
5分でわかる詩の授業 「遊び」感覚で「読み」、「学び」を実感できる3つのポイント
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執筆者: 牧園 浩亘
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6月号の「5分でわかるシリーズ」は、牧園浩亘先生(大阪府・大阪市立巽南小学校)に、展開法を用いたクイズ形式の学習活動のある、詩の授業づくりについてご提案いただきました。詩の魅力にふれながらも、「遊び」から「読み」、そして「学び」へと接続することができるような、教師からの問いかけや言葉への意識づけのアイデアにご注目ください。
わたしは / 小さくなりたいな
一編の詩の2行目までを板書して、ある子どもに音読するよう促したときのことである。
その声に「ん?」「え!?」と、周囲の表情が一瞬固まった。私も周囲と同様、予想外の発言に少し戸惑いつつも、「だから授業はおもしろい」と子どもたちとワクワクしながら授業を寄り道してみた。
つまり、「一人の子の読み(解釈)」に、みんなが付き合い、詩の言葉を検討、吟味することにしたのである。
性のグラデーションの問題はいったん置いておき、話者が大人か子どもかを選択的に問い、全員で考えてみた。
ここで出た子どもたちの解釈も、さまざまおもしろいものであった。2年生の5月中旬に行われた授業の1コマのことである。
詩のたった2行を板書し、音読するよう促しただけ。ある子どもの予想外のつぶやきに解釈が表出され、その考えにみんなが立ち止まる。仲間のつぶやきが起点となっているからこそ、根拠や理由について「考えてみたい」と全員で授業が展開される。全員で考えたからこそ、詩の続きが読みたくなる。しかも、次の言葉や文を予測しながら。ここまでくると、子どもたちは詩を読むというよりは、遊んでいるようにさえ見える。教師も子どもたちとともに、詩の言葉を検討、吟味し、読み味わう授業。
これこそがまさに授業の醍醐味であり、どうすればこのような授業を展開ができるのかと、読者のみなさまも日々頭を悩ませているのでないだろうか。もちろん、私もその1人である。 ただ、今回のような授業場面に遭遇できたのには、いくつかの要因があると考える。
「読む」を「遊び」に、「遊び」の中から「読む(解釈・分析)」を。そして「読む」を「学び」にする詩の授業について、3つのポイントを挙げる。
教師から与えられた教材について、教師から一方通行の指示・発問のみによって展開される授業。子どもたちは、なぜその教材を読んでいるのかがよくわからない。話者やくり返しなど、教科内容は教師の説明によって子どもたちが知ることになる。幾度となく、そのような授業を行ってきて、手応えを感じられずにいた。みなさんも経験があるのではないだろうか。
「そんな授業から脱却したい」「子どもたちから『読みたい』の声があがる授業を」
試行錯誤を続ける中、「読む」を「遊び」にできないだろうかとの思いがあった。子どもたちは遊びが大好きであり、遊びだと思えば喜々とした表情で取り組む。「読む」を「遊び」に変換したいと取り組んだのが詩集の読み聞かせであり、展開法による詩の授業である。
例えば、生き物や自然を主人公にして描かれた『のはらうた』(工藤直子)。朝の会や授業の導入で、一編ずつ詩の読み聞かせを行った。問うことは2つ。まず1つ目が、
子どもたちはクイズが大好き。遊んでいるときと同じ表情で、どんな生き物を描いた詩なのか、各々の意見を発表する。ここで、子どもたちの意見に対して、問い返す。
つまり、考えの根拠にした言葉はどれかを問うているのだが、「どの言葉から考えたのか」と事前に告げておくのではなく、考えを聞いた後に、根拠を問うのがポイントである。
根拠となる言葉をあげられたときには、「よく聞けてたね」と、「聞く力」も鍛えられる。
1行の文、たった1つの言葉からもさまざまな考えが出される。1つの言葉からも広く解釈できる詩の魅力を感じながら、聞く力や言葉を根拠に考え読む力が身に付けられる。「題名」を伏せておき、題名を考える展開も同様に行える。
何編かの詩を読み聞かせて慣れてきたころに、展開法(1行1行順序にしたがって進める)で授業を行う。読み聞かせと同様、子どもたちは「読む」を「遊び」感覚で取り組む。 教師が1行ずつ板書し、視写と音読を繰り返しながら、1編の詩をノートに書いていく。展開法のよさは、次の行、言葉を予測しながら読む楽しさにある。予測にも根拠や理由がある。
「『ぼく』だから~」「同じ言葉が続いているから~」「『でも』と書かれているから~」
このような声があがったとき、「遊び」から「読む(解釈・分析)」へつなぐチャンスである。「すごいこと発見したね」と教師は驚いた上で、「作者」と「話者」の違い、「くり返し」など教科内容の学習用語を教える。子どもたちが発見したかのように。自分たちで発見したものは、次の詩を読むときのアイテムとして子どもたちは使うようになる。全員で詩を読み合うための学習用語を、遊びの読みを通して貯めていくのである。
展開法による授業は、視写力や音読力を鍛えるのにも有効である。
冒頭で紹介した「先生、ぼく男ですよ」の発言、この発言に立ち止まり話者について考えた授業。
詳細は省略するが、「話者」「くり返し」「順序」という学習用語の共有がなされていたからこそ、全員で1人の読み(解釈)に付き合うことができたのである。1行1行先を予測しながら読む、遊び感覚の読みだからこそ、「続きを読みたい」と思うし、読んでいるうちに新たな発見(学習用語)があるから、学んでいる実感も湧き、「もっと読んでみたい」の思いが生まれる。
展開法による授業は、子どもたちが知らない詩だからこそ、先を考えながら読む楽しさがある。子どもたちが、遊び感覚で読める魅力的な詩を探し出すのが大変だと思われる方もいるかもしれない。ただ、それは身近にある。学校の図書室をのぞいてみよう。私が用意した詩集もすべて学校の図書室で発見したものである。
『のはらうた』は版画版もある。『なぞなぞあそびうた』(角野栄子(著),スズキコージ (イラスト),のら書房,1992)、『ことばあそびうた』(谷川俊太郎(著),瀬川 康男 (イラスト),福音館書房,1973)も、子どもたちの読むを遊びにするのにはうってつけである。『みんなで読む詩・ひとりで読む詩』小海永二編シリーズもおすすめである。
最初は読み聞かせて、「誰が書いたのかな」「題名はなんだろう」「どの言葉からそう考えたのかな」など、たったこれだけから遊び感覚でスタートしてみよう。そして、展開法の授業でみんなと読み合う。浴びるように読んでいるうちに、繰り返し、リズムや語感など感覚的につかめてくる。そこで、機会を捉えて学習用語を獲得していく。自分たちで獲得した読み方を、子どもたちは使いたがる。「もっと読みたい」(学びたい)と。気付けば「遊び」から「読み」、そして「学び」へと子どもたちの読み方が変化しているだろう。
〔引用・参考文献〕
牧園浩亘(まきぞの・ひろのぶ)
大阪府・大阪市立巽南小学校
教育サークルREDS大阪/全国国語授業研究会/日本国語教育学会/日本授業UD学会/授業UD教育士(国語)
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