「風船でうちゅうへ」 -多様な「興味」の方向性を生かして-
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執筆者: 山本 真司
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新教材「風船でうちゅうへ」は、タイトルと冒頭の文章から、あらかじめ何について説明する文章なのか着地点が把握でき、「どのようにして成功したのか」といった過程に意識が向きやすい説明文になっています。失敗という発見と解決の展開の仕方が、段落だけでなく風船の号数でもまとめやすいことは、次につながる読解力が育める教材的特徴といえるでしょう。
今回は山本真司先生(南山大学附属小学校)に、本教材で要約する力を育む上で、何について取り上げ、誰にどのように根拠をもって伝えるのか、といった目的意識を明確にした読みの授業づくりの工夫を、ご紹介いただきました。
目次
本教材「風船でうちゅうへ」は、科学者である岩谷圭介さんが、カメラを付けた風船を使って宇宙の写真を撮ることを、試行錯誤しながら挑戦していく様子について述べている説明的文章である。
筆者の思いや行動、出来事は、時間の流れの順序で説明されていく(時系列型)。
4年生の子どもたちは、岩谷さんが風船を使って宇宙を撮影するという夢の実現に向かって挑戦し続ける様子を、ワクワクした気持ちで読み進めていくことだろう。子どもたち一人ひとりが各々の関心に沿って読み進めていく単元が構想できる教材である。
また、この本文に加えて教科書pp.108-109には、「もっと読もう」と題した岩谷さんへのインタビューが載っている。子どもが自身の関心に合わせて読んでいくようにしたい。
さらに、岩谷さんについて調べてみると、2024年7月には、有人気球で高度20000mの成層圏にまで到達していることがわかる。教科書の展開例や本稿の趣旨とは外れるが、岩谷さんについて調べる、別の人の探究について調べる、といった子どもの好奇心を生かした発展的な学習への可能性も考えられる魅力的な素材である。
