「じどう車くらべ」 -「書くこと」につなげる読みの授業づくり-
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執筆者: 小島 美和
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単元名:じどう車ずかんをつくろう
教材:「じどう車くらべ」(光村図書 1年)
「じどう車くらべ」の授業づくりを紹介します。本教材は「問い」が明確で、三つの事例の説明には「しごと」とそのための「つくり」が「答え」として分かりやすく書かれています。
今回は、小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に「書くこと」につなげる読みの授業づくりのための三つのポイントを教えていただきます。子ども自身が「読むこと」の学習の中で、大事な言葉や文に合ったものを選ぶことができる授業づくりをご提案いただきました。
目次
読むことの学習後、学んだことを生かして書く活動へとつなげる授業展開は多くある。しかし、いざ、実際に子どもたちに書かせてみようとすると、多くの情報の中から大事な言葉を選ぶことが難しく選べなかったり、選んだ情報と情報につながりがなかったりする子がいる。そこで、読みの学習の中で、子どもたちが書かれてあることについて本当にこれでいいのか確認することや、ほかの書き方はないのか考えることを取り入れた学習を展開することで、自分が書く活動に取り組む際、上手に活用する力として身に付けたことを用いて、上手く学習をつないでいけるのではないかと考えた。
そのための授業のポイントを3つ示したい。
一つ目が、教科書に書かれていることに対して、「本当にいいの?」とダウトをかけることである。子どもたちは普段、教科書に書かれていることはその通りだと思って読むことが多い。でも、なぜその通りだと思えるのか立ち止まって考えられるとよいのではないだろうか。そして、その際、「もしも~だったら」と違う場合を仮定して考えてみることで、書かれていることの意味理解が深まったり、文と文の因果関係を捉えたりすることにつながってくると考えている。
二つ目は、多様な見方で物事を捉える読み方をすることである。教科書には、筆者が伝えたいことと結び付くと考えられたものが述べられている。しかし、読者として読む子どもたち自身は、その物を違う見方で見ていることもある。様々な視点から見えるものについて、なぜ筆者はそのことに限定して伝えようとしたかを考えていくと、筆者の伝えたいことや文と文のつながりが見えてくる。
三つ目は、教科書にある言葉を別の言葉に置き換えてみることである。ポイントの二つ目で見つけた多様な見方で物事を捉えたものの中から、言葉を選んで教科書の中に置き換えて入れてみることで、文と文のつながりに着目し考えることができる。
このように、大事な言葉や文に合ったものを選ぶ学習を「読むこと」の学習の中にも入れていくことが大事なのではないかと考える。その具体について、「じどう車くらべ」の授業を例に述べたい。
本教材は1年生で3番目に学習する説明文である。子どもたちは、これまでに「くちばし」や「うみの かくれんぼ」で「問い」と「答え」を見つけて読んだり、大事な言葉を確かめながら読んだり、事柄の順序を考えながら内容の大体を捉える学習を積み重ねてきている。
「じどう車くらべ」も「問い」と「答え」の関係で書かれている。「問い」は二つの段落に分けて書かれていて、「問い」があることが捉えやすくなっている。また、「どんな仕事をしているのか」、そのために「どんなつくりになっているのか」という二つの問いについて「バスやじょうよう車」「トラック」「クレーン車」を具体例として説明しており、三つの事例を比較して読み、共通点を考えるのに適している。
単元の学習のゴールとして「おきにいりの車でじどう車でずかんをつくろう」という言語活動を設定することで、読みの目的が明確になり、説明する文章の書き方を学ぶと同時に、文章の中の重要な語や文は何かを考えて自分で図書資料から選び出すことができるようにしたい。そのためには、読みの段階から、どんな仕事をしているか、その仕事に合ったつくりが選ばれているかという点を様々な事例で確認していくことが大切になってくる。読みの学習を生かして、自分の好きな自動車の様々なつくりの中から、仕事に合ったつくりになっているか考え、説明する文章をまとめられる力がつけられるようにしたい。
〔知識及び技能〕
事柄の順序など情報と情報との関係について理解することができる。 (2)ア
〔思考力、判断力、表現力等〕
文章の中の重要な語や文を考えて選び出すことができる。 Cウ
〔学びに向かう力、人間性等〕
進んで文章を読み、大事な言葉や説明の順序に気を付けたり、仕事にあったつくりになっているか考えたりしながら読もうとしている。
自分の好きな自動車を説明することに興味をもち、説明の順序に気を付けて、自動車図鑑を作ろうとしている。
第一次 | 全文を読み、「問い」と事例を確認する(第1時) |
