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主教材を短時間で読み取れるよう、事前教材(新教材)を活用しよう
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執筆者: 柘植 遼平
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柘植遼平先生(千葉県・昭和学院小学校)に、新教材「アイスは暑いほどおいしい?―グラフの読み取り」の授業づくりについて、「雪は新しいエネルギーー未来へつなぐエネルギー社会」と合わせて紹介していただきました。
今回の新教材の追加で、グラフや表などの資料が筆者の主張を分かりやすく伝えるための工夫として、捉えやすくなったことに着目し、資料を中心に説明文読解が深まるような単元づくりを行います。
本単元では事前教材の取り扱い方が鍵となる。
主教材の「雪は新しいエネルギー」は以前から採択されている教材である。今回の教科書改訂では、図や写真の大きさや種類などの細かな変化はあったが、大きな変化はない。1番の変化は、事前教材として「アイスは暑いほどおいしい?―グラフの読み取り」が追加されたことである。文章自体は、非常に短くシンプルなものとなっているので、サラッと読み終えてしまいそうである。しかし、この教材が入ってきた意図を考えると非常に重要な教材である。
実際、今回の事前教材が入ったことで、単元の目標が「筆者の考えを読み、説明の仕方の特徴をとらえよう」から、「文章と資料をあわせて読み、筆者の考えをとらえよう」へと変更され、資料の読解に重点が置かれるようになった。
この「文章と資料をあわせて読む」ことは近年、ますます重要視されている。全国学力調査や大学入試共通テストなどでも、資料を読み取って論理的に考える設問が増えてきているし、これからのAI時代には欠かせないものとなっていくと言える。
そこで、この教材に変更された意図を私なりに解釈しながら単元を構成していきたい。
主教材「雪は新しいエネルギー」のように、たくさんのグラフ・図・写真(以下資料)が出てくる教材では、一つひとつの資料をしっかりと分析したり、読み取ったりすることが大切である。
だがこれらの資料は、自分の主張が読者に伝わりやすくなるように筆者が意図的に示しているものである。つまり、筆者の主張を探る上では、非常に大切な役割を果たしているのである。そこに子ども自身が着目して分析、読み取りができるようにしていきたい。
とはいえ、クラス替えがあったり、担任が代わったりなど様々な要因もあり、6年生の説明文第一教材である本単元だけでは、資料の分析・読み取りの習熟が難しい面もある。
そこで本単元では、まずは資料に着目させ、分析・読み取りを一緒に行うことからスタートしたい。そのスタートに、新教材である「アイスは暑いほどおいしい?」を活用する。
自分の体験を基にすることもできる身近な説明文であり、短い文章だからこそ資料の役割に焦点化して読むことができる。その特性を活かして主教材でも資料に目を向けられるような単元構成にする。
資料に着目させるために、本文を提示する前に資料を先に提示する。
具体的には、
この3つの活動を行う。
この資料に着目させる活動では、内容や題名などを想像することで、筆者の主張にあたりをつけて読み、その結果として長い文章が読みやすくなるなどのメリットが得られる。あたりをつけて読むことで、主張や要旨を捉える際に大いに役立ち内容理解も進みやすくなる。
また、読みやすくなるメリットは、国語が苦手な子どもにとっても大きい。 長い文章が苦手な子どもは、「今、何を読んでいるのか(主張なのか、事例なのか)?」などが、分からなくなってしまうことが多いが、資料と事例との関係性をつかむことで、全体の文章構造をとらえられるようになる。
これらの効果を期待できることから、資料を読み取ることを重視した単元構成を意識していく必要がある。
・「アイスは暑いほどおいしい?―グラフの読み取り」
この文章は、グラフが1つのみで文章も短く非常にシンプルな内容となっている。
筆者の主張なども入っていないが、その分、グラフの分析・読み取りに目が向きやすい教材であるとも言える。
・「雪は新しいエネルギー」
この文章は、図やグラフ・数値が多く挙げられ、具体例の順序などの工夫が見られる。
また、文章の組み立てとしては、一度主張をまとめた上で、雪の可能性と課題について述べるような構造となっているため、文章全体における筆者の主張は比較的分かりやすく、予想してから読むのに適した教材であると言える。
<知識及び技能>
<思考力、判断力、表現力等>
<学びに向かう力、人間性等>
第一次 | 「アイスは暑いほどおいしい?−グラフの読み取り」 グラフから読み取れることを基に、話の内容や題名を想像してから読もう(第1時) |
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第二次 | 「雪は新しいエネルギー−未来へつなぐエネルギー社会」 様々な資料の読み取りから、話の内容や題名を想像し、主張と説明の仕方を探ろう(第2~5時) |
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第三次 | まとめたものを人に伝えよう(第6時) |
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説明文の第一教材であるため、教師から提示して行うことを意識したい。そうすることで、これまでの子どもたちの国語の実態を確認しながら学習が進められるような単元とする。
また、内容や題名のあたりをつけてから読むことで、長文に対する抵抗感を減らしておきたい。
まず、グラフのみを提示して分析・読み取りを行う。
これは社会科や理科、算数でも必要になってくるスキルでもあり、他教科でも取り組めるとよい活動である。今回は、第一教材なので、わざわざ言わなくてもわかるような当たり前のことも取り上げたい。
一通り分析・読み取りを行なった後に、本文を想像させる。その際、本文が短いことも伝えておくと考えやすくなる。
その後、どんな題名であるのかも想像させる。
子どもたちの実態によっては、主張について取り扱ってみてもよいが、短いこの文章では構成の把握などは難しいので無理に考える必要はなく、主教材の方で考えられるようにする。事前教材では、「読む前にある程度、想像をしておくと読みやすくなる」ことを実感するために、「資料が役に立つ」ことだけを押さえておきたい。
新教材で準備を終えた後の主教材である。ここでも前時と同じ流れで学習を行う。
しかし、資料の数が一気に増加する。そのため、一つひとつの資料の分析・読み取りは軽めにしていく必要がある。
その一方で、「エネルギー」「雪」などのキーワードが資料から読み取れるので、主張に迫りやすくなる。
内容や題名を想像した上で、主張を想像する活動を行なった後に、本文を読んでいき確認をする。
授業の最後には、
①資料から内容、題名、主張を想像して読んでみてどうだったか
②筆者の書き振りをどう感じたか
を書かせ、第6時で振り返りたい。
国語に限らず、これからの時代は資料の分析・読み取りを行うことは勿論のこと、そこから想像すること、新しい発想を生み出していくことが新しい学びとして必要となってくる。
今回の説明文第一教材では、事前教材を上手く活用することで、新しい学びを実感する第一歩としたい。実感することで、今後の説明文の学習において、自ら分析する主体的な姿を期待したい。
柘植遼平(つげ・りょうへい)
千葉県・昭和学院小学校
全国国語授業研究会常任理事/日本国語教育学会会員
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