5分でわかる 子どもの問いをもとにした物語文の読解学習
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執筆者: 大西人詩
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11月号の「5分でわかるシリーズ」は、大西人詩先生(大阪府・吹田市立南山田小学校)に、子どもが主体的に学習に向かい、国語科の「つけたい力」を獲得するために、どのように問いをつくればよいのかについて、ご提案いただきました。
問いづくりのタイミングやポイント、選び方や解決の仕方など、実際の学習活動で取り入れる際の留意点を押さえられます。
目次
物語文の授業を展開するとき、教師が「〇〇を読み取らせたい」という願いがある。
また、教材に出会って、学習を進めていくと子どもたちの中にも「もっと〇〇を読みたい」という願いが生まれる。教師の「願い」と子どもたちの「願い」のズレが大きいほど、子どもたちの主体性は失われていくように感じる。
教師自身が教材研究を通して、「〇〇を読み取らせたい」という願いをもつことは必要である。一方で、教師が決めた学びの道のみで学習を進めていくことは、子どもたちの主体性という点で課題が残る。国語の授業の学びを進めていくならば、子どもたちも学びの道を創り、単元のゴールに向かって主体的に学ぶ姿を大切にしていきたい。
そこで、大事にしたいのが「子どもの問い」である。
子どもの問いは、思考を方向づけるものであると考える。よって、「問いをつくること」「問いを解決すること」という学習活動そのものが目的になってはならない。「問いをつくること」でどんな言葉や文章に着目できているのか。「問いを解決すること」によって、何があきらかになり、どんな学びがあったのか。子どもの問いをもとに授業をつくるとき、学習活動にどんな目的があるのかを子どもたちと創っていくことが大切である。
今回は、子どもの問いをもとに授業を展開していく上で大切なことを、以下の3つのポイントにしぼって紹介する(「風切るつばさ」(東京書籍6年)の実践例を扱う)。
学習指導要領の「読むこと」では、【構造と内容の把握】【精査・解釈】【考えの形成】【共有】の学習過程が示されている。【構造と内容の把握】は、物語の全体像をつかむための重要な学習活動となる。つまり、物語の大枠をつかみ、物語を読むための基盤をつくることとなる。
では、子どもの問いをどこに位置づけるのか。
本実践では、子どもたちが問いをつくる学習を、図1のように【構造と内容の把握】を学習した後に位置づけた。【精査・解釈】の学びの方向性を子どもたちと創るためである。さらに、物語の大枠をつかみ、物語を読むための基盤をつくった上で、子どもたちが問いをつくることは、着目する言葉や文がより洗練されるのではないかと考えたからである。
「何のために問いをつくるのか」という目的を子どもたちと創り、共有することは大切である。単元をつくる上で、問いをつくる目的は様々考えられる。大切な目的を1つ挙げるなら「つけたい力をつけるため」である。「つけたい力」は単元の大きな柱となる。例えば「風切るつばさ」では、「人物同士の関係をとらえる力」である。この「つけたい力」は、子どもたちと具体的に共有した。共有した上で、「つけたい力」と問いのつながりは大切にしたい。
また、問いをつくるときには図2のような視点を示した。問いをつくるときに、どのように問いをつくればいいのかわからない子どもへの手立てとするためである。
問いをつくった段階では、多くの問いがクラスにあふれる。子どもたちには、「たくさんある問いの中から1つ選ぶならどれにする?」ということを尋ねた。子どもたちが学びの方向性を決める場面である。
問いを選び、問いを決めるときに大切なことは、選んだ理由である(写真1)。子どもたちから語られる理由は重要である。実際の授業での発言の一部は以下のとおりである。
理由を交流することにより、「何についての問いか」「問いによって何が明らかになりそうか」という見通しをもつことにもつながる。
「風切るつばさ」の学習では、たくさんの問いの中から子どもたちの意見が多く集まった4つの問いに決まった(図3)。次は、「これからどのように問いを解決していくのか」といった、見通しが必要である。見通す視点としては、
などが挙げられる。
また、実際の授業では4つの問いをどう扱うのかを子どもたちに委ねた。そこでは、「1時間の全体授業の中で解決できる」という方向に決まった。次に示すのは子どもたちの話し合いの一部の意見である。
写真2は、実際に問いの解決を全体授業で行ったときのものである。
ここまで3つのポイントを紹介してきたが、子どもの問いをもとに学びを進めることは、子どもたちの「もっと〇〇を読みたい」に寄り添いながら一緒に学びの道を創ることにつながると考える。
さらには、「問いをふりかえる」という活動も必要である。「問いによって何が明らかになったのか」「どのように明らかになっていったのか」「自分たちが設定した問いはどうだったのか」をふりかえることにより、問いの質も向上していく。また、「学習で身につけた力」をメタ認知することとなる。こうした学習活動を展開することを通して次の学びの道へとつながっていく。
【参考文献】
大西人詩(おおにし・ひとし)
大阪府・吹田市立南山田小学校
全国大学国語教育学会/日本国語教育学会
