「多様さ」が生きる国語授業を目指して
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執筆者: 髙橋 達哉
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単元名:種類があるものを紹介しよう 教材:「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」(光村図書3年上)
「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」の授業づくりを紹介します。本教材は3年生最初に読む説明文であり、言葉遊びやこま回しなど、子どもたちが興味・関心をもちやすいテーマを扱っています。今回は、髙橋達哉先生(山梨大学教育学部附属小学校)に、子どもたちの興味・関心を生かした言語活動の設定の工夫と、一人一人の「気持ち」「感覚」「思い」の違いに気付き、語り合うことで学びを深める学習課題の設定についてご提案いただきました。
子どもたちがそれぞれの「個性」を生かして「個別最適」に進める学びと、子どもたちが互いの「よさ」や「異なる考え方」を組み合わせて「協働的」に進める学び、その双方を実現することが求められている。「個性」、一人一人の「よさ」、「異なる考え方」などのキーワードに象徴されるように、どちらの学びにおいても、大切なのは子どもたち一人一人の「多様さを生かす」という考え方だと感じている。
本稿で紹介するのは、第3学年の説明文教材である「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」(いずれも光村図書)の授業実践。「多様さ」が生きる国語授業を目指して、昨年度取り組んだ実践である。
本実践の提案は二つある。「言語活動の工夫」と「学習課題の工夫」である。
子どもたちがそれぞれの多様な興味・関心を生かして「個別最適」に取り組めるような「言語活動の工夫」と、一人一人の子どもの「気持ち」「感覚」「思い」が組み合わさることで豊かな「協働的な学び」が生まれるような「学習課題の工夫」を紹介したい。
本単元で設定したのは、自分の「好きなこと」や「好きなもの」について、「種類を挙げて紹介する文章を書く」という言語活動である。子どもたちが興味・関心をもっている事柄は実に多様で、個性的である。「学習の個性化」の観点から、一人一人の興味・関心が生きる言語活動を設定することで、主体的に学習を進めることができるようにしたいと考えた。
「こまを楽しむ」の2時間目(単元全体では第4時)には、「一番やってみたいこまはどれ?」という学習課題を設定し、一人一人の子どもが「やってみたい」と思うものを伝え合う活動を展開した。子どもたちが、自分自身の「気持ち」「感覚」「思い」をもとに考えを語ることができる学習課題である。「気持ち」「感覚」「思い」に見られる「違い」や、その「違い」につながる一人一人の着眼点のよさを生かした学習を進められるようにしたいと考えた。
重点を置く指導事項は、「構造と内容の把握」の「段落相互の関係に着目しながら、考えとそれを支える理由や事例との関係などについて、叙述を基に捉えること」〔思判表C⑴ア〕である。この指導事項に関わって、第2学年では、「たんぽぽのちえ」「どうぶつ園のじゅうい」(いずれも光村図書)の学習において、段落相互が時間の経過に基づいた関係になっていることを捉えたり、「馬のおもちゃの作り方」(光村図書)の学習においては、段落相互が事物の作り方の手順に基づいた関係になっていることを捉えたりしてきた。
そうした学習を踏まえ、本単元においては、「事例の順序性には筆者の意図があること」や、「本論部で示される事例が結論部で示される筆者の考えを支えていること」などについて、考えることができるようにしていきたいと考えた。
〔知識及び技能〕
段落の役割について理解することができる。(1)カ
〔思考力、判断力、表現力等〕
段落相互の関係に着目しながら、考えとそれを支える理由や事例との関係などについて、叙述を基に捉えることができる。C(1)ア
目的を意識して、中心となる語や文を見つけることができる。C(1)ウ
〔学びに向かう力、人間性等〕
言葉がもつよさを認識するとともに、進んで読書をし、国語の大切さを自覚して思いや考えを伝え合おうとする。
時間 | 学習活動 | 指導上の留意点 | 評価規準と評価方法 | |
第一次 | 1 | 1)言葉遊びやこまについて知っていることを発表する。 2)単元の目標を確認し、学習計画を立てる。 3)「言葉で遊ぼう」を通読し、「段落」について知る。 |
1)しりとりや早口言葉を実際にやってみるなどして、興味・関心を引き出す。 2)種類があるものについて紹介する文章を書く活動に向けて読むことを確認する。 |
単元の目標や学習計画を理解し、「言葉で遊ぼう」を進んで読もうとしている。 |
2 | 4)「問い」と「答え」に着目して、各段落の内容を読む。 5)「はじめ」「中」「おわり」の文章構成を知る。 6)「言葉で遊ぼう」を読んだ感想を友達と伝え合い、学習を振り返る。 |
4)「問い」と「答え」の関係を捉え、内容を整理する。 5)「問い」と「答え」に着目して整理することで、「はじめ」「中」「おわり」が捉えられることを確認する。 |
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第二次 | 3 | 7)「こまを楽しむ」を通読し、2つの「問い」を捉え、「はじめ」「中」「おわり」の文章構成を確認する。 | 7)「問い」と「全体のまとめ」の段落を手掛かりに、「はじめ」「中」「おわり」の構成を整理する。 |
【知識・技能1】 発言・記述 「段落」の意味と役割について理解している。 【思考・判断・表現1】 発言・記述 段落相互の関係に着目して、文章の内容と構成を理解している。 【思考・判断・表現2】 発言・記述 段落の中心となる言葉や文を捉えている。 |
4本時 | 8)6つのこまの中から、いちばん興味を持ったこまについて交流する。 9)6つのこまが紹介されている順序について話し合う。 |
