5分でわかる 新年度スタートから大切にしたい! 国語授業で「学習態度・学び方」を育むエンパワメントのススメ
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執筆者: 小山 航
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新年度の学級開きにむけ、子どもの姿を価値づけて安心感と学びへの意欲を育む「エンパワメントの言葉がけ」について、小山 航先生(神奈川県・綾瀬市立土棚小学校)にご紹介いただきました。
よき聴き手を育て、学び合う学級の土台をつくるためのヒントが詰まっています。
研修会やセミナーでトップランナーの先生方の授業を拝見すると、夢中になって学ぶ子どもたちの輝く姿が見られ、なんてステキな時間なのだろうと感動することが多々ある。
もちろん、先生方の国語や教材に関する深い造詣から繰り出される発問や問い返しが、子どもたちの生き生きとした可愛らしい姿を引き出していることは間違いない。しかし、最近はそれだけではないことにも気がついた。
それは、発問・説明・指示といったいわゆる指導言には分類されない、「子どもの姿をエンパワメントする」言葉を、それこそシャワーのように子どもたちに浴びせているということである。もう少し解像度を上げて言うならば、子どもたちの「安心感」を醸成した上で、望ましい「学習態度・学び方」を習慣化し、学習集団へと成長させる言葉がけをしているということである。
私も若手の頃から、「授業は学級経営だ」と言われたことがある。しかし、具体的にどういうことなのか、どうすればいいのかはわからないままであった。そして、私が担当していた子どもたちの中には、少しずつ国語が嫌いになったり、学ぶ意欲を低下させてしまったりした子どももいた。それはきっと、どのように教えるか、という授業者都合の教授法のみに傾倒し、学習者の心情に立っていなかったのも原因の一つであると考える。今もなお、戒めとして反省し続けている。
今回は、自分自身の反省を踏まえ実践してきた、国語授業の中で「安心感」を醸成し、望ましい「学習態度・学び方」を習慣化する、子どもをエンパワメントする言葉がけについて紹介する。
「〇〇さんの音読、ハキハキとしていて、いいね」
ある授業の1コマ。子どもたちに音読させた後、次の活動に入る前に授業者が言った言葉である。先生に褒められた子は、とっても嬉しそうに笑みを浮かべていた。そして、それを見つめる先生の表情も、それを見守る周りの子どもたちの表情も、とても柔らかだった。再度、音読したときには、子どもたちのハキハキとした声が教室中に広がった。
よくある微笑ましい授業の風景。しかしなぜ、そのような場面が生まれたのか。それは、授業者が望ましいと考える子どもの姿をエンパワメント(価値づけ)したからだと考えられる。
エンパワメントとは、「子どもの姿を肯定的に捉え、価値づけることで、本来もっている力を引き出すこと」である。特に、「ハキハキとした声で音読しましょう」と指示したわけではないが、子どもの姿を価値づけたことで、その子どもを勇気づけ、それを見ていた周りの子も、そのよさを受け入れ、自分に取り込んだのだろう。そして、ポジティブな空気が広がり、教室が活気あふれる学びの場へと変容した。
しかし、このような授業風景は、偶然引き起こされたものではない。子どもの姿をエンパワメントするには、次のことが重要である。
①は、教師の教育観によるところが大きい。日々、子どもたちと向き合い、どのような子になってほしいか、教師の願いと言い換えてもよい。私は、毎日、座席表に子どもの様子をメモしている。それを時折、見返し、子どもたち1人ひとりの成長した姿を想像し、言語化するようにしている。
②は、授業づくりである。具体的な子どもの姿を想定し、誰に活躍してほしいのか、どんな言葉、感情を引き出したいのかを考え、展開を工夫することが大切である。
前述したとおり、①望ましいと考える子どもの姿を想定していること、②その姿が引き出される活動を設定していることが子どもの姿をエンパワメントする上で重要である。私は、子どもたちの生き生きとした可愛らしい姿が引き出される授業をしたいという思いがある。その1つの要素として、「よき聴き手」を育てたいと考えている。
ここでは、「よき聴き手」を育てることに寄与するであろうエンパワメントを、① 活動場面、② 見取る子どもの姿、②教師の言葉がけの例、という構成でいくつか紹介する。
今回は、国語の授業場面を想定して、子どもの姿をエンパワメントする教師の言葉がけを紹介したが、どの教科でも大切にしていきたい営みである。
また、エンパワメントする教師の姿を見て、子ども同士がエンパワメントし合う姿も見られるようになってくる。そして、より教室に温かな空気が醸成され、教師の想像を超える子どもの姿が見られるはずである。
新年度を間近に控えた今、新年度の国語教室の創造に向けて準備をしている先生方もいらっしゃるであろう。ぜひ、目の前の子どもの姿をエンパワメントし、ともに温かな国語教室の創造に挑戦してほしい。
【引用・参考文献】
小山 航(こやま・わたる)
神奈川県・綾瀬市立土棚小学校
全国国語授業研究会/日本授業UD学会 UD国語部会/日本学級経営学会会員
