「白いぼうし」-物語の魅力は「人物相関図」でどのように引き出されるのか?-
|
執筆者: 沼田 拓弥
|
単元名:場面や人物のつながりを読み、考えたことを伝えよう
教材:「白いぼうし」(光村図書/教育出版/学校図書4年)
今回は「白いぼうし」の授業づくりを紹介します。
物語文では、主人公や主人公との関わりが深い人物に注目しがちですが、実はその周りの人物が重要な役割を担っており、「物語をドラマチックにするしかけ」が必ず存在します。
今回は、沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に子どもの興味・関心までもが可視化され、さらには思考がどんどん広がる板書をはじめとした授業づくりについてご提案いただきました。
物語教材を扱う授業では、登場人物の関係性をどのように捉えたかによって、読みの深さが大きく変わってくる。
テレビドラマのホームページなどで紹介されている「人物相関図」を見たことがあるだろうか。主人公を中心に、主人公と関わりの深い人物がそばに配置され、登場回数は少ないものの、実は物語の展開に重要な役割を果たす人物がその周りに配置されている。そして、これらの人物をいくつもの線でつなぐことによって、ドラマ内における出来事やお互いの関係性が簡潔に整理される。いわば「物語の縮図」である。これを見れば、視聴者が、物語の大体を捉えられるものになっている。
実は、国語授業で扱われる物語作品もこの「人物相関図」を用いることで、子どもたちに多くの発見をもたらすことができる。これまでの国語授業では、登場人物の関係性を整理する際、物語の中心人物Aと対人物Bの二人の関係性に焦点化することが多かったのではないだろうか。お互いをどのように思っているのか(例えば、「大造じいさんとガン」「ごんと兵十」「がまくんとかえるくん」など)を考え、整理する授業が一般的な授業展開といえる。もちろん、中心人物と対人物の関係を捉えることは、物語を読み味わう上で必須の力である。
しかし、本当に物語のおもしろさを引き出しているのは、一瞬だけ顔をのぞかせる周辺人物ではないだろうか。つまり、「大造じいさんとガン」では、おとりとなった1羽のガン、「ごんぎつね」では、加助や兵十のおっかあ、「お手紙」では、かたつむりくんである。これらの登場人物は、登場回数は少ないものの、実は中心人物の重要な行動のきっかけとなる大切な役割を果たしている。
このように考えると、物語中の人物は、誰一人として無意味なものは存在しない。作者は、必ず「意味」をもたせてその場に登場させているのである。それは、中心人物に直接、影響を与えるものだけではない。作品の雰囲気を醸し出したり、中心人物とその周りにいる人物をつなげたりする役割も担っているのだ。まさに、「物語をドラマチックにするしかけ」ともいえるだろう。
ぜひ、これまで扱ってきた作品の登場人物をもう一度見直してみてほしい。必ず思わぬ発見があるはずである。
このように、各登場人物が果たす役割や関係性を整理する中に、物語の魅力を引き出す新たな「気付き」や「発見」が生み出されるのである。本稿では、この人物関係を整理する方法の1つとして「人物相関図」を活用し、より物語作品の魅力を引き出す学びの在り方に迫りたい。
新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
今回は三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、物語文の学習で、登場人物が出合った出来事を実際に疑似体験することで、登場人物の心情の揺れ動きを実感を伴って理解することができる、「共感読み」を取り入れた授業づくりをご提案いただきました。共感読みから生まれた自分なりの問いを全体で共有することで、子どもたちが「考えたい問い」が立ち上がり、子どもたちと一緒に単元をつくることができます。
新教材「ロボット」は、「問い」と「答え」、「まとめ」がわかりやすく段落で分けられており、説明文の基本的な3部構成を確かめることのできる教材です。今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、この説明文の3部構成をしっかりと押さえつつ、「問い」の「答え」となる事例の紹介のされ方や順序に意識が向くようになる、問いかけの工夫についてご紹介いただきました。
今回の5分で分かるシリーズは、根本俊彦先生(神奈川県・私立清泉小学校)に、物語文の中心人物になりきり、心情を短歌で表現する言語活動を通して、叙述一つひとつのへの意識が高まり、楽しみながら主体的に読めるようになる工夫をご紹介いただきました。
「想像力のスイッチを入れよう」の授業づくりを紹介します。本教材は、SNSが拡大する現代において、情報を適切に吟味したり、違う視点から考慮したりする大切さを伝え、これからの社会を生きる子どもたちにとって重要な情報リテラシーについて考えることができる教材です。 今回は藤田伸一先生(神奈川県・川崎市立中原小学校)に、問いかけやゆさぶり発問の工夫によって、子どもの読みたい意欲を引き出す授業づくりについてご提案いただきました。