
「ぼくのブック・ウーマン」 -「協働的な学び」のよさを生かし、「探究的な学び」が充実する授業の創造-
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執筆者: 長屋 樹廣
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新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。
今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
目次
本学習材では、「カル」の変容がキーとなる
本学習材は、1930年代のアメリカで、学校や図書館が近くにない遠隔地の人々に、馬に乗って本を届けた図書館員たちの、実際にあった仕事を題材に作られたものである。
一人称視点で物語が展開していくため、中心人物「カル」の心情に寄り添って読むことができる。
文字を読むことができず、本を嫌っていた「カル」が、本を運んでくれる「ブック・ウーマン」と出会い、本を読むことのすばらしさに気づいていくという話である。
「ブック・ウーマン」は、馬に乗り、遠隔地に無料で本を届ける仕事をしていた女性たちのことである。山のずっと高い所で家族と暮らす少年「カル」の家に、「ブック・ウーマン」は、雨の日も、きりの日も、こごえそうな寒い日も、雪の日もやって来て、本を届けた。
カルは、どうしてそこまでしてブック・ウーマンは本を届けてくれるのか、その訳を知りたくなり、本を読み始める。 冬が長く、家の中での生活が続くが、カルはその長さが気にならない。春も近くなり、「ブック・ウーマン」が訪れたときに、「カル」は「ブック・ウーマン」に、本を届けてくれたお礼として、本の一部を声に出して読むという変容が見られた。
本学習材では、「カル」が「ブック・ウーマン」に出会うことを通して、本を読むことに対する考え方の変化や、雪が降り続く中、読書に没頭するという行動の変化が、学習者の目に留まることだろう。
単元の後半では、「カルがブック・ウーマンにプレゼントをしたい理由」等が、話題の1つとして考えられる。
「ブック・ウーマンのおかげで本が読めるようになった。そして、カルも本が好きになった」 「カルは、本を読むことを通して、本のおもしろさを知ったり、本を通して自分の世界が広がったりすることができた」等、文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめることができる単元にしたい。
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