「想像力のスイッチを入れよう」 -比較することで、新しい視点を獲得する国語授業-
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執筆者: 笠原 冬星
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単元名:筆者の伝える工夫を見つけよう!
教材:「想像力のスイッチを入れよう」(光村図書・5年)
「地域最安値!」といった曖昧な「範囲」や、「延べ合格者数No.1」が割合ではなく「合計数」を表すなど、書き手が選んだ言葉のレトリックで、私たちの印象は大きく変わります。本教材の学習を通して、書き手が、誰に、どのように受け取ってほしいと意図して書いた文章なのか、立ち止まり吟味できるようになるでしょう。
今回は笠原冬星先生(大阪府・寝屋川市立三井小学校)に、説明文の4つの基本構造をはじめに押さえ、平成27年度版と令和2・6年度版の本教材を読み比べることで、説明文の構造がどのように変化したのか、それぞれにどのようなよさがあるのか、について気づける授業づくりの工夫をご提案いただきました。
目次
本教材「想像力のスイッチを入れよう」は、ジャーナリストである下村健一氏が書いた説明文である。この話は具体的な3つの事例を挙げながら説明している。1つ目はマラソン大会、2つ目は図形、3つ目はサッカー監督である。
そして、この文章は令和2・6年度版と平成27年度版では、サッカー監督の事例において、文章構成が変えられている。これは、筆者下村氏の「よりよく伝わる文章にしたい」という思いが伝わってくる変更である。
具体的には、結論の位置が変わっている。
平成27年度版では、「最後に、いちばん大切なのは、結論を急がないことだ。」と書かれているが、令和6年度版では、「まず大切なのは、結論を急がないことだ。」という文章に変更されている。つまり、筆者が元々考えている「一番大切なこと」は「結論を急がないこと」である。しかし、令和2・6年度版では、最初の方に移動している。
これは、筆者が意図的に書き換えているのである。平成27年度版は、「一番大切なこと」は最後に書かれている「尾括型」であるのに対して、令和2・6年度版では最初に書かれている「頭括型」になっている。このような、文章の書き換えの工夫を踏まえながら、「尾括型」「頭括型」それぞれの述べ方のよさを学び、自分たちが今後書く様々な文章に生かしていくことができるようになりたい。
以上が教材分析と単元の目標である。
今回は、2つの文章を比較する活動を取り入れることを提案する。
文章は単独で読んでいると気づきにくいことが、複数の文章を読み比べることで、気づけることがある。Aの図だけを見て、「気づいたことを答えましょう」と言われてもなかなか難しい。けれども、「AとBの図を見比べて気づいたことを答えましょう」という問いなら、「三角形が下を向いている」や「円は楕円に、正方形は長方形になっている」など、答えることができるようになる。
つまり、文章は1つでは、違いをみつけるのは難しいが、複数読み比べることにより、その違いもはっきりと見えてくるといえる(下図を参照)。
近年、様々なところで耳にする「探究」。このキーワードが学習指導要領に位置付けられたのは2008年、なんともう16年も前のことである。 大きな自然災害や世界中で猛威を振るった感染症など、想像もしていなかった様々な出来事が次々と起こり、変化の激しさを実感せざるを得ない現在では、「探究する国語授業」が自分の一番の研究テーマとなっている。 答えのない問題を解決しなければならない社会。このような社会で生きていく子どもたちは、「探究する学び」が必要であろう。授業後も学び続ける子ども、答えのない問題に向き合い粘り強く解決していこうとする子どもを育てていかなければならない。
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。