5分でわかる 筆者と教材、学習者をつなぐ「説明文の問いづくりの授業」の導入
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執筆者: 木𠩤 陽子
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説明文の学習で子どもが「問いがつくれない」と感じる背景には、筆者や内容との距離があることが挙げられます。
10月号の「5分でわかるシリーズ」は、木𠩤 陽子先生(山口県・長門市立仙崎小学校)に、説明文の授業でも、筆者紹介やクイズなどを通して筆者との接点をつくることで、子どもが主体的に問いを生み出せるようにするアイデアをご提案いただきました。
子どもたちが、問いをもって学ぶことは、学習への当事者意識を高め、学習者の主体化を促す学習方法として注目されている。多くの先生方が、子どもたちの問いで授業をつくる実践に、日々、取り組んでおられることだろう。
では、みなさんは、どのように子どもたちと筆者との接点をつくり、説明文の問いの授業をされているだろうか。 私が、5年生の『言葉の意味が分かること』(光村図書)で、問いづくりの授業を実践した際、子どもたちの第一声は、「先生、説明文では、問いがつくれません」であった。
次に紹介するプロトコルは、『言葉の意味がわかること』(光村図書・5年)の第一次 第3時で問いづくりをしたときのものである。問いをつくり始めたものの、ほとんどの子どもの鉛筆が止まったままなので、こちらから、子どもたちに問いがつくれそうか投げかけた。
(下線は稿者。字数の都合上、一部抜粋)
物語文には、「不思議」があり、言葉を手掛かりにした謎解きのような楽しさを感じている。一方の説明文では、事例を挙げながら、論理的に筆者の主張が書かれており、「不思議」はない。その上、使用されている語句の意味もわからない。そのため、説明文の教材特性には、目が向きづらい。
最初の説明文での問いづくりの授業では、「問いがつくれない」という壁にぶち当たる。「なぜ、物語文では問いがつくれて、説明文ではつくれないのか」と、教師から問いかけることによって、子どもたちの思考が、物語文と説明文の教材特性の違いに向いてくる。教師の問いかけによって焦点化することで、物語文と説明文の教材特性を比較しながら考えることができ、問いづくりがスムースに進む。
長崎伸仁(1997)は、説明文の「読みの目標の系統化」を提唱し、「筆者を読む」ことを、高学年中心の読みと位置づけている。また、長崎は、「批判的な立場から、『筆者の考えに対して、自分はどう思うか』などという学習者の読みの個性を大切にした、いわば”教材を突き抜ける読み“(教材の枠に拘束されない読み)を心がけたい」と述べている。
子どもたちが、筆者意識をもちながら教材とかかわっていくためには、単元の導入から、種まきをしておくことが重要である。子どもたちが筆者と接点をもてるように、私は、筆者の写真と経歴、著書を載せたスライドを作成し、それを見せながら、筆者を紹介している。ただ紹介するだけでは、当然、子どもたちにとってはつまらないし、学びの必然性も生まれてこない。そこで、クイズを取り入れるのも一つの方法である。「クイズをするよ!」と言うだけで、低学年から高学年まで、俄然やる気になり、説明文に苦手意識をもっている子どもも、説明文へのハードルがぐっと低くなる。
ここでは、『固有種が教えてくれること』(光村図書・5年)のスライドを導入の流れとともに紹介する。
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これは、パワーポイントで作成したシンプルなクイズであるが、Kahoot!やロイロノートで作成してもよいだろう。また、『想像力のスイッチを入れよう』では、ルビンのつぼなどのだまし絵を数枚見せてながら意識して見方を切り替える体験を、子どもたちにさせてから学習に入った。
たったこれだけではあるが、子どもたちと筆者の距離が縮まる。もちろん、これだけでは、筆者への意識を十分にもたせることはできない。授業の中で、子どもたちがつくった問いや発言、振り返りに対して、「今の考えは、筆者の主張に着目しているね」など、教師が教科内容で価値づけていくことが重要である。
【参考文献】
木𠩤 陽子(きはら・ようこ)
山口県・長門市立仙崎小学校
全国大学国語教育学会/日本国語教育学会/中国・国語教育探究の会
