「やってみたい」と思わせるしかけをして、考える部分を焦点化しよう
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執筆者: 比江嶋 哲
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単元名:せつめいのしかたに気をつけて読み、それを生かして書こう 教材:「馬のおもちゃの作り方」(光村図書/2年)
「馬のおもちゃの作り方」の授業づくりを紹介します。
本教材は、説明を読んで実際におもちゃを作った後で、その説明文の工夫を考えていきます。その後、気づいた工夫を使って、自分で紹介したいおもちゃの作り方を説明する文章を書いていくようになっています。
今回は、比江嶋哲先生(宮崎県・都城市立西小学校)に、本単元のねらいである説明の工夫について読みとることができる授業づくりについてご提案いただきました。
「この説明文で工夫しているところに線を引きましょう」
子どもたちは、一斉に線を引き出す。
しかし、途中までの説明を聞いていなかった子ども、指示の意味が理解できない子どもは、困惑したまま手が止まって時間が過ぎていく。
説明文の授業では、物語文と違い、興味が無い内容や構成が複雑なものだと授業の序盤から「分からない」という子どもたちが出てくる。だからといってむりやり参加させても何を身に付けたのか分からないままの場合がある。
必要なのは、「やってみたい」と思わせるようなしかけをしていくこと、そして「何をこの説明文で身に付けさせるか(付けたい力)」を教師がしっかりもっておくことである。
実際の授業づくりは次のことを意識する。
本教材「馬のおもちゃの作り方」では、付けたい力は「順序」である。これを説明の工夫を見つけるという形で進めていく。
具体的には、文のまとまり・作り方の順序を表す言葉、文に合わせた写真を捉えさせたい。
間違った作品を見せて興味を引きつける。 「先生作ってみたんだけど、これで合っているかな?」という発問で、実際に、教師が間違って作った作品を見せる(下写真)。
子どもたちから「大きさが違う」「顔がない」「足が短い」など、意見が出てくる。
「どこを読めばよかったのかな?」と聞くことで、文章を読み返し始める。
このように、間違いをアドバイスする活動を取り入れて、「やってみたい」と思わせるようにし、そして付けたい力の獲得へとつないでいきたい。
本教材は2年生2学期の説明文ある。この説明文は実際に子どもが作って考えることができるという点で子どもにはとても興味を引かれる内容となっている。
本文では、前書き・材料と道具・作り方・楽しみ方という4つのまとまりで構成されており、それぞれのまとまりで、順序を表す言葉や数字を使うなど読み手にわかるような工夫がされている。また、写真を多く掲載しており、特に作り方の説明の「まず、つぎに、それから、さいごに、これで」の説明に合わせて途中の写真を見ながら作成できる。
また、本教材で学んだ後の「おもちゃの作り方をせつめいしよう」で、説明の工夫を使っておもちゃの作り方を説明する流れとなっている。
〔知識及び技能〕
共通、相違、事柄の順序など情報と情報との関係について理解することができる。 (2)ア
〔思考力、判断力、表現力等〕
〔学びに向かう力、人間性等〕
事柄の順序に沿って粘り強く構成を考え、学習課題に沿っておもちゃの作り方の説明の工夫について考えを伝え合おうとしている。
第一次 | 単元のめあてをつかみ、学習計画を立てる(第1・2時) |
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第二次 | 事例の順序に着目しながら説明の工夫を読む(第3~6時) |
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第三次 | 説明するおもちゃをきめ、作り方を説明する文章を書く(第7~14時) |
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段落構成の文のまとまりの工夫について考えることができる。
はじめに、間違った作り方をした馬のおもちゃの写真を見せて、次の発問をする。
「先生が作った馬のおもちゃは、何か違います。何が違いますか?」
子どもたちから、「大きさが違う、顔がない、しっぽがない」などの意見が出る。 そこで、今日は、文のまとまりで考えてみたいことを伝えて、次の発問をする。
「はじめ、<ざいりょうとどうぐ>、<作り方>、<楽しみ方>のどこでまちがえたのでしょう? アドバイスしてくれませんか?」
「大きさが違うのは、<ざいりょうとどうぐ>の長さを見ていないから」等の意見が出る。
「どの順に、文のまとまりがあると分かりやすいか考えてみましょう。」
文のまとまりに目を向けさせて、分かりやすい順を答えていく。
段落の順序や順序をあらわす言葉の説明の工夫について考えることができる。
第5時も、途中までできている馬のおもちゃの写真を見せて、次の発問をする。
「このお友だちは、この後どうすればいいか分からなくなってしまったそうです。この後どうすればいいかアドバイスしてくれませんか?」
どこを読めばいいよとアドバイスできるかについて考えさせる。
「<作り方>の3段落に書かれている」という意見が出始めると、なぜ、3段落だと分かったのかを確認する。すると、「足がないから」や、「それから、馬のあしを作りますと書かれているから」などの意見が出て、順序の言葉や各段落のはじめに「○○を作る」と書かれているという筆者の説明の工夫が書かれていることを確認する。
その工夫を踏まえて、もう一つ作り方が分からなくなった例を見せて、どの段落を見て、どうアドバイスするか考えさせた後、「それから、さいごに」の順序を表す言葉について検討する。
各段落の短冊形式で黒板に掲示し、「2段落と3段落を入れかえてもいいでしょうか」という発問をして、順序を表す言葉について再度考えさせる。
絵や写真の効果について考えることができる。
第6時は、間違えてしまった馬のおもちゃの写真を見せて、次の発問をする。
「このお友だちは、間違えてしまったそうです。どの時点で間違えてしまって、どう直せばいいのかアドバイスしてくれませんか?」
ここからは、アドバイスをすることを通して、写真と合わせて読むと作れるようになるという部分に目を向けさせるために提示していく。
はじめの事例は2段落の箱の組み合わせを間違えている。次の発問をして、写真と合わせて読み取らせていく。
「写真があるから分かりやすいことはないですか?」
すると、「どの向きに付ければいいか分かる」「はこのどの部分に付ければいいか分かる」などの意見が出てくる。このように、文章だけでなく、写真とセットで向きや場所などとあわせて分かりやすくなることを、確認して2つ目の事例を考えさせたい。
本時では、「アドバイスをする」という流れで、筆者の説明の工夫を読ませていった。子どもたちは自分事として取り組み、積極的に取り組むことができた。「文のまとまり」「順序を表す言葉」「絵や写真の効果」について、意識させながら読み進めることができたと思う。
実際は、下のようなワークシートをGoogleジャムボードに貼り付けて進めていった。教科書の写真も合わせて考えさせることができるので、効果的に学習でき、時間内で進めることができた。
比江嶋 哲(ひえじま・さとし)
宮崎県・都城市立西小学校
全国国語授業研究会理事/全国大学国語教育学会会員/日本国語教育学会会員
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