「『考える』とは」の教材研究の仕方、教えます。
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執筆者: 藤田 伸一
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今回は藤田伸一先生(神奈川県・川崎市立中原小学校)に、新教材「『考える』とは」における、教材分析をはじめ、教材研究の方法までをご紹介いただきました。
教材のもつ特徴や論理を吟味し、なぜ執筆者の3人の文章はそのような順番で書かれているのか、どのように子どもに考えてもらうために教材が作られているのかなど、教科書の製作者の意図までを深掘りする、教材研究の方法のご提案となっています。
「『考える』とは」の最大の特徴は、論説文的文章が3つ並べられていることである。
なぜ3つも並列されているのか。どうしてこの順で並んでいるのか。教科書編集委員の意図を浮き彫りにしたくなる教材である。下記の教材分析で、明らかになっていくであろう。
各題名を見てみると、「『考える』とは」「考えることとなやむこと」「考えることを考え続ける」「考える人の行動が世界を変える」の4つが示されていることがわかる。
最初の「『考える』とは」には、文章はない。つまり、後に続く3つの論説文的文章を包括している、という位置づけとしての題名となっている。
そのような関係性から見えてくるのは、「『考える』とは何か」というテーマが設定されているということである。このテーマに沿った文章を、3人の筆者がそれぞれの立場から論じているという構図が垣間見える。おそらく教科書編集委員から、「考えるとは」どういうことか、1000字程度で小学6年生に理解できるような文章を書いて欲しいと依頼されたのだろう。
「考えることとなやむこと」の題名からは、「考えること」を「なやむこと」と比較しながら明らかにしていく展開が容易に予想できる。「考えることを考え続ける」からは、「考えること」についての答えがまだ保留されており、まさに考えている途上であるという思いが伝わってくる。最後の「考える人の行動が世界を変える」からは、「考えること」とはどういうことかについて、直接言及するのではなく、「考えること」のよさを訴えかけようとしているようにとれる。
出てくる順に示すと、鴻上尚史(作家、演出家)、石黒 浩(ロケット学者)、中満 泉(国際連合事務次長)となっている。
鴻上氏は、国語の教科性から文筆家は外せないという点と、前の版の教科書で登場している点も考慮された採用ではないだろうか。それに加え、若者の心をつかむようなメッセージ性のある文章を届けられる点も評価されたに違いない。
石黒氏は、科学者である。子どもたちにとって大変魅力的なロボットを開発している。人間がどのように豊かな暮らしをロボットと共につくっていけばよいのか。ロボットはどこまで人間に近づけるのかなど、さまざまなことを考えながら、研究に没頭しているに違いない。まさに、「考えること」を実践している人物といってよいだろう。
最後の中満氏は、唯一の女性であること、国際連合というグローバルな舞台で活躍していることから、子どもに馴染みは薄いが、物事を大局的に考えるヒントが得られる、という期待感から入っているのではないか。
このように見ると、人物での順序性は浮かび上がってこない。興味のもてる順でも、身近な人順でもなさそうである。そうなると、文章の内容に順序性の鍵が眠っていることになる。
