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「うみのかくれんぼ」-論理(つながり)を捉える力を育もう-
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執筆者: 石原 厚志
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単元名:よんで たしかめよう
教材:「うみのかくれんぼ」(光村図書 1年)
今回は石原厚志先生(東京都・立川市立新生小学校教諭)に、「うみのかくれんぼ」(光村図書 1年)について、なぜその文が書かれているのか、なぜその順番なのか、文と文のつながりを丁寧に確かめることで、論理(つながり)を意識して読む力が育まれるようになる授業づくりを、提案していただきました。
1年生の説明文。
文章は長くなく、構成もシンプルで、内容理解も難しくはない。
しかしそこには、説明文を読むことを通して身に付けるべき「論理的思考力」(読み方)が確実にある。しかもそれは、学年や教材が変わっても、繰り返し出合うことになる論理であり、この先積み重ねていく読み方の土台となる、非常に重要なものである。
論理とは「つながり」のことであり、授業で大切なことは、教材文を読む中で無意識に捉えていたつながりを、自覚的に捉えることができるようにすることである。
本教材においては次のようなつながりが挙げられる。
①主語と述語の関係(「はまぐりが……かくれています。」)
②抽象と具体の関係(いきもの ➱ はまぐり・たこ・もくずしょい)
③「問い」と「答え」の関係
④「特徴」と「行為」の因果関係
中でも、本教材の表現上の特徴と言えるのは④の因果関係である。3つの事例すべてにおいて、「体のつくり(特徴)」と「かくれ方(行為)」の因果関係が述べられている。
文と文の関係を既有の知識や自らの経験と結び付けながら具体化することによって、「大きくてつよいあしをもっている」から「すなのなかにあしをのばして、すばやくもぐってかくれる」ことができるという因果関係が見えてくる。
「うみのかくれんぼ」では、「はまぐり」「たこ」「もくずしょい」という3種類の生き物が紹介される。
構成は、「はじめ」「中」の二部構成になっている。最初の段落に文章全体にかかる「問い」があり、その後に「問い」に対する「答え」として事例が3つ列挙されている。事例はどれも三文で説明されている。
いずれも一文目で「何が、どこに」が示され、二文目に「体のつくり(特徴)」、三文目に「かくれ方(行為)」が示されている。事例間の文型がそろっていることと、文と文とのつながりが、因果関係で結び付いているところが大きな特徴と言える。
〔知識及び技能〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
〔学び向かう力、人間性等〕
第一次 |
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第二次 |
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第三次 |
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事例を比べて読む活動を通して、文の役割と因果関係を捉え、友だちに説明することができる。
「一つ目は何がかくれていた?」「それはどのようにかくれている?」と順に聞いていくことで、図のような板書が出来上がる。センテンスカードを分類して黒板に貼ることで、それぞれの文の役割が明確になる。
板書から、「問い」の文に対する「答え」の文はでき上がっていることが分かる。
そこで次のようなゆさぶり発問を投げかける。
子どもたちには、2文目は「なくてもよい」「あったほうがよい」の2択で考えさせる。そうすることで、だれもが自分の考えをもつことができる。
その後、なぜそのように考えるのか、理由をペアやグループで話し合う。
子どもたちは「体が小さいからせまいところにかくれられる」「足が速いからすぐにつかまえられる」などと言うだろう。自分自身の経験を想起し、結び付けることで「つくり(特徴)」と「かくれ方(行為)」の関係を実感とともに理解することができる。
例1)「青いカードには『何が、どこにかくれているか』が書かれています」
例2)「黄色いカードには『その生き物が、どんなつくりをしているのか』が書いてあります」
例3)「赤色のカードには『かくれ方』が書いてあります」
例4)「体のつくりが書いてあるから、かくれ方のことがよく分かります」
例5)「黄色いカードと赤色のカードはセットになっています」
「問い」と「答え」を語句レベルで照らし合わせて読むことで、事例における各文の役割が明確になる。そして、「問い」の文に、語句としては出てこない「つくり(特徴)」を表す文も、かくれ方を説明するためには不可欠な文であることが分かる。
学習したことを表現することが難しい場合には、
「どうしてはまぐりは、すなの中にすばやくもぐることができるの?」「なぜなら……」
「たこはからだのいろをかえることができます」「だから……」
と、ペアでクイズのようにやりとりをさせることで自然と話すことができるであろう。
4つ目の事例を考えることを通して、すべての事例で同じ説明の仕方をしていることに気付き、友だちに話すことができる。
動画を見終わると、子どもたちから「オクヨウジのことも説明文に入れてあげよう」と声が挙がる。
そこで「オクヨウジをしょうかいするせつめい文を書こう」と本時のめあてを提示する。
以上の内容を捉えられたら、センテンスカードにする。
まずは、子どもに順序を考えさせてみる。多くの子は直感的に正しい順序に並べることができるかもしれない。
しかし、重要なのは子どもが論理(つながり)を自覚的に捉え、正しい順序の理由を述べられることである。
そこで、教師はあえて「かくれ方」➱「何が」➱「からだのつくり」という順序を示し、ゆさぶるように問いかける。
子どもは先の3つの事例における説明の仕方を例に挙げて、正しい順序に並べるであろう。
最初から上手に説明できる子は少数であると思われるので、モデルとなる発言を聞かせたり、ペアで話す機会を設けたりして、全員が「どうしてこの順序がいいのか」を説明することができるようになることをめざしたい。
本時は「同じ説明の仕方」という書き方の工夫に気付く時間であると同時に、第三次の活動への架け橋としての役割も担っている。自分で説明の内容を調べて書くということは、決して簡単にできる活動ではない。
どの子も安心して第三次の活動に取り組めるようにするための、大切なスモールステップではないだろうか。
〔引用・参考文献〕
石原厚志(いしはら・あつし)
東京都・立川市立新生小学校教諭
全国国語授業研究会監事
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