「宇宙への思い」 —著者の「思い」を読み取り、みんなで考えを共有しよう—
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執筆者: 田中 元康
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新教材「宇宙への思い」は、本文中、宇宙そのものへの感想や気持ちが表れている箇所が実は少なく、宇宙での経験や研究(事実)を通して、地球や身近なことの未来をどのように考えたのか(願い)が、最後に述べられていることが特徴的です。
本教材について、田中元康先生(高知大学教育学部附属小学校教諭/高知大学教職大学院教授)に、主語と文末に着目して読み、著者の述べている考えと事実を整理していく学習活動について提案していただきました。根拠に基づいて自分なりにまとめるため、より友だちと考えを共有し、読み深めたくなるでしょう。
本学習材では、3人の筆者からの読者(子どもたち)へのメッセージを受け取り、考えを広げることがキーとなる
単元の扉のページで、漆黒の宇宙の中で太陽の光に照らされて浮かび上がり、夜明けを迎える地球の写真を見ることができる。ここから、中学校へ羽ばたこうとする、子どもたちの“新しいページ”へのメッセージを感じることができる。
本学習材は、宇宙事業に関わる3人の仕事の内容の説明と読者へのメッセージから成る。
その3人とは、国際ステーションで滞在された宇宙飛行士 油井亀美也さん、宇宙食の開発の仕事をされている込山立人さん、「はやぶさ2」が「小惑星リュウグウ」から持ち帰った石や砂を分析する研究をしている薮田ひかるさんの3人である。
3人とも宇宙事業に関わる仕事に、現在も第一線でたずさわっている。分野は異なるが、ご自身の宇宙に関わる仕事の内容の紹介と、ご自身の“宇宙への思い”を述べられているため、子どもにとっても興味をもって読むことのできる文章になっている。そして、それぞれの文章が、読者に語りかける形で書かれているため、基本的な説明的文章の“序論-本論-結論”といった形式を必ずしもとっているわけではない。
また、3人の説明文を読むことで、身近なものからのつながりによって、より宇宙事業にたずさわるすばらしさとともに、宇宙事業にたずさわるからこそ、地球への思いがこめられていることを読み取ることができる。
その思いとは、互いに協力すること(1人目、油井さんからのメッセージ)、宇宙の魅力を知ってほしいということ(2人目、込山さんからのメッセージ)、そして、地球が存在することの尊さ、人と人が関係性し合っていることの尊さを感じてほしいこと(3人目、薮田さんからのメッセージ)である。
このことから、本学習材は、読者である小学校卒業を目前に控えた子どもたちへ届けたいメッセージだと捉えることができる。
そのため、本単元では3人のメッセージを読み取るとともに、受け取ったメッセージをまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げる「Cカ 共有」を主たる目標として授業を進めていく。
近年、様々なところで耳にする「探究」。このキーワードが学習指導要領に位置付けられたのは2008年、なんともう16年も前のことである。 大きな自然災害や世界中で猛威を振るった感染症など、想像もしていなかった様々な出来事が次々と起こり、変化の激しさを実感せざるを得ない現在では、「探究する国語授業」が自分の一番の研究テーマとなっている。 答えのない問題を解決しなければならない社会。このような社会で生きていく子どもたちは、「探究する学び」が必要であろう。授業後も学び続ける子ども、答えのない問題に向き合い粘り強く解決していこうとする子どもを育てていかなければならない。
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。