「紙ひこうき、きみへ」 -「人物像」を捉えて表現しよう!-
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執筆者: 沼田 拓弥
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本年度より登場した「紙ひこうき、きみへ」(教育出版 3年)は、しまりすキリリの、風のようにふわりと現れ、居なくなってしまったみけりすミークとの友情と揺れ動く気持ちが描かれ、読み手もどこか遠くにいる友人に思いを馳せたくなる物語文教材です。
今回は沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校主任教諭)に、プロフィールカードをまとめる言語活動を通して、物語文学習において重要となる人物像を読み取る力が、子どもたちにしっかりと身に付く、単元づくりをご提案いただきました。
目次
この物語は、中心人物であるしまりすのキリリと、旅をすることが好きなみけりすのミークの出会いを通した心温まる話である。
2人の出会いのきっかけは、ミークが飛ばした青い紙ひこうき。
物語冒頭に登場するこの紙ひこうきは2人の心をつなぐ重要なアイテムとして、物語終盤にも再び登場する。
物語中盤は、心配性なキリリに対して、さっぱりとした性格であるミークが対照的に描かれ、2人の会話を中心に展開される。キリリの不安な気持ちがどのように変化していくのか、読者としても気になりながら、読み進めることのできる作品だ。
物語終盤には、旅行かばんの中から色とりどりの蝶が飛び出す様子が描かれており、読者の頭の中には爽やかな景色が広がることだろう。ミークが残したキリリへの「また会おう、きっとだよ。」という締めくくりのメッセージによって、教科書には描かれていない今後の2人の関係性が気になる物語でもある。
教科書の「学習の手引き」には、登場人物の人物像や中心人物・キリリの心情の変化を扱う授業展開が提示されている。子どもたちと作品の出合いの際、もしくは単元終盤には、絵本の読み聞かせを行ってもよいだろう。多くの挿絵によって、言葉だけでなく、より細かな様子まで具体的にイメージをすることができる。
実は、絵本の中には、教科書には掲載されていない表現や続きの話があり、キリリとミークのその後を知ることができる。授業に入る前には、ぜひ、一度絵本を手に取ってご覧いただきたい。
登場人物の人物像は、「会話文」や「特徴的な行動」「見た目」「物事の考え方」「好きな〇〇」等から読み取ることができる。この物語は、キリリとミークを比較しながら2人の特徴の描かれ方を読み取ることで、今後の物語作品を読むときに活用できる「人物像を捉える読みの視点」を獲得することができる。
近年、様々なところで耳にする「探究」。このキーワードが学習指導要領に位置付けられたのは2008年、なんともう16年も前のことである。 大きな自然災害や世界中で猛威を振るった感染症など、想像もしていなかった様々な出来事が次々と起こり、変化の激しさを実感せざるを得ない現在では、「探究する国語授業」が自分の一番の研究テーマとなっている。 答えのない問題を解決しなければならない社会。このような社会で生きていく子どもたちは、「探究する学び」が必要であろう。授業後も学び続ける子ども、答えのない問題に向き合い粘り強く解決していこうとする子どもを育てていかなければならない。
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。