友だちとの関わり方を考えさせてくれる1冊
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執筆者: 中島恵那
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書名:にじいろの さかなーまけるのも だいじだよー
作・絵:マーカス・フィスター(Marcus Pfister)
訳:谷川俊太郎
出版社:講談社
出版年:2017年
ページ数:28
今回は、魅力あるキャラクターたちと身近なストーリーが人気の「にじいろのさかな」シリーズから、人間関係の構築に悩んでいるときに一緒に考えるヒントをくれる物語を紹介いただきました。
キラキラ輝く虹色のうろこをもった魚「にじうお」の冒険と成長を描き、全世界で愛読される「にじいろの さかな」シリーズ。今回は第8巻です。
本シリーズは、各巻それぞれにテーマがあり、第1巻では自分の大切な物を分け合うことでより仲良くなれるということを考えさせてくれます。
第2巻目以降は、いつもと違う友達の受け入れ方やチクチク言葉は相手を傷つけることがあること、周りを不安にさせる嘘はついてはいけない、など身近なテーマを取り上げており、人との付き合い方を考える上で大切なことを子どもたちが考える内容になっています。
また、自分らしさは自分だけのもの、だからこそ大切にすることや、自己肯定感を高める親子の愛情のお話など、自分と向き合うためのお話もあります。
どのお話も、身近な人間関係のふとした出来事と結びつけながら、客観的にとらえて考えることができる絵本です。
虹色のうろこをもつ魚「にじうお」が仲よくなった魚たちとかくれんぼをするお話です。
「にじうお」がオニとなって魚たちを探すときは、なかなか見つけられません。ところが、「にじうお」がかくれたときは、すぐに見つかってしまいます。
負けず嫌いの「にじうお」は怒ってどこかへ行ってしまいますが、一緒に遊んでいた「あかひれ」が優しく諭し、仲直りの仕方を教えてくれます。
「にじうお」が、負けず嫌いな自分のことや、まわりの魚の気持ちを理解し、仲直りをしながら成長していく物語です。
ホログラフィーの技術を使った、きらきら光るうろこを見せると、子どもたちも手に取りたくなります。
色鮮やかな海の生き物たちも魅力的で、主人公の「にじうお」はもちろん、頑張り屋さん、リーダー的存在、仲間外れにされた経験をもつ魚がいたり、「にじうお」にアドバイスしてくれるお姉さん的存在もいたりと、実際身近にいるようなキャラクターの魚たちがたくさん出てくることで、子どもたちも興味をもって読むことができます。
今回紹介した第8巻は、譲ることの大切さをテーマにしています。
子どもたちが生きている日常でも、時に人間関係のトラブルが起き、葛藤が生じます。負けを受け入れることのできない子どもはたくさんいます。読み聞かせを通して負けの受け入れ方とともに、仲直りの仕方を学ぶことができます。
また、助けるときの声のかけ方や、自己開示の仕方など、コミュニケーションによって互いを理解し合うことの大切さを学ぶことができます。
子どもは、自分の感情や周りの人のことを受け入れながら成長していくのです。
作者のマーカス・フィスターは、あるインタビューの中で、『私たちを特別な何者かにするのは、何をもっているかによってではなくて、何をしているか、によってではないでしょうか。もっている我々が、もたざる誰かとそれを分け合うのは、とてもよいことと思います。誰かを幸せにするってことはとても楽しいものですよね。』と語っています。
シリーズ1作目で悲しみを乗り越え、仲間に与えることの幸せを知った「にじうお」は成長を続け、本作品の中では仲間に恵まれて乗り越えていきます。
「人とのつながりや思いを共有できる仲間がいてこそ、幸せになれる」ということをこの絵本から学び取ることができます。
低学年に向けては、「オーシャンドラム」を使うだけで海の世界に没入させてくれます。
読み聞かせの後には、「『にじうお』は、なぜ怒ってしまったのかな?」「自分だったら「ごめんね」が言えるかな?」などと話し合うことで、子どもの思いを受け止めながら学級風土を温かくしていくことに役立ちます。
本学級の子どもたち(2年生)に読み聞かせをしたとき、子どもたちは「にじうお」と一緒に周りの魚に怒ったり、「やなやつだ」と呟いたりする子もいて、自分事のように絵本の世界に没入し、「にじうお」と一緒に考えている様子が見られました。
また、1年光村図書「うみの かくれんぼ」の学習前に読むと、より海の生き物たちのかくれんぼに興味をもち、想像しながら読むことでしょう。また、2年「スイミー」の学習後に読んだら、楽しみながら学び、続き話を考えたりする子もいるかもしれません。水族館への校外学習があると、より関心を高めるのではないでしょうか。
高学年に向けては、5年光村図書『もう一つの物語』で取り上げて読んでみるのも面白いと思います。「もしも『あかひれ』がいなかったら?」「言い方が違ったら?」「『にじうお』」が謝れなかったら?」などと問いかけると、実生活と結びつけて他の仲直りの方法を考えたり、新しい出会いの場面をつくったりするかもしれません。
シリーズ本の1巻であれば、「最初から虹色の鱗をあげていたら?」「もしもたこばあさんのところへ行かなかったら?」などそれぞれの転機を考えて話の展開を広げたり、シリーズ本の様々なシチュエーションが発想を広げたりすることに役立つのではないでしょうか。
中島恵那(なかじま・えな)
神奈川県・横浜市立矢向小学校教諭
全国国語授業研究会
