子どもの声を育てる「音読」のスキル
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執筆者: 弥延 浩史
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今月の「5分で分かるシリーズ」では、子どもの声を育てる「音読」のスキルについて学びます。
授業や宿題で取り組む音読も、目的やその効果を意識することが、子ども一人ひとりの声を育てていくうえで大切になります。弥延先生には、マンネリ化を防ぐ音読の様々な形態についてもご紹介いただきます。
子どもたちが、授業の中で自分の声をしっかりと発する。それは、自分の考えを表現していくことの第一歩であるといえるだろう。そのためには、子どもの一人一人の声をつくっていく(育てていく)必要がある。子ども一人一人の声を育てるための最も効果的な方法は、音読であると考える。実際に、音読は手軽に取り組むことができる方法として、授業の場面のみならず宿題でも多く取り入れられている。
「音読カードを配るので、家で練習してきましょう。練習したら、お家の人にサインをもらってくるのですよ」
という感じである。確かに、手軽に取り組める宿題の1つとして音読は向いているといえる。家庭で音読に取り組むことのよさには、次のような点があるだろう。
家庭での音読のよさ
親と子のコミュニケーションを図ることができる
子どもは、聞き手を意識した練習ができる
しかし、「家庭での音読」と「子ども一人一人の声をつくる」こととは切り離して考えるべきであり、授業の中で子どもの声を育てるのだという教師の意識が必要だ。なぜなら、家庭での音読は、子どもは「何となく読んでいる」ものになりがちであり、保護者も「忙しい家事の合間にサインをするだけ」というものに陥りがちだからである(もちろん、全てがそうとは限らないし、家庭での音読練習を効果的に行う方法も存在する)。
当然のことながら、教室で行う音読も、無目的に行うだけでは活動そのものが形骸化していく危険性がある。そのためには、音読の形態や効果などを意識しながら授業に取り入れていくということが鍵となる。
しかし、「家庭での音読」と「子ども一人一人の声をつくる」こととは切り離して考えるべきであり、授業の中で子どもの声を育てるのだという教師の意識が必要だ。なぜなら、家庭での音読は、子どもは「何となく読んでいる」ものになりがちであり、保護者も「忙しい家事の合間にサインをするだけ」というものに陥りがちだからである(もちろん、全てがそうとは限らないし、家庭での音読練習を効果的に行う方法も存在する)。
当然のことながら、教室で行う音読も、無目的に行うだけでは活動そのものが形骸化していく危険性がある。そのためには、音読の形態や効果などを意識しながら授業に取り入れていくということが鍵となる。
音読を行う時の形態について考えてみたい。個人、ペア、グループ、全体と様々な形態があるが、それぞれの形態で得られる効果は、次のようになると考える。
最初は個人での音読や黙読に取り組んだ後、全員で一文ずつリレーしながら読んでいくというケースが多いだろう。読み方が分からなかった漢字や、意味のよく分からない言葉をここで明らかにしておくことで、次の時間から様々な形態で音読を行うことが可能になる。
ここで言えることは、ペアやグループでの音読を積極的に取り入れるとよいということである。なぜなら、ペアやグループでの音読は、身近に聞き手がいるため、相手意識や目的意識をもった活動にできるからである。相手意識や目的意識があることで、子ども自らが取り組む活動に意味付けできる。
例えば、本校OBの白石範孝氏の実践に、「互いの音読を聞き合うなかで誤って読んだところや、引っかかってしまったところをペアで確認し合う」というというものがあるが、これによって自分が間違いやすい言葉やセンテンスに気付くことができ、音読を通して正しく読む力を付けていくのだと自覚することができる。
また、グループや全体で読むことによって、「他者の音読のよさに気付くこと」や「音読を通しての自身の表現(伝え方)を工夫すること」も可能になる。こうした音読の実践を通して、音読で表現する力が育つだけでなく、次のような効果があるという実感をもっている。
では、実際に授業の場面において、具体的にどのように音読を取り入れるかということを、様々な音読のバリエーションに併せて整理していく。
音読も同じ形態を続けるとマンネリ化を生む。音読には、「一斉読み」や教師の後を追いかけて読む「追い読み」、一文ずつ交代する「交代読み」などが多く取り入れられるが、これらのほかにも様々な形態での音読を工夫することで、授業の場面で行うことの効果がより大きくなる。ここで、いくつかご紹介したい。
【個人での音読】
時間読み
制限時間を決めておこなう読み方。読み始める箇所や読む速度を選択させることで、「どうして自分はそう読んだのか」という、学びの自覚化につながる
速読み(はやよみ)
制限時間でどのくらい先まで読めるかにこだわる。学級で誰が一番先に進めるかを決めてもよいが、それ以上に自身の成長が見えるようにしていくことを優先する(例えば、同一教材で数日続けると効果が表れやすい)
【ペアやグループでの音読】
分担読み
地の文と会話文に分けて交代で読む。地の文と会話文では表現の工夫の仕方に違いがあることを意識し、それぞれの読み方のよさ(改善点)などが見えてくる。説明的文章では、段落ごとに分担して読むこともできる
役割読み(文学作品)
地の文、登場人物など役割を決めて読む。ローテーションを組んで読むことにより、様々な読み方を経験することができ、表現する力を高めることができる
【全体での音読】
サークル読み
全員で円になり、向かい合って音読をする。互いの表情が見えることや、声を聞き合いながら行うことになり、みんなで一つの音読をつくるという一体感が生まれる
弥延 浩史(やのべ・ひろし)
筑波大学附属小学校教諭
全国国語授業研究会理事/令和2年度東京書籍小学校国語教科書編集委員/国語「夢」塾
本教材において、子どもたちが自分なりの意見をもち、話し合い、個性を認め合うことで、一人ひとりの多様さが生きる授業づくりを、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)にご紹介いただきました。 本教材で身に付けたい力から指導内容を明確にした上で、「その子らしさ」を生かした授業を計画することで、拡散ではなく、それぞれの軸をもった子どもの「多様さ」が発揮されるようになるでしょう。
今回は小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、令和6年度に本教材が改訂されたことを踏まえ、「以前の文章に変更を加えることで、筆者はどのように、何を、読み手により伝えたかったのか」といった、説明文の工夫における意図や思いに迫ることで、「筆者を読む」力が身に付く授業づくりをご提案いただきました。
今回は藤平剛士先生(相模原女子小学校)に、本教材の前にある詩「生きる」と合わせて、「生きるとは何か?」といった答えのない問題を設定することで、6年生の子どもたちが今の自分と向き合ったり、探究的な見方・考え方を育めるような授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「銀色の裏地」は、新年度初めの高学年にとって身近な事柄がテーマとなっている物語文です。中心人物「理緒」の大まかな心情の変化は捉えやすいものの、細かい描写において、なぜそう思ったのか(行動したのか)明確には表現されていないため、叙述を基に、登場人物に感情移入して想像したくなります。 今回は山本純平先生(東京都・江東区立数矢小学校)に、「言ったこと」「行ったこと」「思ったこと」「繰り返し出てくる表現」の観点から細かく描写に着目し、本教材の学習後も、自力で物語文を読み進められるような力を育む授業づくりの工夫を、ご提案いただきました。
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。
今回は笠原冬星先生(大阪府・寝屋川市立三井小学校)に、説明文の4つの基本構造をはじめに押さえ、平成27年度版と令和2・6年度版の本教材を読み比べることで、説明文の構造がどのように変化したのか、それぞれにどのようなよさがあるのか、について気づける授業づくりの工夫をご提案いただきました。