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リフレクション型国語科授業の展開
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執筆者: 白坂 洋一
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リフレクション型国語科授業は、学習者である子どもたちによる「問いづくり → 読み合い → 問いの評価」を位置付けて展開しています。これまでの国語科授業では、主に教師の発問によって、思考の文脈が形成されていました。言い換えると、子どもたちは、教師の発問に対する答えを探す営みをしていたといえるでしょう。その姿は、どこか受動的でもあります。
これからは子どもたちの「学び」に重心を置き、教師の立ち位置は、学習者同士の相互交流を促すこと、学びの状況を把握してリフレクションを促すことに力を注いでいく必要があると考えています。この考えをもとに、「子どもの論理」で創る国語授業研究会では、授業の具体として「リフレクション型国語科授業」を提案しています。
教師の発問によって授業を構成していくのではなく、学びの文脈の中で教師の「問いかけ」によって、子どもたちが教材の特性にふれることができるようにしています。実践を重ねる中で、授業者として強く思うことは、「発問≠問いかけ」ということです。発問は、教える側と学ぶ側の筋を一致させる授業展開の要であり、学習者の思考を促すとともに、授業の中心的役割を担う授業技術ですが、その一方で考えなければならないのは、国語科における発問は、教師の教える筋が重視されていたといわざるを得ません。
今回は「リフレクション型国語科授業」について、紹介していきます。
この物語は、中心人物である「トッコ」が、かすりの着物を着た不思議な男の子との出会いをきっかけに、渡ることができなかったつり橋を渡ることができ、山のくらしが楽しくなるという話です。この物語はファンタジー構造となっていて、入口と出口は「風」です。かすりの着物を着た男の子が登場するのはどこからどこまでかを考えることによって、ファンタジーのもつ不思議な楽しさを味わうことができるとともに、構造を捉えることができる教材です。
授業にあたっては、まず一読後「読んで気になったところはありましたか?」「気になった登場人物はだれ?」など、読後感や気になった登場人物について話し合うことによって、問いづくりへの足場がけを行いました。次に、「みんなで考えたい問いをつくろう!」と示し、グループで問いづくりに取り組むようにしました。
グループ学習では、子どもたちはみんなで考えたい、楽しめる問いについて話し合っていきます。グループ学習などの学びを組織する場合、気を付けたいことがあります。例えば、「〇〇してみましょう」と活動指示を出した後の、冒頭の2~3分はグループ活動の子どもたちの様子を見守るということです。これは、私自身も気を付けていることですが、活動指示を出したからといって安心してしまい、ついつい、次の教具を準備してしまったり、黒板を消してチョークをそろえたりするなど、次の活動の準備に気を取られてしまうことがあります。
教師による活動指示が明確で、子どもたちによる話し合いが次々と展開されていたらいいのですが、グループの中には場合によって「えっ、今から何するの?」「何か話し合うみたいだよ」「何を? だれかに聞いてみてよ」など、グループで何をするのかという活動内容を話し合っていることがあります。一方で、何をするのか活動の内容は明らかであるものの、話し合いによる相互交流がなかなか活発にならないというグループもあります。
そのため、活動指示の直後は、子どもたちの活動の様子を見守りながら、グループに入って確認をしたり、子ども同士の相互交流を促したりする必要があります。
子どもたちから問いが出されたら、その中から次の時間に読み合いたい問いを1つに決定していきます。問いの検討です。その際、教師が行うのは話し合いのコーディネイトです。「まとめられる問いはないかな?」「どの問いを中心に読んでいきたい?」など問いの検討を行います。
ここでは、問いの検討を通して、次の時間は「どうして、かすりの着物を着た男の子とならつり橋をわたることができたの?」の問いに決まりました。
読み合いでは、トッコがつり橋をわたることができたのは男の子のおかげで、「かすりの着物を着た男の子=山びこ」なのではないかということが中心話題となりました。その根拠として、例えば「まねするとぶつわよ」というように、男の子がトッコのまねばかりしていること、まねされることでトッコは怒り、そうして男の子を追いかけるうちにつり橋をわたることができたこと、また、男の子が出てくるとき、いなくなるときには「どっと風がふいて」というように「風」が関係していることが発言されました。
かすりの着物を着た男の子に話題が集まったところで、教師の側で「だったら、どうしてトッコの前にあらわれたの?」と問いかけました。すると、子どもたちからは「トッコにつり橋をわたらせるために出てきた」「トッコは寂しくて『ママ―』と叫んでいて、トッコのことがかわいそうだと思って、山の子たちと仲良くしてほしいと思って出てきた」というようにかすりの着物を着た男の子に対する意味付けがなされていきました。
「かすりの着物を着た男の子=山びこ」「ファンタジー構造の入口・出口としての『風』」などは、この物語の教材の特性です。子どもたちが立てた問いをもとに読み合うことによって、その主体も子どもたちになります。
発問による授業展開の場合、教師の発問によって思考の文脈をつくっていきます。しかし、リフレクション型国語科授業の場合、子どもの発言によって思考の文脈がつくられていきます。つまり、学習者である子どもたちの自由な発言のやりとりを中心に展開することで、物語を読み深めることができるのです。
