「おにごっこ」-<つながり>から学びを深める低学年の説明文授業-
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執筆者: 沼田 拓弥
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単元名:遊びをおもしろくする「ポイント」を伝え合おう 教材:「おにごっこ」(光村図書・2年)
「おにごっこ」の授業づくりを紹介します。
子どもたちにとって親しみ深い遊びを題材にすることで、積極的な言語活動を促すことができる本教材。おもしろさを通して、文章の構造や事例の並べ方を理解し、中、高学年へとつながる「文章を見る目」の素地を育てます。
今回は、沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に子どもが前のめりになる授業づくりについてご提案いただきました。
低学年の説明文授業において、大切なことは、文章中の「知識・情報」の整理と共に、整理された情報の中からどこが「大切なポイント」なのかを捉えることである。この点が曖昧になると、単なる文章内容の理解に留まり、他の文章へと転移できる読みの力を獲得する学びにはなりにくい。学習指導要領においても、「文章の中の重要な語や文を考え選び出すこと」が重点指導事項として明確に示されていることは周知の通りである。
では、どうすれば「大切なポイント」を捉えることができるのであろうか。 低学年の説明文教材は、文章の構造もシンプルで、同じような文体の繰り返しの中で事例を紹介しているものが多い。その「文体の繰り返し」(同じ部分)の中にも「変化している言葉の部分」(違う部分)がある。それこそが、その事例の特徴であり、まず捉えなければならない情報である。低学年では、この「文章を見る目」を指導することによって、ある程度までは「知識・情報」を整理できるようになる。
つまり、この「文章を見る目」を低学年のうちにしっかりと育てることが中学年の複雑な事例比較を通した読みの力へとつながっていく。そして、この力は一つの教材の中で育てるものではなく、いくつもの説明文教材を経験する中で、徐々に高めていくものである。 ちなみに、光村図書の令和2年版教科書に掲載されている説明文教材(低学年)を列挙すると以下のようになる。
本教材「ビーバーの大工事」は、タイトルからはその大工事の目的がわからず、謎に包まれています。「ガリガリ」「ドシーン」のオノマトペや「近よって みますと、」とあるように、まさに目の前のビーバーの行動を実況しているかのように説明が展開されることで、ワクワクしながら読み進めることができ、最後に判明する、大工事の目的とその壮大さには驚きが待っていることでしょう。 今回は斎藤由佳先生(神奈川県・逗子市立沼間小学校)に、説明文を読み深める上で、「何を明らかにしたいか」「何に気をつけて読みたいか」といった、「だいじの基準」を学級で共有し、更新することで、自分なりの「だいじなことば」の探究が進むようになる授業づくりの工夫をご紹介いただきました。
新教材「ぼくのブック・ウーマン」は、英米文学作家ヘザー・ヘンソン作、原題”THAT BOOK WOMAN”を日本語訳にした物語文教材です。原題が"MY"や”OWN”ではなく”THAT”であることから、藤原宏之訳の「ぼくの」とは、「それこそが『ぼくにとっての』ブック・ウーマン」といった、中心人物カルの印象を強調して表す意図があるのではないのでしょうか。今回は長屋樹廣先生(北海道・釧路市立中央小学校)に、中心人物カルの一人称視点から描かれる、ブック・ウーマンと本に対する捉え方がどのように変容しているのか、叙述に基づきながら丁寧に整理し、意見を交わし合うことで協働的に学び合える活動、「ミニ読書座談会」についてご紹介いただきました。
今回は三笠啓司先生(大阪教育大学附属池田小学校)に、物語文の学習で、登場人物が出合った出来事を実際に疑似体験することで、登場人物の心情の揺れ動きを実感を伴って理解することができる、「共感読み」を取り入れた授業づくりをご提案いただきました。共感読みから生まれた自分なりの問いを全体で共有することで、子どもたちが「考えたい問い」が立ち上がり、子どもたちと一緒に単元をつくることができます。
新教材「ロボット」は、「問い」と「答え」、「まとめ」がわかりやすく段落で分けられており、説明文の基本的な3部構成を確かめることのできる教材です。今回は小島美和先生(東京都・杉並区立桃井第五小学校)に、この説明文の3部構成をしっかりと押さえつつ、「問い」の「答え」となる事例の紹介のされ方や順序に意識が向くようになる、問いかけの工夫についてご紹介いただきました。
今回の5分で分かるシリーズは、根本俊彦先生(神奈川県・私立清泉小学校)に、物語文の中心人物になりきり、心情を短歌で表現する言語活動を通して、叙述一つひとつのへの意識が高まり、楽しみながら主体的に読めるようになる工夫をご紹介いただきました。