
「模型のまち」 ―全体と細部を行き来して読み深める文学の授業―
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執筆者: 橋爪 秀幸
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新教材「模型のまち」では、中心人物「亮」の、ひろしまのまちへの捉え方の変容が、色彩の描写を通して読み取れるよう工夫されています。「模型」といった、今でもそのまま昔でもない仮初の存在と、亮が経験した夢のような出来事が重なり、白の中にビー玉の色が交わる描写が印象的です。
今回は橋爪秀幸先生(大阪府・豊中市立熊野田小学校)に、亮の「ビー玉」「模型のまち」の捉え方の変容について、細部の、色の象徴表現や読みの精査・解釈と全体における働きとを相互に関連づけることで、読みを深める授業づくりをご提案いただきました。
本作品は、転校生としてひろしまにやってきた亮の「ひろしまのまち」に対する見方が変容していく物語である。
亮は、「ひろしまのまち」に対して、何だかつまんないという印象をはじめ抱いていた。原爆ドームを見たときも、「ふうん。」で終わるくらい関心がなかった。しかし、同級生の真由の兄(圭太)が取り組む「模型のまち」づくりを手伝う中で、平和公園には、もともとまちがあったことを知る。しかし、亮の中では、まちは目の前の模型でしかなかった。
そんな折、亮は夢らしきものの中で、模型のまちで生きるかっちゃんたちと出会い、ビー玉で遊ぶ。その後、「発掘調査現地見学会」に参加し、出土品のビー玉を手にしたとき、模型のまちがあったこと、まちの子どもたちがいたことに確信をもつようになるのである。変容を捉える際は、何度も出てくる「ビー玉」や「模型のまち」に着目し、描かれ方の違いを捉えていくことがポイントになる。
本作品は、1場面が「現在」、2~7場面が「過去」、8場面が「現在」の額縁構造で描かれている。分量のある文章であるため、「時」の変化に着目して構成を確かに捉えて読むことで、確かな内容理解へとつなげたい。「過去」の場面では、亮が誰と出会い、どのように変容していったのかを捉えることが重要である。一方、1場面と8場面は、「現在」の亮が描かれている。
1場面では、「なぜ、亮がビー玉を5つも持っているのだろうか」や「『いま、むかし、いま、むかし。』とは何のことなのか」、「『あのまち』とはどのまちのことなのか」、「亮はどんな人物なのか」といった疑問が生じ、読者を作品世界に引き込むしかけが見られる。
8場面は、1場面で生じた疑問が解決し、亮の「ひろしま」のまちや当時の人々への思いの強さを感じる描かれ方で締めくくられている。また、現在の場面において、亮の年齢をくわしく書いていないことで、「ひろしま」についての出来事を忘れずに考え続けることが重要であるというメッセージ性を感じ取ることができる。
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新教材「模型のまち」では、中心人物「亮」の、ひろしまのまちへの捉え方の変容が、色彩の描写を通して読み取れるよう工夫されています。「模型」といった、今でもそのまま昔でもない仮初の存在と、本文中の夢の出来事が重ねられ、白の中にビー玉の色が交わる描写が印象的です。 今回は橋爪秀幸先生(大阪府・豊中市立熊野田小学校)に、亮の「ビー玉」「模型のまち」の捉え方の変容について、色の象徴表現や細部の読みの精査・解釈を通して、対話的に深められる授業づくりの工夫をご提案いただきました。
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