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「インターネットは冒険だ」 -「要旨をまとめる」とは何か? をおさえて読もう-
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執筆者: 田中 元康
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単元名:要旨をまとめ、自分の考えを伝えよう
教材:「インターネットは冒険だ」(東京書籍・5年)
今回は、田中元康先生(高知県・高知大学教職大学院教授/高知大学教育学部附属小学校教諭)に、教材「インターネットは冒険だ」(東京書籍・5年)の授業づくりの工夫について、紹介していただきます。
説明文の学習で当たり前のように行われる「要旨をまとめる」とはどういうことなのか。あらためてその意味や方法を確認しながら学ぶことで、汎用的な読みの力が育ちます。
高学年で、説明的文章を学習材とする授業において、筆者の主張の中心となる事柄である「要旨」を読み取りまとめる活動は当然のこととして行われる。
しかし、その活動は子どもにとって進んで、主体的に行うものになっているだろうか。
進んで行うものになっていない原因として、
〇子どもが要旨をまとめる必要感をもっていない
〇子どもが要旨をまとめる方法を身に付けていない
という2つがあるのではないかと考えている。
そこで説明的文章を学習材とする読解の授業を行う際、まず、要旨をまとめることの意味を子どもに伝えるべきだと考える。
要旨は「筆者のもっとも伝えたいことを短くまとめたもの」と先輩方から教わった記憶がある。しかし、この「伝えたいこと」「短くまとめたもの」という曖昧な言葉が、子どもにとっては分かりにくい。
要旨のまとめ方として、学習材全体を序論・本論・結論に分け、「結論の中心文(筆者の主張)を要旨とする」実践も目にする。それは間違いではないが、結論の中心文は要旨の1つ、または一部に過ぎない。
伝えたいことが筆者の主張の一文程度で終わるのなら、それまで述べてきた本論の必要性は低下してしまうことになる。また、最後の主張のみを取り上げてまとめてしまうと、ただの事実や感想のようになってしまい、どのように説明されたのかについて分からなくなってしまう。
そのように考えると、筆者の「伝えたいこと」とは、実際に調べたり実験を行ったりして集めた情報と、筆者の結論の主張の文をつなげたものだととらえるべきである。
実際、論文の冒頭の要旨も同じように、根拠と結論の組み合わせなっている。また、商品のプレゼンにおいても短くその商品の魅力と魅力を補強する根拠を示すことが当たり前のように求められる。
「要旨をまとめること」は学校を出た後においても用いることがあるスキルだ。子どもには、要旨をまとめることが今後も社会において使うことがあると伝えるべきである。そして、「伝えたいこと」は本論の事例や根拠、言い換えると筆者の主張を支える事実と結論の筆者の主張を組み合わせたものだ、ということも子どもと共有しておくべきである。
本学習材は5年生最初の説明的文書ある。ネットリテラシーを話題にしており、いま子どもたちに読んでおいてほしい内容を取り扱っている。
16段落の、序論(①段落)、本論(②~⑭段落)、結論(⑮⑯段落)の三論構成になっている。なお、本論(②~⑭段落)はさらに3つに分けることができる。
特徴的なのは、本論の3つがゴシック体で書かれたインターネットの記事をめぐる“お話”から始まっており、その区切りが分かりやすいようになっていることだ。
それは、
という構成になっている。
筆者は、この3つからなる本論でインターネットの特徴と危険性を示し、その危険性を理解することができれば、「インターネットは、いろいろなものに出会う、わくわくできる冒険になる」という主張に結び付けている。このように、3つの本論はまとまりを捉えやすくなっており、要旨をまとめる学習活動に適している。
そして今日的な課題を扱っているので、要旨をまとめた後で、改めて自分の考えを出して話し合うのにふさわしい学習材と言える。
〔知識及び技能〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
〔学び向かう力、人間性等〕
第一次 | 【見通す】(第1時) |
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第二次 | 【取り組む】(第2時~第5時) |
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第三次 | 【振り返る】(第6時) |
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※教科書の指導計画では全5時間で記されているが、文章の構成、本論の3つのまとまりをとらえるのに筆者は+1時間が必要だと考え、全6時間で示している。
単元の流れと言葉の力から単元の活動の見通しをもつことができる。
〇単元名、教科書p.44「言葉の力」、学習の流れを確認する
〇要旨をとらえることについて、これからも必要となる力であるという話をする
〇要旨をとらえる手順について、おおまかに子どもと確認する
本文を序論・本論・結論に分け、そして、結論から3つの本論のまとまりをとらえることができる。
〇インターネットの記事の話で本論が始まることを見つけさせ、序論①・本論②~をおさえる
〇結論⑮段落のうそや大げさな情報、お金のために情報を拡散する仕組み、知らない間に 「フィルターバブル」におちいる罠を基に、本論が3つに分けられていることをとらえさせる
3つの事例の<特徴と危険>を読み取り、まとめて要旨を書く準備をすることができる。
〇最初に、みんなで序論から本論が<特徴と危険>について説明されていることを確認する
〇次に、みんなで本論Ⅰ ②~⑥段落の<特徴と危険>をおさえて黒板に整理する
〇班に分かれて、本論Ⅱ・Ⅲを自分たちでまとめる
まず、結論⑮⑯段落から筆者の主張を書き出す活動を行った。
これでは、教科書の手引にある200字に足りないので、前時(第3時)にまとめた、3つの危険を整理してつなげるように指示する。
そうすると、190字程度の要旨ができあがった。
子どもがロイロノートを使って作成した「インターネットは冒険だ」の要旨は、下記の通り。
要旨をまとめるといった、当たり前のように取り組みながらも、子どもたちにとって実は分かりづらい活動を、子どもと一緒にその意味や手順を確認しながら行うことで、どの子どももできるようになった。
要旨とは筆者の主張と共に、本論の根拠、例をつなげることであると、原則を明確にすることで、今後、他の説明的文書においても今回の学びを用いることができることを期待している。
また、字数を問題とする場合、ロイロノートのようなアプリを活用することで、各部分の接続や字数の調節を容易に行うことができ、子どもにとって取り組みやすいものとなる。タブレット型端末を使って要旨の元を書き、紙に清書するということが今後、当たり前となっていくかもしれない。
田中元康(たなか・もとやす)
高知県・高知大学教職大学院教授/高知大学教育学部附属小学校教諭
全国国語授業研究会理事/日本国語教育学会会員
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