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5分で分かるトークトレーニング あたたかく「聞き合える」クラスをつくる
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執筆者: 溝越 勇太
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今月の5分で分かるシリーズは、溝越勇太先生(東京都・日野第七小学校)に、子どもたちが心を開いてお話を聞き合えるようになり、毎日楽しく実践できるトークトレーニングについてご提案いただきました。
友達のお話を受動的に聞くだけではなく、能動的に「聴く」「訊く」力も育むことで、クラスのあたたかい人間関係を育てていきましょう。
「静かに友達の話を聞きましょう」
「聞くときは話す人を見ましょうね」
私たち教師は1年間に何回くらい聞き方の指導をしているでしょうか。10回、100回……。もしかするともっと指導しているかもしれません。
子どもはそもそも話を聞くというのがあまり得意ではありません。子どもが授業に参加できなくなるのは、「聞くだけ」の時間。つまり、子どもたちの学びを保障するためには「聞くだけ」の時間を「減らす」か「充実させる」ことを考えなければなりません。
一方で、聞く力は「スキル」とも言えます。スキルはトレーニングすれば上達します。聞く力は、意図的・計画的にトレーニングすることができるのです。
今回の5分で分かるシリーズでは、あたたかく聞き合えるクラスをつくる「トークトレーニング」について紹介します。
聞く力・話す力・話し合う力を育てるトレーニング
1日5分で楽しく取り組める
学習意欲が高まり、あたたかい人間関係ができる
話を「聞く」ことは学びの基本のき。話をしたくなるのは、話を聞いてくれる人がいるからです。よい聞き手が育てば、自然とよい話し手も育ちます。では、「聞く」には具体的にどのような種類があるでしょうか。
「聞く」は英語でhear、listen、askなどと表します。 hearは、耳に入ってきた音が自然に聞こえる状態。どちらかと言えば受動的に聞いているという感じです。
それに対して、listenは、自ら「聞こう」と意識して注意深く話を聞きます。hearよりも能動的に自主的に聞くという感じです。漢字では「聴く」と表すこともできます。
さらに、askは、分からないことや知りたいことを自ら質問して聞きます。漢字では「訊く」と表すこともできます。
トークトレーニングでは、なんとなく聞く"hear"ではなく、目と耳と心で自ら聞く"listen""ask"という聞き方ができるようにしていきます。
ポイントは毎日少しずつ。楽しく行うこと。クラスのあたたかい人間関係を育みながら聞く力・話す力・話し合う力を着実に育てていきます。
【「チェックトーク」の手順】
①教師が1人ずつ名前を呼ぶ
②名前を呼ばれた子は返事をして、一言(「好きな食べ物」など)
③だれが何と答えたのかをチェックする
①教師が一人ずつ名前を呼ぶ
まず、黒板に「はい(さわやかに) + 好きな食べ物」と板書します。そして、笑顔で次のように伝えます。
T「先生から名前を呼ばれたらさわやかに返事をしてね」
「返事をしたら、好きな食べ物を1つ教えてね」
「全員起立~、好きな食べ物が決まったら座りましょう」
返事を「元気に」や「大きな声で」ではなく、「さわやかに」とするのには理由があります。「元気に」「大きな声で」としてしまうと、声が小さい子はそれだけでプレッシャーを感じて委縮してしまいます。「さわやかに」としておけば声が小さい子でも大丈夫。「おお、さわやかないい返事だね」と褒めることができます。はじめは声が小さくても、子どもは慣れて自信がついてくるとだんだん大きな声が出るようになるのです。
ここで、すぐに名前を呼び始めてはいけません。なぜなら、好きな食べ物をすぐに決められない子がいるからです。「全員起立して、決まった子から座っていく」という考える時間を確保するようにします。
②名前を呼ばれた子は返事をして、一言(「好きな食べ物」など)
T「Aちゃん」 → Aちゃん「はい、お寿司です」
T「さわやかな返事だねぇ。Bちゃん」 → Bちゃん「はい、シャインマスカット」