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第二次 | 「問い」と「答え」の関係や、事例の順序に着目しながら比較して読む(第2~6時) |
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第三次 | 学習したことを活用し、「じどう車ずかん」をつくって紹介する(第7~10時) |
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本時では、前時の「バスやじょうよう車」の事例で「問い」と「答え」の関係を学習したことを生かし、「トラック」の仕事やつくりを捉える。
まず、二つの「問い」の文を確認し、「一つ目の『問い』の答えは見つけられましたか?」と問う。子どもたちは、「しごと」という言葉に着目しながら、「にもつをはこぶしごとをしています。」という「答え」の文を見つけ、ペアで確認した後、視写していった。
次に、「二つ目の問いである『そのためにどんなつくりになっていますか』の答えは見つけられましたか?」と問い、再びペアで話した後、全体で確認していく。その際、「にだい」がどこを表すのか挿絵で示したり、「タイヤは本当にたくさんあるの?」などと揺さぶったりしながら、「にだい」や「タイヤがたくさん」といった言葉を確認して読むようにしていく。
その後、本当に「ひろいにだい」と「タイヤがたくさん」という「つくり」が「しごと」に合っているのかを読むために、「もしも狭い荷台だったら?」や「もしもタイヤが乗用車と同じ四つだったら?」と問う。子どもたちは、「狭かったらたくさんの荷物が運べない」「タイヤが少なかったら重い荷物は載せられない」などと言い、「ひろい」ことや「たくさんある」ことの「しごと」にとってのよさに目を向けて確認した上で、トラックの「つくり」を視写した。
最後に、「ほかの『つくり』がトラックにはあるのを前にみんなが見つけてくれたよね?」と問いかけた。
「運転席が高い」「緑色」「ミラーがたくさん」「太いタイヤ」「ランプ」など子どもたちが第一次で出したものの中から、「みんなが出してくれた『つくり』を入れて読んでみたらどうなるかな?」と問い、いくつか選んで入れて読み、ペアで対話をした。
すると、「そのために、緑色をしていますだとおかしいよ。ほかの色のトラックを見たことがあるから」や、「そのために、太いタイヤがついていますはたくさん運べるからいいと思う」など、別の「つくり」でもいいか考えていった。中には、運転席やミラーなど、迷うものもあったが、「『安全に運べるように』とかを入れるといいと思う」などと付け加えてくれる子もいた。
このように、本当に「しごと」に合った「つくり」になっていると言えるか本文にダウトをかけ、「もしも~だったら」と問い返すことで確認したり、ほかの「つくり」を入れて考えることを繰り返すことで、「しごと」と「つくり」の関係を捉えたり、多くある自動車の「つくり」の中から、「しごと」に合った「つくり」を自分たちで選び出すことができるようになった。
二人組になって対話しながら確認するのは、子どもたちにとっては少し難しさもあったが、最後には、下のような「じどう車ずかん」を作成し、友だちと紹介し合うことができた。
〔引用・参考文献〕
白石範孝(2020)『白石範孝の「教材研究」-教材分析と単元構想―』東洋館出版社
小島 美和(こじま・みわ)
東京都・杉並区立桃井第五小学校
全国国語授業研究会理事/新考える国語研究会
新教材「スワンレイクのほとりで」は、本文中に数多くの色彩が登場し、中心人物「歌」の一人称で、グレンとの思い出が色鮮やかに描かれるなど、情景描写の多い物語文です。野菜畑から湖へと場面が移るにつれ、色の数はどんどん増え、色たちが動き出すクライマックスでは、歌の高揚感が伝わってくるようです。 本教材について沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に、情景描写に着目しながら、様々な視点から読者が「歌」に寄り添うことで、同化・異化という「登場人物との距離感」を意識した読みの力が育つ授業づくりについてご提案いただきました。
本教材では、「おかゆのおなべ」の呪文を、誰が知っていて、どのように言ったのかということが、この物語の起承転結をつくる鍵となっています。本教材の学習を通して、物語文を読む上で重要な、会話文を押さえることに意識が向くようになるでしょう。 今回は柘植遼平先生(昭和学院小学校)に、かぎ(「」)の役割や知識を深めつつ、かぎ(「」)が誰のセリフなのか本文を根拠にしながら読み進めることで、文学のおもしろさにふれられるような授業づくりの工夫を紹介いただきました。
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今回の5分でわかるシリーズは、佐藤圭先生(東京都・足立区立千寿小学校)に、子どもが主体となる国語の授業をつくるために、押さえておきたい指導技術のアイデアについて、ご紹介いただきました。教師が「待つ」「聴く」「受け止める」から、子どもたちも同じようにふるまえるようになる、ということが大切ですね。