そのため、板書は「表現的板書法」を取り入れています。
この板書法は、話題やテーマに対する子どもの発言をそのまま、または要点をまとめて書いていく板書法です。国語科における作品の読み深めなど、子ども同士の自由なやりとりを中心に授業を展開させる場合に有効な板書法です。
中心となる話題やテーマ、本文を黒板の中心に置き、その周りに子どもたちの発言を文字化し、意見や考えのつながりが視覚化できるように、矢印や記号、図式化を用いています。ここでは登場人物であるトッコとかすりの着物を着た男の子を中心に置き、その周りに発言をまとめるように展開しています。
学習者である子どもたちが立てた問いの読み合いの次の時間には、問いの評価を行います。言語活動として、ここでは「問い日記」を用います。「問い」と「日記」それぞれの機能を掛け合わせてできた言語活動です。これも、「子どもの論理」創る国語授業研究会で提案しています。紙面の関係上、詳しくは別の機会に紹介したいと思います。
本稿では「リフレクション型国語科授業」の概要を紹介しました。学習者による「問いづくり → 読み合い → 問いの評価」を位置付けています。この授業展開は「つり橋わたれ」のようなファンタジー構造をもつ作品だけでなく、そのほかの学年の、どの物語でも用いることができます。
例えば、次に示すのは、宮沢賢治作「やまなし」(光村図書/6年)での板書です。子どもたちは問いづくりにおいて、「最後の3行の意味とは?」という問いを立てて、読み合いました。フレーム構造を捉えた上で、板書にもあるように、「対比」「比喩表現」「情景描写」に着目した読み合いが展開されていきました。
「リフレクション型国語科授業」について、詳しくは、雑誌『子どもと創る「国語の授業」』にて「モチモチの木」や「白いぼうし」での授業展開を紹介しています。よろしければ、バックナンバーをご覧ください。
〔参考文献〕
石井英真(2020)『授業づくりの深め方 「よい授業」をデザインするための5つのツボ』ミネルヴァ書房
鹿毛雅治(2019)『授業という営み 子どもとともに「主体的に学ぶ場」を創る』教育出版
小山義徳、道田泰司編(2021)『「問う力」を育てる理論と実践 問い・質問・発問の活用の仕方を探る』ひつじ書房
田近洵一(1993)『読み手を育てる 読者論から読書行為論へ』明治図書出版
竜田徹(2014)『構想力を育む国語教育』渓水社
松本修、西田太郎(2020)『小学校国語科〈問い〉づくりと読みの交流の学習デザイン 物語を主体的に読む力を育てる理論と実践』明治図書出版
白坂洋一(2022)「問い日記をつくろう!」第85回国語教育全国大会(オンライン)/授業資料
白坂 洋一(しらさか・よういち)
筑波大学付属小学校教諭
全国国語授業研究会理事/学校図書国語教科書編集委員/『例解学習漢字辞典』(小学館)編集委員/「子どもの論理」で創る国語授業研究会会長
今月の5分で分かるシリーズは、小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、扱いに困りがちな詩の単元を、ICTを用いて、言葉にしづらい詩の解釈を視覚化することで、誰でも簡単に楽しく詩の世界を理解し、共有できるようになるアイデアをご紹介いただきました。
記事を読む教材「新聞を読もう」(光村図書・5年)は、光村図書の教材、2年「みの回りのものを読もう」や3年「ポスターを読もう」などと同じ系統に位置づき、複数の文や図を読み比べることで、筆者の、読み手に合わせた説明の工夫やその目的について学習することができます。 今回は後藤竜也先生(東京都・調布市立八雲台小学校)に、子どもたちが学習のつながりを意識できるように、計画的に既習の内容を押さえていく授業づくりの工夫をご提案いただきました。
記事を読む今回は、山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、新教材「『給食だより』を読みくらべよう」の授業づくりについて、ご提案いただきました。 本教材は、全く異なるアプローチから書かれていながら、同じ目的をもつ2つの文章を読み比べる内容です。 手持ちのポイントを割り振るという活動を通して、どちらの文章がよりよいか教材に向き合いやすくし、割り振った理由を定量的に説明する必要から、子どもたちは一つひとつの言葉を積極的に吟味するようになります。
記事を読む教材「たずねびと」(光村図書・5年)は、「原爆供養塔納骨名簿」に自分と同姓同名の名前を見つけたことから、「楠木アヤ」について気になった主人公の綾が、彼女について尋ねるうちに、普通に暮らす多くの人が亡くなった原爆の悲惨さや、それを忘れないでいることの大切さに気付いていく物語文です。 今回は小泉芳男先生(広島県・広島市立袋町小学校)に、「問いをつくり、決定し、問いで読み合い、問いを評価することで、あらためて問いを考える」といった、一連の探究のサイクルを繰り返すことで、「自分事の学び」を創ることのできる授業について提案していただきました。
記事を読む本年度より登場した「紙ひこうき、きみへ」(教育出版 3年)は、しまりすキリリの、風のようにふわりと現れ、居なくなってしまったみけりすミークとの友情と揺れ動く気持ちが描かれ、読み手もどこか遠くにいる友人に思いを馳せたくなる物語文教材です。 今回は沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校主任教諭)に、プロフィールカードをまとめる言語活動を通して、物語文学習において重要となる人物像を読み取る力が、子どもたちにしっかりと身に付く、単元づくりをご提案いただきました。
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