、自分の学びのスタイルをもてていない。学ぶ力を育てることが、学び手を育てることだ。
1人でも学ぶことのできる子どもを育てるには、1人で学ぶ経験を積むことが不可欠である。当然はじめから上手に学べるはずがない。失敗こそが学びである。自分でやってみて、うまくいかなくて、軌道修正する。その繰り返しが、個別に学べる子どもを育てるのである。
口で言うのは簡単だが、教師はこれができない。子どもに失敗させることができない、あるいは、失敗のさせ方が下手なのだ。なぜならば、これまでの授業は、子どもに失敗させないように行われてきたからである。
「子どもに失敗させない授業」は、子どもが失敗しそうになったら、教師が失敗する前に助けてやればよいから簡単である。教師は今までに無数の「転ばぬ先の杖」を子どもに与え続けてきた。これでは子どもは失敗するはずがないし、失敗を悪いことだと思い、「間違えたら恥ずかしい」と言って挙手しなくなる。失敗こそ学びであることが、分かっていない故の発言だ。この先、この子どもたちが大人になって、例えば仕事で失敗したら、その子はそれに耐えられるのだろうか。
新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
今回は三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、物語文の学習で、登場人物が出合った出来事を実際に疑似体験することで、登場人物の心情の揺れ動きを実感を伴って理解することができる、「共感読み」を取り入れた授業づくりをご提案いただきました。共感読みから生まれた自分なりの問いを全体で共有することで、子どもたちが「考えたい問い」が立ち上がり、子どもたちと一緒に単元をつくることができます。
新教材「ロボット」は、「問い」と「答え」、「まとめ」がわかりやすく段落で分けられており、説明文の基本的な3部構成を確かめることのできる教材です。今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、この説明文の3部構成をしっかりと押さえつつ、「問い」の「答え」となる事例の紹介のされ方や順序に意識が向くようになる、問いかけの工夫についてご紹介いただきました。
今回の5分で分かるシリーズは、根本俊彦先生(神奈川県・私立清泉小学校)に、物語文の中心人物になりきり、心情を短歌で表現する言語活動を通して、叙述一つひとつのへの意識が高まり、楽しみながら主体的に読めるようになる工夫をご紹介いただきました。
「想像力のスイッチを入れよう」の授業づくりを紹介します。本教材は、SNSが拡大する現代において、情報を適切に吟味したり、違う視点から考慮したりする大切さを伝え、これからの社会を生きる子どもたちにとって重要な情報リテラシーについて考えることができる教材です。 今回は藤田伸一先生(神奈川県・川崎市立中原小学校)に、問いかけやゆさぶり発問の工夫によって、子どもの読みたい意欲を引き出す授業づくりについてご提案いただきました。