
「春風をたどって」 -学びの文脈をふまえた、中学年はじめての物語文授業のデザイン-
|
執筆者: 三浦 剛
|
教材「春風をたどって」では、登場人物の気持ちを直接表す言葉はあまり出てきません。そのため、行動描写や会話文の一つひとつに着目し、複数の叙述と結び付けることを通して、登場人物の気持ちとその変化を想像する力が育むことができます。
今回は三浦 剛先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)に、本教材の挿絵を入れ替えたり、本文には出てこない文を提示したりする仕掛けによって、叙述を意識できるように促すことで、低学年から中学年の物語文学習へと緩やかに接続する授業の工夫を、ご紹介いただきました。
本教材は、3年生で学習する物語文の第一教材である。中学年として新たなスタートを切った子どもたちは、きっと国語だけでなく、どの教科においても、新しく学ぶ内容に心躍らせていることだろう。
本教材は、そんな子どもの気持ちに寄り添うかのように、色鮮やかな挿絵が並んでおり、読み手の興味を引きつけるような内容になっている。そうした魅力的な挿絵をうまく活用し、内容理解を促す授業展開を考えたい。
子どもたちは、お話の世界を楽しむという低学年での学習経験を経ている。こうした発達段階や、学びの文脈を考慮しながら授業を構想するという点においても、挿絵は重要なアイテムである。魅力的な挿絵を有効活用したい。
本教材は、語り手が、中心人物「ルウ」の視点に寄り添いながら話を進める三人称限定視点によって描かれている。読み手が、ルウの目線に立って読み進めることで、ルウの心情の変化を捉えやすくなっているという点が、この物語の大きな特徴といえるだろう。
本単元は、「言葉に着目して、登場人物の気持ちを考え、物語の続きを想像して伝え合う」ことをねらいとして掲げている。学習指導要領に、「様子や行動、気持ちや性格を表す語句の量を増し、語彙を豊かにすることができる。(知・技(1)オ)」「登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉えることができる。(思・判・表 Cイ)」とあるように、気持ちを捉える語彙の拡充を促すことと、叙述を基にしながら読み解くことの両面から、読みの力を育むことが求められる。授業では、「ふさふさしたしっぽをたいくつそうにゆらしながら……」という叙述から、「何だか気持ちが晴れないネガティブな気分でいるルウの気持ちが読み取れそうだ」というように、何を手がかりに、どのようなことが読み解けるかを確かめていく必要があるだろう。
以上をふまえて、行動描写や会話文といった学習用語を確認しつつ、気持ちを捉える手がかりをつかんでいけるような授業を構想したい。
物語を読み進めていくと、ルウがはじめに見たいと願っていたものと、実際に見たものとは異なることがわかる。最初にルウが見たいと願っていたものは「海」だったが、最終的にルウが見た景色は、一面青色で埋め尽くされた「花ばたけ」であり、ルウはその景色に満足している。
このズレをどのように埋めるかは読者に委ねられているが、願っていたことと実際に実現したこととの間に生じているズレは、この物語を読み解いていく上で、重要なポイントとなるだろう。こうした所にも目を向けながら読むことで、ルウの心情が、何をきっかけに、どのように変化したのかを読み解くことができるだろう。
有料記事
教材「時計の時間と心の時間」は、「心の時間」はそのときの状況や一人ひとりで感じ方が異なることを、わかりやすい例から実験の事例へと順に挙げて説明し、正確な「時計の時間」と合わせてどのように生活すべきなのか、読者に考えるきっかけを与えてくれます。 今回は比江嶋 哲先生(宮崎県・都城市立有水小学校)に、「〔練習〕笑うから楽しい」「時計の時間と心の時間」「〔情報〕主張と事例」を通して学習することで、「主張と事例の関係をとらえる」力が育めるような授業づくりをご提案をいただきました。
6年 主張と事例 明日から実践!先取り授業 時計の時間と心の時間 笑うから楽しい
有料記事
新教材「つぼみ」は、左のページに「問い」が示され、ページをめくると「答え」がわかるというような構成になっており、クイズを楽しむように説明文の基本である「問い」と「答え」を学べる教材です。 今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、初めての説明文学習であることを踏まえ、指示語が何を指し、主語は何なのか丁寧に押さえられるよう問いかけを行い、説明文の読み方が身に付く授業づくりの工夫を提案いただきました。
有料記事
本教材「やくそく」について、三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、登場人物に同化する体験を通して、一人ひとりが想像力を働かせ、豊かに物語世界を楽しむことができる、「同化体験」を取り入れた授業づくりのご提案をいただきました。
今月の「教師の必読書」をご紹介いただくのは、柘植遼平先生(昭和学院小学校)です。「教える」ことの技術や、教師に必要な人間性などをあらためて問い直し、教育の不易について語る有田和正先生の著書をご紹介いただきました。
有料記事
文学的文章の授業を展開するに当たって、授業者として大切にしていることは、学習者が「読み取ったことをもとに自身の考えを表現できるようにしていく」ということである。そこには、何のために表現するのかという「学びの目的意識」が必要である。そして、学習を通してどのような力が身に付いたのかということをとらえ、他の学びにも転用していけるような「学びの自覚化」につなげていくことが必要である。よって、単元の導入部分では、子どもがいかに学ぶことに対する「必要感」をもち、「目的意識」をもって学習を進められるようにできるのかを重視する。
4年 世界一美しいぼくの村 国語探究つくばゼミ 筑波大学附属小学校