学級づくりのよさを感じられる一冊
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執筆者: 佐藤 亜耶
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書名:「バラバラ」な教室に「つながり」を創り出す学級経営戦略図鑑
著者名:佐橋慶彦
出版社:明治図書
出版年:2024年
ページ数:175
今月の「教師の必読書」をご紹介いただくのは、佐藤亜耶先生(福島県・いわき市立御厩小学校)です。子どもが学級内で存在価値を感じられ、居心地のよい学級をつくるにはどうしたらよいか、アイデア満載の1冊をご紹介いただきました。
目次
2020年。コロナ禍によって私たちの生活環境は一変した。未知のウイルスの感染を恐れ、人と人との距離をとることが推奨された。その結果、テレワーク、オンライン会議、セルフレジ、オンラインショッピング、SNSなど、直接のコミュニケーションを避けたやりとりが一気に普及した。
学校ではどうだっただろう。分散登校やオンライン授業を経て、マスク着用や消毒の徹底をする中で、登校が可能になった。
ただ、すべてが今まで通り、とはいかなかった。物理的に人との距離を取らなければならなくなり、子ども同士のコミュニケーションもとりにくくなった。マスクの着用により、子どもたちの表情も読み取りにくくなった。
そんな中で感じるようになった、学級の中での心の距離やつながりの希薄化。このような環境で育った子どもたちは、コロナ禍前とは考え方も少しずつ変化しているように感じる。それにより、今までの学級経営ではうまくいかない部分も出てきた。
新たな考え方を受け止めつつ、まとまりのある学級経営を行うためにはどうしたらよいのか、どうすれば子ども同士が協働して活動する学級をつくることができるのだろうか、新たな悩みが生まれた。
そんな悩みを「つながり」という言葉をキーワードに分類したのが本書である。現役の小学校教員である佐橋氏が書いた本書なら、きっと自分の学級経営の悩みを解決する糸口が見つかるはずだ。
本書は、つながりを築くための計画的な方略が8章に分けて書かれている。
「第1章 対等・安全戦略」「第2章 他者意識戦略」「第3章 回数×本数戦略」…といったように章立てて書かれていることで、計画的に学級経営を進めていくことができる。
それぞれの章の巻頭には、「見るだけでつかむ!『○○戦略』」と銘打った見開きページが用意され、絵を使ったり、教室の様子を図解したりしてその章で説明する戦略を一目でわかるようにしてある。
それぞれの戦略の内容のページも載っており、その戦略ごとの目次としても活用でき、自分の学級の状態に合わせて、読みたいところから読むことも可能になっている。
例えば「第2章 他者意識戦略」では、自分だけでなく、他者に目を向けることができる子を育てることについて書かれている。
困っている子がいる場合に大切なことは、その状況に気づいてあげられること。もちろん教師が気づいてあげられればよいのだが、必ずしもそうはいかない。
ここでは、そんな困り感を抱えている友だちの存在に気づき、優しい言葉をかけられる子を一人でも多く増やすためのグループメイキングアクティビティが紹介されている。
その名も「こじつけポーカー」。アクティビティの内容はもちろん、そのアクティビティ中の教師の目の付け所や活動後の価値づけ方についても詳しく書かれており、「明日、自分もやってみよう」とすぐに取り組めそうなものがいくつも紹介されている。
筆者である佐橋慶彦氏は、現役の公立小学校教員。今も現役で教壇に立っているからこそ、私たちが抱えている悩みや困り感を共有することができる。
また、佐橋氏の実践に対するクラスの子どもの反応や、その後の変化が書かれており、子どもたちがどう受け止めるのか、それによって子どもたちにどんな変化があるのか、といったことの一例を見ることもできる。
子どもたち一人一人が「このクラスでよかった」「みんなで協力するっていいな」と思える学級づくりのよさを感じられる一冊である。
学級経営に悩んだときはもちろん、自分の今の学級の状態を見つめ直すときにもアイデアをくれる本書をぜひ読んでみてほしい。
佐藤亜耶(さとう・あや)
福島県いわき市立御厩小学校教諭
全国国語授業研究会/国語教育探究の会/「子どもの論理」で創る国語授業研究会
