5分でわかる 国語授業で育みたい4つのスキルと授業開き
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執筆者: 藤平 剛士
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今月の5分で分かるシリーズは、藤平剛士先生(神奈川県・相模女子大学小学部)に、授業開きで確認し合いたい、すべての学びの基礎となる4つのスキルについて、実際の授業展開に沿ってご紹介していただきました。
「国語の授業がうまくいくとクラスがまとまる」
私が初任のとき、あこがれの先輩教員からかけていただいた言葉だ。
当時は、「国語の授業と学級づくりがつながるのかな」とよくわからなかった。
それから20年以上が経ち、この言葉の意味がようやく理解できた。
それは、「よい声・よく聴く・よく書く・よく考える」の4つのスキルが国語の授業においては特に重要であり、この4つはどの学年でも、どの教科でも、学ぶときの基礎基本となり、学級の学習雰囲気づくりに大きく関係しているということである。
新しい学級のスタートに合わせて、「今までは○○していた」「○○しなくていいの」と、子どもの学びの姿勢にはズレが見られる。その都度、学びのルールを確認していては授業が進まない。そのため、4月は、授業開きを通して、短時間で子どもと学びの姿勢を確認し、価値づけたい。
しかし、ルールだけで授業開きが終わってしまっては、これから始まる1年間の学びの期待が萎んでしまう。だから、実際の授業を通して学級の学びの姿勢をつくっていくことが大切なのである。
4月は授業開きなど、短時間で子どもとの学びの方向を確認したい授業が続く。
そこで私は、4月に出会った子ども達が4つのスキルに気づいていくため、以下の実践を行う。
時期によっては授業参観で実践することもある。
それでは、実際の授業を紹介しながら、この4つのスキルを確認していく。
T:この詩の□には、どんな言葉が入るでしょうか? まずは、題名は何でしょう?
C:言葉かな。
C:一秒だと思います。
T:題名は「一秒の言葉」です。
では、ノートに題名と作者の名前を書きましょう(ノート指導の基礎を確認する)。
書けましたね。一行目に題名を書きます。二行目の下に作者の名前を書きます。
どうですか。となりの人と確認しましょう。
ー机間巡視をする
T:みんな、よく書けています。 国語の授業では、まず「書く」ことが大事ですね。
それでは、1⃣〜6⃣には、どんな言葉が入るのか考えましょう。
まず、1⃣はどうですか?(問いは、考えるヒントであることを大切にする)
C:うれしい
C:ありがとう
T:どうしてそう考えたの?
C:なぜなら、「一秒ほどの言葉」って書いてあるからです。短い言葉だなと考えました。
T:題名をヒントにして考えたのですね。
C:付け足します。「」だから、話し言葉だと思う。
C:先生、ときめきってどんな意味ですか?
T:みんな、国語辞典は使えますね。調べてみましょう(国語辞典の使い方を確認する)。
C:「『ときめき』は、胸がドキドキすること」って書いてあるよ。
T:一秒の言葉で、話し言葉で、ときめきを感じる言葉。正解は、「はじめまして」です。
どんな言葉で詩が書かれているのかを読むと、考えるときのヒントになりますね。
言葉を読んで、言葉をつなげて「考える」ことが大事ですね。
みんな、先生の話だけではなく友達の声もよく「聴いて」いましたね。 だから、友達の発表に付け足すことができました。
それでは、題名から一行空けて、一連をゆっくりと丁寧に書きましょう。 この調子で、2〜6連も考えましょう。
―中略―
T:6連までできましたね。この詩には、第7連があります。
先生の音読を聞いて、書きましょう。
「一秒に喜び、一秒に泣く。 一生懸命 一秒。」
T:これで詩が完成しました。それでは、音読しましょう。
今年度はじめての国語の授業です。 みんなで声を合わせて読みましょう。
―みんなで音読をする
T:練習をしていないのに、みんなの声がそろっていました。合わせようとしたんだね。
よい声も国語の授業で大事なことですね。
C:先生、この詩の「 」は、作者の小泉さんが言った言葉ですか? 言われた言葉?
C:言った言葉だよ。作者が大事にしたい言葉です。
だから、最後の7連に、「一生懸命 一秒」と自分の気持ちを書いていると思います。
C:私は言われた言葉だと思います。 言われてうれしかった言葉を詩に書いたと思います。
C:先生はどっちだと思いますか?
T:この答えはわかりません。
作者の小泉さんの言った言葉にも読めるし、言われた言葉にも読めますね。
C:どちらも答えいうこと?
C:答えはなしですか?
T:どちらも答えです。それは、感想だからです。みんなが「感じたこと」が正解となります。でも、詩の言葉を読みつないで考えて、1〜6連では答えを1つに決めましたね。
このように、みんなは「詩を読む」ことから、言葉を読み取っていろんな感想をもつことと、読み取って1つの答えを考えることの、両方ができるようになりました。
T:今日は、「一秒の言葉」という詩を読みました。そして、これからはじまる授業で大切にしてほしい4つのこともみんなと学びたかったのです。
それは、「学びの4か条」です(短冊を貼る)。
今日の授業の最後に、ノートの1ページ目に学びの4ヶ条を書きましょう(1年間の学びの姿勢を確認する)。
この授業では、下の写真1のように、クラス全員での発表を達成することもできた。
これは、ヒントとなる言葉を基にして考える、というコツがわかったことで挑むことができたと、子ども達の振り返りからわかった。
この学びの姿勢も、これからの授業づくりの上で大切なものになった。
また、下の写真2のように、1連ずつの短冊にすることで、詩で学習した「連」を意識させることができたり、次の連を予想させたりすることもできる。
このように、授業開きでは授業を通して、これから身に付けたい子どもの学びの姿勢を確認することが大切である。
それは、授業の中での子どもの学びそのものを価値づけることができるからである。そのため、「4つのスキル」を確認し合える教材選択が重要である。
この「4つのスキル①声 →②聴く →③書く →④考える」は、私が子どもと創る授業の上でベーシックな学びの姿の順にまとめている。この学びの姿勢が、毎日の授業の中で、子どもの習慣となっていくように声をかけ続けていきたい。
藤平剛士(ふじひら・たけし)
神奈川県・相模女子大学小学部教諭
全国国語授業研究会常任理事/日本私立小学校連合会国語部会全国委員長/新考える国語研究会/創造国語/神奈川県私立小学校協会教育研究部新聞教育研究会代表
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。
今回は笠原冬星先生(大阪府・寝屋川市立三井小学校)に、説明文の4つの基本構造をはじめに押さえ、平成27年度版と令和2・6年度版の本教材を読み比べることで、説明文の構造がどのように変化したのか、それぞれにどのようなよさがあるのか、について気づける授業づくりの工夫をご提案いただきました。