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    5分でわかる 子どもの初発感想から作る国語授業

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    5分でわかる 子どもの初発感想から創る国語授業

    5分でわかる 子どもの初発感想から創る国語授業

    執筆者: 仲野和義

    |

    2025年7月17日

    7月号の「5分でわかるシリーズ」は、仲野和義先生(大阪府・富田林市立向陽台小学校)に、「子どもの数だけ問いがある」という考えのもと、子どもたち一人ひとりの初発感想から生まれる問いを起点に、授業を構成するアイデアをご提案いただきました。

    目次

    1. 「それはだれの問いなのか」 2. 授業づくりのプロセス 3. 子どもがつくった問いが、子どもを動かす

    1. 「それはだれの問いなのか」

    私は、子どもの数だけ問いがあるべきだと考えている。そうした問いが、集団の中で埋もれてしまうのは非常に惜しいことである。そこで、初発の感想で生まれた問いを整理・分類し、ある程度まとめることで、単元全体の計画や各時間の課題に反映できないかと考え、初発感想を起点とした授業づくりを構想した。

    「子どもの数だけ問いがある」と仮定する以上、クラス全員の初発感想を共有する必要がある。単元が始まると、まず子どもたちに初発感想を書かせる。その際、問いの質を保証するため、次の6つの観点を提示した。

    • ・疑問

    • ・印象

    • ・共感

    • ・私はこう読みたい

    • ・私はこれを追究したい

    • ・私はここを深掘りしたい
    図1 単元計画イメージ
    図① 単元計画イメージ

    この活動により、子どもたちは個々に問いを立て、それらがクラス全体で共有されていく。ここからが、この実践の大きなポイントである。

    2. 授業づくりのプロセス

    まず、子どもたちが書いた初発感想を分類していく。分類の軸として、次の4点を設定した。

    • ① 中心人物・対人物の言動に関すること
    • ② 出来事に関すること
    • ③ 場面の移り変わり
    • ④ キーアイテム
    • こうしてある程度仕分けられた問いを、本文の流れに沿って並べていくことで、単元全体の授業構造が見えてくるのである。

    図②  授業づくりのイメージ
    図②  授業づくりのイメージ

    例として、「海の命」(光村図書・6年)での実践を紹介する。子どもたちの疑問が集中した「なぜ太一は瀬の主を殺さなかったのか」を単元の中心発問に据えた。そのうえで、対人物との関わりについて感想を書いていた子どもたちの言葉をもとに、学習課題を組み立てていった。

    例として、以下のような感想があった。


    「与吉じいさが死んだとき、自然な気持ちで両手を合わせたのが不思議だった」
    「『千びきに一ぴきしかとらない』という与吉じいさの言葉が印象に残った」
    「与吉じいさが亡くなったときの“海に帰った”という表現が心に残った」

    これらの感想を踏まえ、「『海に帰る』とはどういう意味か?」という学習課題を設定した。


    【単元計画】


    第1時:本文の範読、登場人物などの基本設定の確認、初発感想の記述
    第2時:初発感想の交流、個々の「読みの課題」設定
    第3時:人物相関図の作成
    第4時:課題① 父の人物像、  課題② 父の死の真相
    第5時:課題① 与吉じいさの人物像 、 課題② 父と与吉じいさの共通点と相違点
    第6時:課題① “村一番の漁師”の条件とは、  課題② 「海に帰る」とは
    第7時:課題① 母視点で海を見る、 課題② 成長した太一の視点で海を見る
    第8時:課題① 「不意に実現する夢」とは何か、 課題② 瀬の主との対峙(情景描写・比喩・色彩表現を読む)
    第9時:課題① 「なぜ太一は泣きそうになったのか」、 課題② 「なぜ太一は瀬の主を殺さなかったのか」
    第10時:課題① なぜ太一は「巨大なクエを見かけても話さなかった」のか、 課題② 太一は父を超えたのか
    第11時:「たいせつ」をふり返る

    この構成では、人物相関図の作成を「一人学習の時間」として必ず設定する。これにより、子どもたちは自分が抱いた疑問について深く考える時間を担保できる。その上で、他者の考えと出会うことで新たな解釈や視点、すなわち読みの深まりが派生する。
    各時間に課題①②を設定しているのは、「①でつかみ、②で深める」という学習の流れを意識しているからである。

    また、子どもたちの発した言葉から課題をつくっていくことで、自分の問いが授業のどこかで取り上げられるという期待感が生まれ、それが学習へのモチベーションの維持・向上につながっていく。第7時・第9時の板書を以下に示す。

    図③ 海の命 第7時
    図③ 海の命 第7時
    図④ 海の命 第9時

    加えて、事前に実践した「ぼくのブックウーマン(光村図書・6年)」では、「題名に“ぼくの”とあるのはなぜ?」という問いが子どもから出された。この疑問が主題に深く関係していたため、単元全体の中心課題として扱った。

    図⑤ ぼくのブックウーマン 第6時
    図⑤ ぼくのブックウーマン 第6時

    3. 子どもがつくった問いが、子どもを動かす

    学習中に取り上げられる問いが自分のものとずれている場合、子どものモチベーションは下がり、深い読みからも遠ざかってしまうことがある。反対に、自分が問いたかったことが授業の課題として扱われたとき、学習への意欲が高まり、マインドセットも健全に維持される。

    本実践はまだ研究途上であるが、子どもたちの初発感想を丁寧に分析・吟味し、それをもとに単元をデザインすることによって、子どもたちの学びがより主体的になることは間違いないと考えている。

    仲野和義(なかの・かずよし)

    大阪府・富田林市立向陽台小学校

    全国国語授業研究会/日本国語教育学会/日本学級力向上研究会

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