ありえないことの繰り返しを楽しむ一冊
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お知らせ:
執筆者: 小島 美和
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書名:かえるをのんだ ととさん
作:日野十成
絵:斎藤隆夫
出版社:福音館書店
出版年:2008年
ページ数:32
特に低学年の子どもたちは「繰り返し」のあるお話が大好きです。お決まりのフレーズを何度も繰り返すうちに、読み手と一緒に声を合わせて読むことを楽しみ始めます。
今回は小島先生にありえない出来事が何度も繰り返される不思議な昔話をご紹介いただきました。
「こどものとも絵本シリーズ」の一冊です。
ある日、ととさんが腹痛になり、かかさんに相談した所、「お寺の和尚様に聞いてみなさるといい」と言われ、お寺に出かけていきます。
ととさんから話を聞いた和尚様は、「蛙をのむといいぞ。」と言い、ととさんは、蛙をつかまえてぺろっと飲み込んでしまいます。
すると腹痛は治ったのですが、今度は蛙が腹の中を歩くのが気持ちが悪くてたまらなくってしまったととさん。
そこで、また、和尚様に聞いてみると、「蛇をのむといいぞ。」と言われ、今度は、蛇を捕まえてぐいーっと飲んでしまいます。
すると今度は蛇が腹の中で動くのが…というように、何か問題を解決するために、飲めないと思うようなありえないものを次々と飲んでいくお話です。最初の問題は解決するのですが、新たな問題が出てくる展開が続きます。
もともとは、新潟県の昔話「まわりもちの運命」がもとになったお話です。
ととさんが腹痛を治すために、和尚様に言われた通り、いろいろなものを飲み込んでいくストーリーの繰り返しがあります。
飲み込むものは、蛙→蛇→雉→猟師→鬼とお話が進むにつれて、どんどん大きくなり、どんどんありえないものになっていきます。
悩みを解決するために、和尚様に言われた物を飲むことが繰り返されるので、次は何を飲むのだろうかと想像してワクワクする楽しさがあります。
そして、実際に和尚様に言われた通り、どんな物でも平気な様子で飲み込むととさんの様子やそのありえなさに対する驚きや楽しさも感じられます。
また、ととさんがかかさんに相談しようとする際のやり取りである「かかさんやぁ。」「おしょうさまに聞きなされ。」の繰り返し、和尚様に相談する際の「どうしましょうかのう」、和尚様がととさんに教える「ととさん、〇〇をのむといいぞ。」など、同じ会話文が繰り返し出てくるので、お話が進むにつれて子どもたちも覚えていき、声を合わせて読む楽しさが生まれます。
何かを飲み込む際の音や様子、その生き物の腹の中での音や様子が、オノマトペを用いて表現されています。
蛙を飲む「ぺろっと」、蛇を飲む「ぐーいと」、雉を飲む「こかっと」、猟師を飲む「げろりと」、鬼を飲む「ぐわっと」といった表現です。
また、蛙が腹の中を動く「ぺたらくたら」、蛇が腹の中を動く「ずらくら ずらくら」、雉が腹の中で動く「けんけん」「ばたばた」、鉄砲を持ち蓑を被った猟師が動く「ちくちく」「ごつんごつん」、角をもった鬼が動く「ぐりぐり」といった表現もあります。
どれも「ピッタリ感(適切性)」があったり、オリジナリティーが感じられたりする表現になっていて、こういった表現の楽しさも感じられる作品です。
ただ、ありえないようないろいろな物を飲むというだけでなく、最後は、きちんと「なるほど」「そういうことか」というところに着地する結末の面白さがあります。
腹の中の鬼をなんとかするため、和尚様は、「鬼は外」と言いながら、ととさんの口に豆を投げ入れます。節分の「鬼は外」を用いて、ととさんの悩みが和尚様によってしっかりと解決する面白さがあります。
ちょっと間を取って読むところをしっかりと作っていくことが大切です。
このお話は、ととさんが悩みを和尚さんに相談する。「〇〇を飲むといいぞ。」と言われてととさんが飲む。前の悩みは解決するが新たなことでまた悩むことの繰り返しになっています。
読み進めると子どもたちは、和尚様に言われてまた何か飲むんじゃないかと予想するようになります。
そこで、悩むととさんのところで、ちょっと間をとって先を予想する時間が生まれるようにします。
そうすることで子どもたちは、展開を予想してどうなったか知りたくなり、ぐっと集中します。
和尚さんが「〇〇を飲むといいぞ。」といった場面では、子どもが笑ったり反応したりする時間をしっかりと作ってあげることを大切にするとよいでしょう。
また、オノマトペのところは、少し強調しながらゆっくり読むことで、子どもたちがその表現の面白さに気付くことができるように、読む速さを変化させながら読んでいくとよいと考えています。
子どもたちの素直な反応を感じながら読みたいお話です。
小島美和(こじま・みわ)
東京都・杉並区立桃井第五小学校 教諭
全国国語授業研究会理事/新考える国語研究会
