
『にじいろのさかな』 ー友達のことを思い、誰にでも優しくしようと思う1冊
|
執筆者: 比江嶋 哲
|
書名:にじいろのさかな
文・絵:マーカス・フィスター
訳:谷川俊太郎
出版社:講談社
出版年:1995年
ページ数:25
海の中のお魚の話といえば「スイミー」がよく知られていますが、今回は、同じ谷川俊太郎さんが訳した「にじいろのさかなシリーズ」の1冊を、比江嶋哲先生(宮崎県都城市立有水小学校)に紹介いただきました。幸せになるために「にじうお」がとった行動、子どもたちはどのように受け止めるのでしょうか。
マーカス・フィスターの「にじいろのさかなシリーズ」の一番始めの作品で、世界で3000万人の読者に迎え入れられた絵本です。
あおくふかいとおくの海に、にじのようなきらきらかがやくうろこをもった魚、にじうお。でも、その美しさを得意になって自慢してしまったことで、みんながはなれていきます。
だれもほめなくなって、ひとりぼっちになったにじうお。
悩んだにじうおは、ひとでに紹介されて、深いほらあなにいるたこに相談に行きます。
たこと相談した後、にじうおはある行動を取ります。
さて、その行動で、にじうおは幸せになれるのでしょうか?
相手の気持ちを考えること。友達を大切にすること。そして友達のためにできることをしてあげること。
子どもたちの日常や人間関係のなかでも起こりそうな経験を、谷川俊太郎さんのすてきな訳と虹色に光る魚の挿絵で表現しています。
読者である子どもが理解しやすいように短文で書かれ、体言止め、反復、比喩、倒置など様々な技法を使って、工夫して訳されています。
にじうおの体にキラキラ光る銀色のうろこのシールが付けられていて、とても目を引きます。絵本を傾けるとキラキラ光って見えるので、子どもたちも何度も前のページを見ながら、くり返し読んでいます。
海のなかのお話ではありますが、シリーズで描かれているエピソードは、どれも実際に学級のなかや、友だち同士で起こりそうな出来事で、子どもたちにとって共感しやすい内容です。そして、最後には、とても優しい気持ちになれます。
他の「にじいろのさかなシリーズ」でも、うそをついて、みんなの注意を引く魚のお話や、仲間はずれにされた魚のお話などがあり、読みながら自然と集団生活で必要なことなどを学ぶことができます。
また、読み終わった後、図画工作などの時間に、画用紙に描いたにじうおのうろこに色を塗らせて掲示するのも面白い活動になります。
私がこの本を選んだ理由は、とても読みやすく、子どもたちの心に刺さりそうなお話だと思ったからです。実際に読み聞かせをする際は、子どもたちのつぶやきなどを拾いながら、ゆっくり読み進めました。今回は1年生、2年生、3年生の13人に読み聞かせました。
読んでいる途中では、「あなたたちならうろこをあげる?」と聞いたら「あげない。」と言っていたのですが、最後の方で「にじうおのしたことはよかったのかな?」と聞いてみると、「よかったと思う。」とみんなが答えていました。
読み聞かせ後の感想としては、こういう意見が上がっていました。
その後、シリーズの「にじいろのさかなとおはなしさん」を続けて読んであげると、一枚だけ銀色のうろこをつけている魚を見つけては、「あ、うろこをもらった魚がいる!」「みんな仲良しになったんだね。」などの声が上がっていました。
比江嶋 哲(ひえじま・さとし)
宮崎県都城市立有水小学校教頭
全国国語授業研究会理事/全国大学国語教育学会会員/日本国語教育学会会員
有料記事
今回は沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に、名言カードの作成という表現活動に向けて、岩谷さんにインタビューをするという想定で本文を読み深めることで、おのずと要点をしぼって文をまとめる意識が育まれるという、ユニークな授業づくりのアイデアについてご提案いただきました。
有料記事
新教材「模型のまち」では、中心人物「亮」の、ひろしまのまちへの捉え方の変容が、色彩の描写を通して読み取れるよう工夫されています。「模型」といった、今でもそのまま昔でもない仮初の存在と、本文中の夢の出来事が重ねられ、白の中にビー玉の色が交わる描写が印象的です。 今回は橋爪秀幸先生(大阪府・豊中市立熊野田小学校)に、亮の「ビー玉」「模型のまち」の捉え方の変容について、色の象徴表現や細部の読みの精査・解釈を通して、対話的に深められる授業づくりの工夫をご提案いただきました。
有料記事
提案:日常生活で発揮できる学びを 南山大学附属小学校 山本真司
2025年全国国語授業研究大会 2年 紙コップ花火の作り方/おもちゃの作り方をせつめいしよう
有料記事
提案:文学的文章を交流しながら俯瞰的に読める単元づくり 宮崎県・都城市立有水小学校 比江嶋 哲
2025年全国国語授業研究大会 3年 ちいちゃんのかげおくり