「くらしを便利にするために」 —筆者を感じることで子どもたちが文章に前のめりになる、教科書改訂の時期の説明文授業-
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執筆者: 小崎 景綱
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単元名:「便利」とは何か筆者と対話しよう
教材:「くらしを便利にするために」(教育出版・4年)
本教材「くらしを便利にするために」の改訂前の旧題は、「『便利』ということ」でした。改題したことで、はじめから「便利」という言葉に焦点を当てず、本文を読むことを通して、「便利」とは何か、読み手の考えを揺さぶり、見つめ直せるようになったといえます。
小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えようとしたのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
目次
学びを子どもに委ねる。子どもが自分の学び方を自己決定できるようにする。
子どもたちが自分の学びを自分でプロデュースできるようになることは、彼らが今後生きていく上で非常に大きな力となる。そのため、子どもの思考に寄り添って授業を展開することは、これからの授業づくりにおいて大きな流れとなっていくことは、間違いないだろう。
また、教師が学びの伴走者と表現されたり、子どもたちとともに教材に向かっていく者として位置づけられたりすることも多く見られる。教育全体に対するこれらの大きなスタンスを大切にしながら、国語科がこれまで突き詰めてきた説明文の読みの力についても、子どもたちが身に付けられるような授業を考えたい。
説明文の読み方の学習で大切なことの1つに、「筆者を読む」がある。多くの実践者・研究者がたくさんの実践をしているが、私も以下の3つの観点から説明文の学習を捉えている。
※二瓶弘行(2015)を参考に表現を一部簡略化したもの
などと、説明文を読むときの前提・基本姿勢を確認する。様々な読みの方略や学習の展開があっても、この前提が大きく揺らぐことはない。
しかし説明文は、物語文に比べて空所に思いを巡らせたり没入したりする類の文章ではなく、子どもたちの中に学び手としての意識をもたせるのが難しい。だからこそ、ただの文字の羅列ではなく、文章の奥に生身の人間がいて、懸命な努力の成果として書かれたものが説明文であるという前提を共有したい。
特に、教科書改訂の時期には、文章内容や書き方が変更されるものも多いため、文章の向こう側の生身の筆者を感じるチャンスである。筆者がどのような思いで変更に踏み切ったのか、思いを馳せることで、文章内容に対する理解が深まると同時に、説明文を読むための力も付いていくことを演出したい。
本教材は、
という意識を子どもたちに芽生えさせるには、ぴったりの教材である。
筆者を読む力の中に、以下の指導事項と関連する細分化された力、読みの方略がある。特に本単元において身に付けたい力について、確認しておきたい。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。
今回は笠原冬星先生(大阪府・寝屋川市立三井小学校)に、説明文の4つの基本構造をはじめに押さえ、平成27年度版と令和2・6年度版の本教材を読み比べることで、説明文の構造がどのように変化したのか、それぞれにどのようなよさがあるのか、について気づける授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「スワンレイクのほとりで」は、本文中に数多くの色彩が登場し、中心人物「歌」の一人称で、グレンとの思い出が色鮮やかに描かれるなど、情景描写の多い物語文です。野菜畑から湖へと場面が移るにつれ、色の数はどんどん増え、色たちが動き出すクライマックスでは、歌の高揚感が伝わってくるようです。 本教材について沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に、情景描写に着目しながら、様々な視点から読者が「歌」に寄り添うことで、同化・異化という「登場人物との距離感」を意識した読みの力が育つ授業づくりについてご提案いただきました。