個別最適な学びをつくる前夜
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執筆者: 青木 伸生
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個別最適な学びは、子どもが自分の課題意識をもち、自分の学び方で課題を解決していくという学びのプロセスである。これは、「主体的・対話的で深い学び」と軸を同じにする考え方であり、子どもを主語にした学びの姿そのものであるといえる。
逆に言えば、1人でも学ぶことのできる主体性のある学び手を育てなければ、個別最適な学びは成立しない。何をどうすればよいのか分からない学び手は、自分の学びのスタイルをもてていない。学ぶ力を育てることが、学び手を育てることだ。
1人でも学ぶことのできる子どもを育てるには、1人で学ぶ経験を積むことが不可欠である。当然はじめから上手に学べるはずがない。失敗こそが学びである。自分でやってみて、うまくいかなくて、軌道修正する。その繰り返しが、個別に学べる子どもを育てるのである。
口で言うのは簡単だが、教師はこれができない。子どもに失敗させることができない、あるいは、失敗のさせ方が下手なのだ。なぜならば、これまでの授業は、子どもに失敗させないように行われてきたからである。
「子どもに失敗させない授業」は、子どもが失敗しそうになったら、教師が失敗する前に助けてやればよいから簡単である。教師は今までに無数の「転ばぬ先の杖」を子どもに与え続けてきた。これでは子どもは失敗するはずがないし、失敗を悪いことだと思い、「間違えたら恥ずかしい」と言って挙手しなくなる。失敗こそ学びであることが、分かっていない故の発言だ。この先、この子どもたちが大人になって、例えば仕事で失敗したら、その子はそれに耐えられるのだろうか。
本教材「紙風船」は、紙風船といった、柔らかく光の下でフワフワと淡い色彩を帯びる、抽象性のあるモチーフを喩えに用いることで、新たな門出の近い6年生にとって、諦めず希望を抱き続けるといった、象徴的なメッセージを読み取りやすくなっています。 本教材の授業づくりについて、石原厚志先生(東京都・立川市立新生小学校)に、詩の指導方法である「展開法」と「層序法」を軸に、一つひとつの言葉のつながりを吟味し、詩の主題に迫りたくなるような展開の工夫や、さらに自分事として学びを深められるようなゆさぶり発問の工夫などをご紹介いただきました。
説明文には、記録文、紹介文、報告文などの種類があり、小学校の6年間で様々な文章を書く経験を積んでいきます。 では、紹介するためには、どのような表現が必要でしょうか。 紹介文を書くためには読者の反応に気づいたり想像したりすることが大切です。 子どもたちがお互いに「読み合う」活動を工夫することで、紹介文の書き方を意識できるような授業づくりを行います。
今回の5分でわかるシリーズは、佐藤亜耶先生(福島県・いわき市立御厩小学校)に、子どもが振り返りを書けるようにするために、4つの観点を示し、子どもたち自身が書く内容と書き方を理解できるようにするアイデアを、ご紹介いただきました。
本教材「ビーバーの大工事」は、タイトルからはその大工事の目的がわからず、謎に包まれています。「ガリガリ」「ドシーン」のオノマトペや「近よって みますと、」とあるように、まさに目の前のビーバーの行動を実況しているかのように説明が展開されることで、ワクワクしながら読み進めることができ、最後に判明する、大工事の目的とその壮大さには驚きが待っていることでしょう。 今回は斎藤由佳先生(神奈川県・逗子市立沼間小学校)に、説明文を読み深める上で、「何を明らかにしたいか」「何に気をつけて読みたいか」といった、「だいじの基準」を学級で共有し、更新することで、自分なりの「だいじなことば」の探究が進むようになる授業づくりの工夫をご紹介いただきました。
新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
今回は三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、物語文の学習で、登場人物が出合った出来事を実際に疑似体験することで、登場人物の心情の揺れ動きを実感を伴って理解することができる、「共感読み」を取り入れた授業づくりをご提案いただきました。共感読みから生まれた自分なりの問いを全体で共有することで、子どもたちが「考えたい問い」が立ち上がり、子どもたちと一緒に単元をつくることができます。