8)理由を交流する中で、それぞれのこまについての説明内容を整理する。 9)多様な観点から、順序性を解釈することができるようにする。 |
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5 | 10)「中」を、「問い」の「答え」に着目して読み、中心となる言葉や文を確かめ、整理する。 | 10)2つの「問い」に対する「答え」をまとめる。 | ||
6 | 11)「おわり」は、「はじめ」「中」のことをどのようにまとめているか考える。 | 11)「はじめ」「中」の内容と、「おわり」の内容が対応していることを整理する。 | ||
第三次 | 7 | 12)色々な種類があるものについて、紹介する文章に書く内容(種類)や、紹介する順序を考える。 | 12)題材は、各自の興味に応じて決めることができるようにする。 | 学習したことを生かして、紹介する文章を書いている。 |
8 | 13)色々な種類があるものについて、紹介する文章を書く。 | 13)単元を通して学習した表現方法を活用して書くことができるようにする。 |
「中」で説明されている内容の大体を捉えるとともに、事例を挙げる順序には筆者の意図があることに気付き、どのような順序性になっているかを解釈することができる。
初読の感想で「人それぞれ」だったことを受け、「あなたが一番やってみたいこまは?」を学習課題として設定する。
一番やってみたいと思うこまとその理由をノートに書いた上で、話し合いを行う。
やってみたい人が多い順にランキングに整理し、「多くの人がやってみたいと感じる事例は、最後に説明したらどうか?」というゆさぶり発問を行う。
黒板に掲示したこまの写真を移動することで、発問の意図を視覚的に伝える。
事例の順序性には、筆者の意図があるのではないかという考えを引き出し、どのような意図があるのかについて解釈を話し合う。
事例を挙げる順序には、筆者の意図があると考えられることについて確認するとともに、最終的にどのような順序性だと考えたかについて振り返りシート(Googleスプレッドシート)に記入する。
学習課題を「やってみたいものはどれか?」という気持ちや思い、感覚を問うものにすることで、どの子も自分なりの考えをもつことができるようにするとともに、多様な考えが認められる話し合いの場をつくることができた。
また、多くの子どもが「事例の順序性に筆者の意図がありそうだ」と感じられた一方で、本時の授業だけでは、そのように感じられなかった子どもが複数名みられた。
しかし、その子どもたちも、第6時(下写真参照)に、「おわり」の叙述と6つの事例をとの対応関係を捉える中で、順序性(前半3つが「回る様子」を楽しむこま、後半3つが「回し方」を楽しむこま)があることを理解することができた。
髙橋 達哉(たかはし・たつや)
山梨大学教育学部附属小学校教諭
全国国語授業研究会理事/山梨・国語教育探究の会代表/日本授業UD学会山梨支部代表/全国大学国語教育学会/日本読書学会/日本LD学会会員
今月の「5分でわかるシリーズ」は、秋山千沙子先生(東京都・目黒区立上目黒小学校)に、子どもたちが主体的に書く学習に取り組めるための工夫をご提案していただきました。 書くことに苦手意識をもつ子どもにとってハードルが高い「新聞づくり」単元を、「オリジナル話型」を活用した話し合い活動を取り入れることで、相手意識、書く目的を自覚することにつながり、意欲的な取り組みにつながります。
今回は笠原冬星先生(大阪府・寝屋川市立三井小学校)に、説明文の4つの基本構造をはじめに押さえ、平成27年度版と令和2・6年度版の本教材を読み比べることで、説明文の構造がどのように変化したのか、それぞれにどのようなよさがあるのか、について気づける授業づくりの工夫をご提案いただきました。
新教材「スワンレイクのほとりで」は、本文中に数多くの色彩が登場し、中心人物「歌」の一人称で、グレンとの思い出が色鮮やかに描かれるなど、情景描写の多い物語文です。野菜畑から湖へと場面が移るにつれ、色の数はどんどん増え、色たちが動き出すクライマックスでは、歌の高揚感が伝わってくるようです。 本教材について沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に、情景描写に着目しながら、様々な視点から読者が「歌」に寄り添うことで、同化・異化という「登場人物との距離感」を意識した読みの力が育つ授業づくりについてご提案いただきました。
本教材では、「おかゆのおなべ」の呪文を、誰が知っていて、どのように言ったのかということが、この物語の起承転結をつくる鍵となっています。本教材の学習を通して、物語文を読む上で重要な、会話文を押さえることに意識が向くようになるでしょう。 今回は柘植遼平先生(昭和学院小学校)に、かぎ(「」)の役割や知識を深めつつ、かぎ(「」)が誰のセリフなのか本文を根拠にしながら読み進めることで、文学のおもしろさにふれられるような授業づくりの工夫を紹介いただきました。
新教材「宇宙への思い」は、宇宙そのものへの感想や気持ちが表れている箇所が実は少なく、宇宙での経験や研究(事実)を通して、地球や身近なことの未来をどのように考えたのか(願い)、について最後に述べられていることが特徴的です。 本教材について、田中元康先生(高知大学教育学部附属小学校教諭/高知大学教職大学院教授)に、文末と主語に着目して読み、著者の述べている考えと事実を整理していく学習活動について提案していただきました。根拠に基づいて自分なりにまとめるため、より友だちと考えを共有し、読み深めたくなるでしょう。
授業で物語を読む楽しさは、その作品のおもしろさや主題について語り合うことにあると考えています。そのような読み手を育むことを目指して、1年生から系統的に読み方を身につけさせています。また、近年は読み方だけではなく、自ら「問い」をもち、それを追究していく学習構想力や自己調整力を培うことも意識しています。 そこで、「海の命」(立松和平 作)を中心教材とした6年生の物語単元では、子どもたちが課題を挙げ、自分の解決したい課題を選択し、互いに交流しながら主題に迫っていくように構想しました。