ユーモアの中に温かさと切なさが感じられる一冊
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執筆者: 石橋隼人
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書名:ちゅーちゅー
作・絵:宮西 達也
出版社:鈴木出版
出版年:2010年
ページ数:28
今回は、教材としても人気の「にゃーご」の続編のお話を紹介いただきました。
何も知らないねこをだますねずみたちのやりとりがほほえましいのですが、同時に、読み終わった後、思わず声に出して「ちゅーちゅー」と言いたくなるような深い余韻が残る作品です。
教科書にも掲載されている宮西達也さん作・絵の「にゃーご」からさらにもう一つの世界へ広がる作品。
それが『ちゅーちゅー』です。
みなさんは、ねずみとねこが登場するお話と聞いて、どんな場面がぱっと頭の中に思い浮かびますか。
ねこがねずみを襲ったり食べようとしたり、そんな展開を想像する方も多いかもしれません。
本作も、そのイメージをなぞるように始まります。
三匹のこねずみたちは、ねこに怯えながら暮らしています。
ある日、目の前にねこが現れますが、どうやらねこはねずみのことをよく知りません。
そこでこねずみたちは、自分たちの正体を隠し、ねこをだまします。
その言葉をねこは疑うことなく受け入れ、共に過ごす中で、少しずつ心を通わせていきます。
やがて大きな出来事が起こり、こねずみたちはある選択を迫られます。
離れ離れになるという切ない展開の中で、最後には互いに「ちゅーちゅー」と呼び合う、余韻の残る結末を迎えます。
本作の魅力は、「食べられるかもしれない」という緊張感の中に、ユーモラスなやりとりが織り交ぜられている点です。
こねずみたちが「ねずみは『ぼよよ~ん』と鳴く」「『ちゅーちゅー』は『だいすき』という意味」とねこをだます場面で、読者は思わずクスッと笑ったり、ツッコミを入れたくなったりするでしょう。
こうした笑いがあるからこそ、その後に訪れる出来事がより強く心に残ります。
ねずみたちは、自分たちの力ではねこを助けられない状況の中で、身の危険を承知で他のねこをおびき寄せます。
離れ離れになる切なさが描かれながらも、最後に「ちゅーちゅー」と呼び合う場面からは、確かにつながり合う心の温かさが伝わってきます。
読後には、さまざまな感情が静かに残る作品です。
「ちゅーちゅー」という言葉に、どのような意味や気持ちが込められていると思いますか。
冒頭では、こねずみたちが楽しく遊ぶときの鳴き声として使われていますが、村長からは「ねこに見つかると危険なもの」として注意される鳴き声でもあります。
同じ言葉が、楽しさと危険の両方を含んでいるのです。
さらに物語が進むと、「だいすき」という意味として使われ、終盤では離れていても気持ちを伝え合う言葉へと変化していきます。
このように、一つの言葉が場面によって意味を変え、感情を伝える手段へと広がっていく点が、本作の大きな魅力です。
本作は、文章だけでなく絵からも気持ちの変化を読み取ることができる作品です。
こねずみたちは当初、恐怖から自分たちの正体を偽りますが、ともに過ごし、バナナを分け合う中で関係は少しずつ変わっていきます。
特に、ねこが自分の身の危険を顧みずにこねずみを守る場面は、大きな転換点です。
この出来事をきっかけに、ねこは恐怖の対象から信頼できる存在へと変わります。
そして終盤、こねずみたちがねこを必死に助けようとする姿からは、相手を思う気持ちの芽生えが読み取れます。
物語全体で、行動を通して気持ちが変化していく様子が、丁寧に描かれています。
こうした点から、本作は読み聞かせにとどまらず、「このとき、こねずみはどんな気持ちだったのか」「『ちゅーちゅー』にはどんな思いがこめられているのか」といった問いを通して、国語の物語教材としても活用できる一冊といえるでしょう。
読み聞かせでは、子どものつぶやきを何より大切にしたいところです。
途中でこぼれる一言は、物語の世界に入り込んでいる証でもあります。
教師は、そのつぶやきに頷き、子どもの気持ちを受け止めながらリズミカルに読みましょう。
また、「ちゅーちゅー」と読む際には、場面ごとに声色を変えると効果的です。
楽しい場面では明るく、緊張する場面では少し抑えた声で読むことで、子どもたちはより物語に引き込まれます。
あえて反対の気持ちの声色にして読むことで、「そんな言い方しないよ」といったつぶやきを引き出すのも一つの方法です。
さらに、ページの最後にある「ー(ダッシュ)」では、少し間をとってからページをめくることで、次の展開への期待が高まります。
宮西達也さんは文章と絵の両方を手がけているため、絵をじっくり見せることも大切です。
言葉に表れていない情報に目を向けることで、子どもたちの想像はさらに広がっていきます。
教師自身も童心に返り、子どもたちとともに物語の世界を味わっていきたいものです。
石橋隼人(いしばし・はやと)
神奈川県・藤沢市立大越小学校教諭
創造国語