T「おいしいよね。Cちゃん」 → Cちゃん「はい、超でっかいステーキ!」
T「おぉ、なんじゃそりゃ(笑)。Dちゃん」 → 「はい、カニ鍋です」
リズミカルに楽しい雰囲気で進めていきます。「さわやかな返事だね」「いい声!」などと短い言葉でよさを価値付けると、みんなもまねするようになります。
また、Cちゃんのようにユーモアを入れる子には「なんじゃそりゃ(笑)」などとツッコミを入れると、みんなが笑って話しやすい空気ができてきます。お題は、「好きな動物」「苦手な食べ物」「今ほしいもの」など、何でもOK。子どもたちが考えたお題で行ってもいいでしょう。
③だれが何と答えたのかをチェックする
全員が言い終わったら、「シャインマスカットが好きなのはだれでしょう?」と、クイズを出します。はじめのうちはみんなポカンとします。発表することに一生懸命で、聞いていないからです。でも、必ず聞けている子が数名います。その子を指名して答えを言ってもらえれば、「おおすごい、よく聞いていたねぇ。拍手~」とみんなでたくさん称賛します。
「話を聞きなさい」ではなく、話を聞いていたら先生に褒められる、みんなから拍手される、という状況をつくるのです。
【「クエスチョントーク」の手順】
①代表の子どもが黒板に背中を向けて立つ
②黒板にお題「キリン(例)」を書く
③①の子が順番に質問をしていき、お題を当てる
①代表の子どもが黒板に背中を向けて立つ
「クエスチョントーク」は、黒板に書かれたお題を代表の子どもが当てるというクイズです。代表の子ども1人〜6人ほどが黒板の前に立ちます。黒板にお題が書かれるため、「黒板を見てはいけないよ」と伝えておきます。
②黒板にお題「キリン(例)」を書く
黒板にお題を書きます。お題はみんなが知っているものがいいです。動物や食べ物、学校の先生などが盛り上がります。また、「坂本竜馬」など、学習内容と絡めて行うと学習の定着も図れます。
はじめのうちは、「黒板にある動物が書かれているよ」と先にジャンルを教えてもいいですが、慣れてきたら最初からヒントなしで行うこともできます。また、お題を子どもたちが考えてもいいでしょう。
③①の子が順番に質問をしていき、お題をあてる
代表の子がみんなに向かって、一人ずつ質問をしていきます。このときの約束は、「はい」か「いいえ」で答えられる質問にすることです。
代表A 「この動物は大きいですか?」
みんな 「はい!」
代表B 「この動物は肉食ですか?」
みんな 「いいえ!」
代表C 「この動物は鼻が長いですか?」
みんな 「いいえ」
このように進めていき、代表の子は答えが分かった場合は挙手して答えます。正解したらみんなで拍手。答えを間違ったら、代表の子は「みんな」の側になってもらいます。
代表の子が、みんなに質問しても答えがわからない場合は、次のように進めます。
教師 「難しいみたいなので、だれかちょうどいいヒントを出してくれるかな?」
Xちゃん 「この動物は背が高いです」
Yちゃん 「色は黄色です」
代表D 「ああ、わかった! キリンだ」
みんな 「おぉ、正解〜」(拍手)
「クエスチョントーク」を行うと質問する力を楽しくトレーニングすることができます。活動が終わったら「だれの質問がよかった?」とみんなで振り返ったり、「質問を聞くときにみんな話す人をしっかり見て真剣に答えていたね」と価値づけたりするといいでしょう。
トークトレーニングを毎日楽しく続けていくと、子どもたちがおどろくほど話を聞けるようになり、学習意欲も高まります。トークトレーニングには「チェックトーク」や「クエスチョントーク」の他にもたくさんのバリエーションがあります。毎日5分でできるトークトレーニングを楽しく続けて、あたたかく聞き合えるクラスをつくりましょう。
〔引用・参考文献〕
溝越 勇太(みぞごし・ゆうた)
東京都日野市立日野第七小学校
全国国語授業研究会理事/日本授業UD学会理事
今月の5分で分かるシリーズは、小崎景綱先生(埼玉県・さいたま市立新開小学校)に、扱いに困りがちな詩の単元を、ICTを用いて、言葉にしづらい詩の解釈を視覚化することで、誰でも簡単に楽しく詩の世界を理解し、共有できるようになるアイデアをご紹介いただきました。
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