「まちがってもいい」の、その先へ―『教室はまちがうところだ』を教師の側から読み直す
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お知らせ:
執筆者: 伊東 卓
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書名:教室はまちがうところだ
作:蒔田 晋治
絵:長谷川 知子
出版社:子供の未来社
出版年:2004年
ページ数:32
教室の心理的安全性を語る上で外せない、とても有名な一冊です。
年度はじめの学級開きや、学級の在り方を伝える際など、子どもたちへの読み聞かせとして読まれている先生もいらっしゃるのではないでしょうか
今回は、子どもたちへの読み聞かせだけではなく、教師としての自分を見つめ直したいときにも有効な一冊であることをご提案いただきました。
教室で手を挙げて発表するとき、「間違ったらどうしよう」「笑われたら恥ずかしい」と不安になる子どもたちに向けて、「教室は、間違ってもよい場所なのだ」と力強く語りかける内容です。
間違った意見や答えも、みんなで出し合い、「どうだろう」「こうではないか」と考え合う。
その過程を通して、より確かな考えを見付けていく。
そして、だんだんと勇気を出して自分の考えを言えるようになり、一人だけではなく、みんなで学び、みんなで成長していくことの大切さを伝えています。
また、単に「間違えても大丈夫」と励ますだけではありません。人の間違いを笑わないこと、安心して考えを表現できる教室をみんなでつくることも重要なメッセージとして描かれています。
『教室はまちがうところだ』の大きな魅力は、「間違うこと」の意味を、子どもたちと一緒に捉え直すことができるところです。
教室で発表するとき、「間違ったらどうしよう」「笑われたら恥ずかしい」「自分の意見は友達と違うかも」と不安に感じる子どもは少なくありません。
この絵本は、そんな子どもたちに「間違えても大丈夫」と語りかけてくれます。
しかし、この本が伝えているのは、単に「間違いを許そう」ということだけではありません。
自分の考えを出し、間違いながら考え直し、友達の考えと比べたりつなげたりする。
そのような過程を通して、みんなでよりよい考えをつくっていくことに、学ぶことの価値があると教えてくれます。
つまり、「間違えてもいい教室」から、さらに一歩進んで、「間違いをみんなの学びに生かせる教室」の大切さを伝えてくれる一冊です。
授業づくりと学級づくりをつなぐことができることも、この絵本のよさです。
【授業づくりに】
読み聞かせたその日だけで終わらせず、実際の授業で誰かの間違いから新しい発見が生まれたとき、あるいは誰かが「分からない」と声を上げたときに、「『教室はまちがうところだ』みたいだね」と振り返ります。
絵本の言葉と実際の学習経験とが結び付くことで、そのメッセージは学級の中に少しずつ根付いていきます。
【学級づくりに】
安心して発言できる学級であることは、子どもが自分の考えを表現し、互いの考えから学ぶための大切な土台になります。
「友達が間違えたとき、どうする?」「分からないと言える教室って、どんな教室?」と教師から直接問い掛けるのではなく、この絵本を間に置くことで、自分たちはどのような教室をつくりたいのかを、子どもたち自身が考えるきっかけにすることができます。
そのため、学級開きや年度当初の読み聞かせにもおすすめです。
一方で、発言する子が固定されてきたとき、正解を言うことばかりに意識が向いていると感じたときなど、年度の途中に改めて読むことにも大きな意味があります。
夏休み明け、「このクラスでは、これまでどんな学び方をしてきたんだっけ?」と振り返るきっかけとして読むのもおすすめです。
…と、ここまでは、この本をご存じの先生方であれば、すでに実践されていることかもしれません。
そこで、もう一歩踏み込んで、「子どもたちに何を求めるか」ではなく、「教師である自分はどうあるべきか」という視点から、この絵本を捉え直してみるのはいかがでしょうか。
私自身、夏休み明けに子どもたちにもう一度この絵本を読み聞かせ、今度は“教師の側から”教室の在り方を考えてみようと思っています。
「4月にも読んだけど、みんなできている?」と、子どもたちにできているかどうかを確認するのではなく、「4月にこの絵本を読んだけど、“先生は”できている?」と、教師を主語にして子どもたちに問い掛けてみようと思います。
つまり、子どもたちが安心して間違えられる教室を、教師である自分自身がつくれているかを問うのです。
これから読み聞かせをしてみようと思った先生方も、ぜひ「みんなが安心して間違えるために、先生は何をしたらいい?」と、子どもたちに問い掛けてみてください。
「間違っても大丈夫」と子どもに伝えるだけではなく、間違いや考えの違いを、みんなの学びにつなげていく。そのために、教師である自分は何ができているだろうか。そう問い直させてくれます。
この絵本は、一般的な物語のように、登場人物の出来事を追いながら読む作品ではありません。
蒔田晋治さんの詩をもとに作られているため、一つ一つの言葉を子どもたちが受け止められるよう、少しゆっくりと読むのがおすすめです。
読み終わった後に、「間違えてもいい」と確認するだけで終わらせず、「どうして、間違うことが大切なんだろう」「友達の間違いから学んだことはあるかな」と、一歩踏み込んで考えることも大切です。
そうすることで、「間違い=失敗」という見方から、「間違い=みんなで考えるための大切な材料」という見方へと広げることができます。
余談ですが、私は小学校4年生のときにこの詩と出合いました。当時転校して不安だった私が新しい学校に入ると、ホールにこの詩が大きく貼り出されていました。「なんていい言葉なんだろう」と、子どもながらに思っていたことを今でも覚えています。
そういう意味では、詩の全文を貼っておくことも効果的です。
この絵本を、子どもたちと教室文化をつくるための一冊として、そして、教師自身の授業や子どもとの関わり方を見つめ直す一冊として、(もう一度)手に取ってみてはいかがでしょうか。
伊東卓(いとう・すぐる)
宮城教育大学附属小学校 教諭
日本授業UD学会/日本LD学会
