それでもまた明日も学び続けようと思える一冊
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お知らせ:
執筆者: 宍戸寛昌
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書名:独学大全 ー絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法ー
著者名:読書猿
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2020年
ページ数:788
「忙しい」「疲れている」「ほかにやらなければいけないことがある」「今さら・・・」やらない言い訳をいくらでも用意できるのが、大人の学びである。生涯学び続けることが必要、とわかっていても、だ。
今回は、そんな「学ぶこと」に向き合おうとする大人の背中を力強く押してくれる一冊を、宍戸先生にご紹介いただきました。
教員ではない人によく言われること。
「先生なんて、毎年同じこと教えるだけだから暇でしょ」
「子どもなんて、ちょっと強く言えば言うこと聞くから楽でしょ」
――とんでもない。
毎日の教材研究から一人ひとりに合わせた指導まで、考えることは山ほどある。
学習指導要領が変われば指導法もかえなきゃだし、校内ICTシステムの更新や「インクルーシブ」「イマージョン」といった新しい概念も追わなきゃいけない。
毎日、新しい学びの連続だ。
明日の授業準備をして、あの子に応じた指導を考え、今度の研修発表の構成を練る……。
そうやって追われていると、ふと怖くなる時がある。
あれ、今学んでいることって、結局「明日」にしか役立たないんじゃないか。
目の前の対応に追われれば追われるほど、自分の人間性が痩せ細っていくんじゃないか。
VUCAの時代、学ぶことと生きることは同義だ。
スマホの仕様が変われば新しい操作を覚えるように、僕らは一生探究学習の渦中にいる。
けれど、そんな「学び」を一番邪魔しているのも、結局自分自身だ。
やる気が続かない、調べ方がわからない、まとめるのが億劫……。
学び続けることって、どうしてこんなにしんどいんだろう。
そんな私の学びのバイブルになっているのが、この本『独学大全』だ。
結局、本当の意味での「学び」とは独学なのだと思う。
AIに綺麗にまとめてもらった文章を読んでも、上滑りするだけで身には付かない。
これは研究会への参加や読書でも同じだ。誰かに教えてもらう受け身の姿勢ではなく、自ら知を獲得しにいかなければならない。
たとえしんどくても、学び続けなければ……。
この本の面白さは、本来しんどいはずの「学び続けること」のハードルを、極限まで下げて提示してくれる点にある。
実践ステップの解説はとにかく懇切丁寧。それでいて各章の入り口は「無知くん」と「親父さん」の軽妙な対話から始まり、引用元も論文並みに明記されている。
目から鱗の画期的な手法が満載でありながら、一つひとつの情報密度が驚くほど濃いのだ。
例えば「2ミニッツ・スターター」という技法。
①タイマーを2分にセットする。
②タイマーをスタートさせ、すかさず作業に入る。
③タイマーが鳴ったら、途中でも一旦作業を止める。 作業を止めたら「続ける」「別の作業に移る」「やめる」を2秒で決める。
一見たわいもない技法だが、ここには「着手の難しさ」や「作業開始による課題認識の適正化」、さらにはザイアンス効果(単純接触効果)への丁寧な解説が添えられる。
加えて「未着手から未完成状態へ移行させる」効用を「オヴシアンキナ効果」として提示してくれるのだ。
科学的な裏打ちと納得感があれば、この「たった2分」の試みも、確かな学びのステップとして実践できるだろう。
国語教師として見逃せない記述も多い。
例えば「音読」だ。
私たちは「何を・どう読ませるか」という対象や方法には敏感だが、「なぜ声に出すのか」「どんな効果があるのか」という本質的な問いには、なかなか目が向かない。
本書は、近世の素読・白読から、大村益次郎や福沢諭吉を排出した適適斎塾(適塾)での語学学習に至る歴史的背景から解き明かす。
そして音読の効果として「無意識に出力できるほどの大量のフレーズ・ストックが、思考と言語能力のリソースになる」と示す。
さらに「読解力の低い読み手の理解度を改善する」という、教員として無視できない知見まで網羅されている。
その発展形として、声に出しながら気づきも口にする「ツブヤキ」という手法まで提案されているのだ。
ここまで突きつけられたら、「じゃあ、とりあえず音読しようか」などと気軽には言えなくなる。
同時に、自分自身の独学にも音読を取り入れようと強く思わされるのだ。
700ページを超える本書は、巷で「鈍器本」とも呼ばれている。
「次の単元も、去年と同じ進め方でいいか」
「今度の研修、面倒だし聞くだけで済ませよう」
「もう、学び続けることに疲れた……」
もしもそんな思いが頭をよぎったら、ぜひこの「鈍器」で、未来への扉をこじ開けてほしい。
宍戸寛昌(ししど・ひろまさ)
立命館小学校教諭
全国国語授業研究会/関西国語授業研究会/国語授業のアスヲテラス会/明日の国語授業を語る会/日本国語教育学会
