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    「弱さ」を「準備」に変え、チームで教室を照らす一冊

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    「弱さ」を「準備」に変え、チームで教室を照らす一冊

    「弱さ」を「準備」に変え、チームで教室を照らす一冊

    執筆者: 谷口紳

    |

    2026年5月28日

    書名:臆病者の学級経営
    著者名:古舘良純
    出版社:東洋館出版社
    出版年:2025年
    ページ数:181

    教師に必要なものは強力なリーダーシップでも圧倒的な学級経営力でもない。
    自分の弱さを知り、その不安を準備に変え、仲間の力を借りることができる強さだ。
    今回は、そんなありのままの人間として子どもたちの前に立つことを肯定してくれる本書を紹介いただきました。

    目次

    書籍紹介 おすすめポイント ① 自己理解(自分の弱さを知る) ② 不安だからこその「準備」 ③ 職員全員で勝つ(チーム学校) おわりに 併せて読みたい本

    書籍紹介

    本書の根底にあるのは、「自分の弱さを認めることこそが、子どもたちとの真のつながりを生む」という逆説的な哲学だ。
    教師が完璧な仮面を被っている限り、子どもたちは自分の弱さをさらけ出すことができない。
    著者は、自らの失敗や葛藤を包み隠さず綴りながら、誰もが抱える不安をどのように学級のエネルギーに変えていくのかを、緻密かつ温かに描いている。

    国語科の授業においても、私たちは「正解」を教えることに急ぎ、子どもたちの迷いや揺らぎを切り捨ててしまうことがある。
    本書を読み進めるうちに、学級経営と授業づくりは地続きであり、その根底には教師自身の「人間としての在り方」があることに気づかされるはずだ。

    おすすめポイント

    ① 自己理解(自分の弱さを知る)

     私たちはプロとして、教壇に立つ以上「完璧でなくてはいけない」「隙を見せてはいけない」と思いがちだ。
    しかし、本書が説くポイントは、「自分の弱さを徹底的に自覚すること」である。
    「自分は臆病だから、学級経営や授業がうまくいかなかったらどうしようと不安になる。自分は弱いから、あの子の一言に傷ついてしまう。」
    著者は、そうした感情を否定しない。
    むしろ、その弱さこそが「他者の痛み」を理解するための窓口であると説く。
    自分の内側にあるドロドロとした感情や、情けない自分を直視し、受け入れること。
    この「自己理解」こそが、スタートラインなのだ。

    国語の授業で物語を読み深める際、登場人物の葛藤に寄り添えたり、子どもたちの言葉に寄り添えたりするのは、教師自身が自分の葛藤を理解しているからに他ならない。
    自分の弱さを知る教師は、教室に漂う「小さな違和感」に敏感になる。
    その繊細さこそが、子どもたちの微細な変化をキャッチするアンテナになるのだ。

    ② 不安だからこその「準備」

    数年前の私は、子どもたちが生き生きと躍動する授業や学級を目の当たりにしたとき、いつも心のどこかで言い訳を探していた。
    「あの先生だからできる」「あの先生にしかできない」と。
    そうやって相手を特別な才能の持ち主という枠に押し込めることで、自分の至らなさから無意識に目を逸らしていたのかもしれない。
    本書が説くのは、カリスマ性などという実体のないものではない。
    子どもが躍動する教室の背景にあるのは、「準備」という名の誠実さである。
    臆病な教師は、常に不安と隣り合わせだ。あの静まり返る教室の冷やかさを誰よりも恐れている。
    だからこそ、その不安を打ち消すために、何度もシュミレーションを繰り返すのだ。
    「あの先生だからできる」のではない。
    誰よりも臆病で、誰よりも失敗を恐れる者が、その不安を「準備」というエネルギーに変換するのだ。

    あの先生が見せていた「余裕」の正体は、天賦の才などではなかった。それは、人知れず積み上げられた、圧倒的な準備の集積だったのである。

    ③ 職員全員で勝つ(チーム学校)

    多くの先生方を勇気づけるであろう第三のポイントは、「チーム学校」という視座だ。 
    私たち担任は、「自分の学級の問題は、自分で解決しなければならない」という思考に陥りがちだ。
    しかし、本書は「一人で背負うな」と、優しく背中を押してくれる。
    「教師が疲弊し、眉間にしわを寄せていては、子どもたちが笑えるはずがない。」
    同僚を頼り、時には弱音を吐き、互いの実践を称え合う。
    教師が心理的安全性を感じているとき、その温かな空気は必ず子どもたちへと波及する。
    教師の心のゆとりこそが、子どもたちの安心感の源なのだ。
    しかし、「職員全員で勝つ」とは決して誰かに寄りかかるということではない。
    「一人ひとりが自分のやるべきことをやる」その個々の矜持が土台にあってこそ、チームは機能する。一人ひとりがやるべきことを精一杯やったその先に、初めて「チームで勝つ」という景色が見えてくる。
    国語科という教科の枠を超え、一人の教育者として、周囲とどのように手を取り合い、高め合っていくべきか。
    本書は、肩の力をふっと抜き、明日また職員室の扉を叩く勇気をくれるだろう。

    おわりに

    国語の授業は、言葉を通して「人間」を学ぶ場だと考えている。
    ならば、教える側の私たち自身が、誰よりも人間らしく、もがきながら生きる姿を見せるべきではないだろうか。
    「臆病者の学級経営」が教えてくれるのは、テクニックとしての経営術ではなく、「弱さを抱えたまま、それでも子どもたちの前に立ち続ける勇気」である。
    自分の弱さを知り、不安を準備に変え、仲間の力を借りる。
    このプロセスを経て創られる学級、学年、学校は、子どもたちにとって「失敗しても大丈夫な場所」になる。そして、そのような安心感のある土壌でこそ、子どもたちの言葉は豊かに、伸びやかに育っていく。
    新年度の始まりに追われる時期、あるいは日々の実践に壁を感じているとき。 是非、この本を手に取ってみてはどうだろうか。
    そこには、あなたと同じように悩み、震えながらも、全力で子どもたちと向き合おうとする「臆病者なプロフェッショナル」の温かな眼差しがあるはずだ。
    この一冊が、全国で奮闘する先生方の心の支えとなり、明日からの教室に一筋の光を届けるだろう。

    併せて読みたい本

    • 茅野政徳・櫛谷孝徳 『授業の見方』東洋館出版社、2026年
    • 茅野政徳・曽根朋之 『つまずきから学ぶ国語』東洋館出版社、2026年
    谷口紳先生

    谷口紳(たにぐち‧しん)

    神奈川県相模原市立二本松小学校・総括教諭

    創造国語・教材開発ユニット所属

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