「紙風船」の授業づくり -ものごとの見方・考え方を育て、主題にせまる詩の学習-
|
執筆者: 石原 厚志
|
本教材「紙風船」は、紙風船といった、柔らかく光の下でフワフワと淡い色彩を帯びる、抽象性のあるモチーフを喩えに用いることで、新たな門出の近い6年生にとって、諦めず希望を抱き続けるといった、象徴的なメッセージが読み取りやすくなっています。
本教材の授業づくりについて、石原厚志先生(東京都・立川市立新生小学校)に、詩の指導方法である「展開法」と「 層序 法」を軸に、一つひとつの言葉のつながりを吟味し、詩の主題に迫りたくなるような展開の工夫や、さらに自分事として学びを深められるようなゆさぶり発問の工夫などをご紹介いただきました。
4月の山村暮鳥作「風景 純銀もざいく」、9月のまど・みちお作「イナゴ」に続く、3つ目の詩教材である。
どんなに高く打ち上げても、最後には落ちてくる「紙風船」。またその多くは、むなしくはかない「願いごと」。2つの事物が否定的なニュアンスを感じさせることは否めない。
しかし、作品全体から受ける印象は決して後ろ向きなものではない。それは「もっと高く」「もっともっと高く」「何度でも」という繰り返しの表現が作品の雰囲気を明るく肯定的なものに変化させているからであろう。また、願いごとの前に付けられた「美しい」という言葉もその手助けとなっている。紙風船を美しい願いごとに喩え、内容的にも抽象度が高い詩であり、主題にせまりたくなる詩である。
授業では、目の前の子どもたちに、この教材のどこで、どのように認識の力(ものの見方・考え方)や表現の力(表し方)を育てるのか、ということが重要になってくる。そのためには、教材の特性を十分に把握し、子どもたちに身に付けさせたい認識・表現の力をはっきりさせることが必要である。特にポイントとなる教材の特性とその特性を活かした、学ばせたい指導内容(認識・表現の方法)を以下に挙げたい。
新教材「宇宙への思い」は、宇宙そのものへの感想や気持ちが表れている箇所が実は少なく、宇宙での経験や研究(事実)を通して、地球や身近なことの未来をどのように考えたのか(願い)、について最後に述べられていることが特徴的です。 本教材について、田中元康先生(高知大学教育学部附属小学校教諭/高知大学教職大学院教授)に、文末と主語に着目して読み、著者の述べている考えと事実を整理していく学習活動について提案していただきました。根拠に基づいて自分なりにまとめるため、より友だちと考えを共有し、読み深めたくなるでしょう。
授業で物語を読む楽しさは、その作品のおもしろさや主題について語り合うことにあると考えています。そのような読み手を育むことを目指して、1年生から系統的に読み方を身につけさせています。また、近年は読み方だけではなく、自ら「問い」をもち、それを追究していく学習構想力や自己調整力を培うことも意識しています。 そこで、「海の命」(立松和平 作)を中心教材とした6年生の物語単元では、子どもたちが課題を挙げ、自分の解決したい課題を選択し、互いに交流しながら主題に迫っていくように構想しました。
第4回 国語授業アップデートセミナー 開催日:2024年12月26日(木) 09:00〜12:50 公開授業と2本の講座は必見!これからの授業づくりが楽しくなります。こくちーずよりお申し込みください。
今回の5分でわかるシリーズは、佐藤圭先生(東京都・足立区立千寿小学校)に、子どもが主体となる国語の授業をつくるために、押さえておきたい指導技術のアイデアについて、ご紹介いただきました。教師が「待つ」「聴く」「受け止める」から、子どもたちも同じようにふるまえるようになる、ということが大切ですね。
2025年春 NHK朝の連続テレビ小説のモデルで話題のやなせたかし氏について、本教材ではその生い立ちからアンパンマンに込めた思いまでを説明しています。筆者である梯久美子氏は、やなせ氏と親交のあったノンフィクション作家であり、その書きぶりは、事実を基にした書き手の視点と、やなせたかしの気持ちの変化を書き分けていることが特徴的です。 今回は安井 望先生(神奈川県・横須賀市立夏島小学校)に、本教材の授業づくりにおいて、自分ならどこが一番重要な場面であると考えるのか、色紙にまとめることをゴールに、目的意識と主体的な読みが育まれるような仕掛けをご提案いただきました。
今回は松岡 整先生(高知大学附属小学校)に、本文との出合いを工夫し、新しい事柄と自身との認識のずれを生みだすことで、より主体的で探究的な読みが進むといった、当事者意識から深まる授業づくりの工夫をご紹介いただきました。