5分でわかる 子どもと創る「学びのあしあと」のスキル
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執筆者: 溝上 剛道
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5月号の「5分でわかるシリーズ」は、溝上剛道先生(熊本県・熊本市立黒髪小学校)に、使って終わりになりがちな学習掲示物を、「学びのあしあと」といった、カード化・模造紙・アナログ×デジタルの3タイプで捉え直し、学習内容や目的に応じた活用例をご提案いただきました。
大単元・小単元・振り返り活動という3つのプロセスを通して、子どもが主体的に学びを更新し続けられるような、学習掲示の活用がわかります。
目次
授業のポイントをまとめた模造紙。
放課後あんなに苦労して作ったのに、いつの間にか見向きもされなくなって……。
あるいは、教室前方に貼られた「話し方・聞き方」スキル。 作成時は校内で共通理解を図ったはずなのに、1年もすると風化し始めて……。
これはどこかで起こった他人事ではなく、私の教室で何度も繰り返されてきた課題だった。
なぜ私の学習掲示は、いつの間にか“景色化”してしまうのだろう。 あの先輩のクラスでは、授業であんなに子どもたちが掲示を活かして話し合っているのに。
ここでは、そんな悩みを乗り越えるきっかけになった「あの先輩」の言葉を振り返りながら、自分がどんなマインドで、どんなアイデアにトライしているかを紹介したい。
先輩の学習掲示をじっくり見てみた。
自分との違いは何だろう。
まず目についたのは、子どもの名前だ。
学習のポイントには必ずと言っていいほど、子どもの名前が添えられている。
その先輩いわく、 「溝上くんのは『教師のまとめ』。主語が教師なんだよね。でも、学びの主語は子ども。だからその子が働かせた見方・考え方を、名前と一緒に『学びのあしあと』として残すようにしている」
ハッとした。
子どもの名前を書いておくのは、今までも聞いたことがあった。
「◯◯さんのワザ」のように固有名詞が入ると、活用しやすい。
でもその先輩は名前だけじゃなく、「課題解決の過程で働かせた見方・考え方」を一緒に書くことにこだわっていた。
改めて見ると、先輩の掲示には「どんな問いを」「誰が」「どんな見方・考え方を働かせて」解決したかが残されている。
そうした“学びの文脈”をありありと描いているからこそ、次の授業で「あのとき、◯◯さんが言っていたように……」のような発言がでてくるのだろう。 さらに「でもこの場合……」のように、それまでのワザでは解決できない場面との出会いから「見方・考え方」が更新されていく。
そんな子どもたちの姿を目の当たりにし、私は『教師のまとめ』ではなく、子ども主語の『学びのあしあと』を目指すようになった。
「学びのあしあと」を創っていく上で大切にしたいのは、課題解決の中でどんな見方・考え方を働かせたか、子ども自身が立ち止まり、学びを言語化する場である。 しかし「振り返りましょう」と投げかけたからといって、メタ認知が働き出すわけではない。 ではどんな働きかけがそのきっかけとなりうるのか。
例えばその手立ての1つに、次のような“立ち止まり発問”がある。
タイミング |
発問例 |
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導入 |
前時の子どもの考えや記述等を取り上げるとき |
「◯◯くんのすごいところ、わかる?」 「どんなワザが使えそうかな?」 |
展開 |
対話を通して「ああ」「なるほど」等の共感・納得が生まれたとき |
「なんで、『ああ』って思ったの?」 「今、どんなワザを使っていたかな?」 |
今までのワザで解決できなかったり、考えにずれが生じたりしたとき |
「だったら、〜とは限らないのかな?」 「どうすれば解決できそう?」 |
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終末 |
本時の学習を振り返るとき |
「どんなワザを使ったかな?」 「どうやってこの考えに辿りついた?」 |
初めは子ども自身で言語化することが難しいことも予想される。そのような場合、次の手立ても必要に応じて講じるとよいだろう。
カード1枚に1つのワザを書き残していくもの。
メリット |
◯ 作成したカードを、授業展開に応じて板書で活用しやすい ◯ 例のように領域等によって色分けすると、視覚的支援になる |
デメリット |
⚫️紙幅が少ないため、課題解決のプロセスを残すには限りがある |
模造紙を教室に掲示しておき、ワザを見つけるたびに書き足していく。
メリット |
◯カードと比べて紙幅がたっぷりあり、根拠や理由づけなど、課題解決のプロセスをぎっしり残せる ◯「あしあと」が時系列で整理され、単元の流れと連動して記憶に残りやすい |
デメリット |
⚫️カードのように「順番の入れ替え」ができないため、ワザの分類・整理には不向き |
「あしあと」として共有する見方・考え方の通し番号をアナログとデジタルで統一し、両者が連動したものになるようにする。
アナログ(模造紙)は端的にまとめた言葉と名前を書いておく。(=目次的な役割)
デジタルでは、板書や個々のノート(=具体)を共有する。
メリット |
◯ロイロノートなどのデジタル活用により紙幅は無限 ◯データが多くなる分、模造紙に“目次的役割”をもたせ、アナログとデジタルを連動させることで、両者のよさを生かせる |
単元の学習の中で、課題解決を通して働かせた見方・考え方を教師が価値づけたり、子ども自身が振り返ったりして、言語化していく。
2-2.で示した発問は、このプロセスで最も効果を発揮する。
(「3」で例示した画像は、大単元での取り上げ指導で作成したもの)
冒頭述べた「話し方・聞き方スキル」については、トップダウン式ではなく、小単元などを活用し、活動を通してボトムアップ式で『あしあと』を創っていくと、その後の大単元で生かしやすくなる。
特に、学期始めや大単元と連動して位置づけると効果的である。
単元の振り返りで、アイコンカードを活用した「あしあと」化のプロセスもある。
例えば、ノートや成果物等を見返した上で「どうやって考えを広げたり深めたりしてきた?」と発問し、話し合いながら単元の学びを振り返る場を設定する。
その際、子どもたちに黒板を開放し、自分たちで「○○の力」を書き出せるようにすると、より意欲的に取り組むことができるだろう。
先輩に学んだ「学びのあしあと」は、現在この3タイプ×3プロセスで試行錯誤中である。これからもトライを続け、子どもと共によりよい学びを創っていきたい。
溝上剛道(みぞがみ・たかみち)
熊本県・熊本市立黒髪小学校
日本国語教育学会会員/九州小学校国語教育研究協議会 研究委員長/熊本県小学校教育研究会国語部会 企画・広報部長
