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    子どもの可能性を引き出す教師のマインドセットを問う一冊

    ホーム / 子どもの可能性を引き出す教師のマインドセットを問う一冊
    子どもの可能性を引き出す教師のマインドセットを問う一冊

    子どもの可能性を引き出す教師のマインドセットを問う一冊

    執筆者: 仲野和義

    |

    2026年3月19日

    書名:好奇心を天職に変える 空想教室
    著者名:植松努
    出版社:サンクチュアリ出版
    出版年:2015年
    ページ数:240

    子どもの可能性を引き出したい、そう思わない教師はいません。しかしながら、そのためには子どもの挑戦を信じ、見守る勇気が必要です。今回は、子どもの可能性を信じ、挑戦をサポートするための教師のマインドセットについて考えさせられる一冊をご紹介いただきました。

    目次

    はじめに 理由その1:「どうせ無理」を壊すのは、教師の仕事である 理由その2:「教師としてのマインドセット」を再定義する 理由その3:「子どもの可能性を無限に引き出す」という視点 理由その4:「だったらこうしてみたら」というパワーワード まとめ 併せて読みたい本

    はじめに

    この本はいわゆる「教育書」ではありません。教育学の中では語られない、現代に生きるある人物の自叙伝的な本です。
    ただ、私にとっては、「教員としての在り方」を根底から問い直す一冊となりました。
    それには、もちろん理由があります。

    理由その1:「どうせ無理」を壊すのは、教師の仕事である

    この本を貫くキーワードは、「『どうせ無理』をなくすこと」です。
    著者は、子どもや若者が挑戦しようとした瞬間に投げかけられる否定の言葉が、どれほど可能性を奪ってきたのかを具体的に示しています。
    ここで私たちが考えるのは、 教室で、または職員室で
    ・「それはまだ難しいね」
    ・「前例がないから」
    ・「時間がないから」
    こうした言葉を、無意識に使っていないかということです。
    この本は厳しく、しかし温かく、教師の「マインドセット」がどうあるべきかについて問いかけてきます。
    「子どもの能力の限界を決めているのは、子どもではなく、大人の思い込みなのではないか」ということです。

    理由その2:「教師としてのマインドセット」を再定義する

    この本から私が強く受け取ったのは、教師としてのマインドセットの転換です。
    「教師は正解を教える人ではない。挑戦を止めさせない人である。」
    著者が語るのは、特別な才能をもつ子どもの話ではなく、むしろ、失敗し、遠回りし、それでも諦めなかった子どもたちの物語です。その背景には「必ず『信じ続けた大人』」がいます。
    これは、国語の授業にも直結するのではないでしょうか。子どもが自由に書こうとしたとき、
    ・型にはまらない表現を否定していないか
    ・時間内に終わらない子どもを切り捨てていないか
    ・誤答を価値ある思考として扱っているか
    この本は、私たちの評価観そのものを問い直してくれているように思います。
    私の国語授業でも、時間内に課題を仕上げることも必要だという前提を踏まえた上で、あえて締め切りを曖昧にすることがあります。すると、いったん課題から離れて時間を置くことによってメタ認知が働き、課題へのアプローチが磨き上げられることがあります。

    教師のマインドセットが変われば、教室の空気は変わり、教室の空気が変われば、子どもの挑戦量が変わり、挑戦量が変われば、成長曲線は大きく変わってくると思います。

    理由その3:「子どもの可能性を無限に引き出す」という視点

    この本の核心であると私が思うポイントです。
    子どもは、能力があるから挑戦するのではなく、挑戦する環境があるから、能力が育つのではないでしょうか。
    つまり、「可能性は発見するものではなく、育てるもの」なのです。
    小学校現場で考えるなら、
    ・総合的な学習の時間での探究テーマの設定
    ・国語での意見文や物語創作の自由度
    ・学級会での自治の範囲
    これらはすべて、教師がどこまで子どもを信じるかで決まります。
    「危ないからやめておこう」ではなく、「どうすればできるのか」を一緒に考えた方が、教師にとっても、子どもにとっても、学びの質が高まります。この姿勢が、子どもの可能性を無限に引き出す土台になるとも思っています。
    私は信じて待つことの本質とは放任ではなく、挑戦の環境を整え続ける覚悟なのだと、この本から学びました。

    理由その4:「だったらこうしてみたら」というパワーワード

    この本で繰り返し登場するのが、「だったらこうしてみたら」という言葉です。これは、単なる提案ではなく、挑戦を止めないための思考様式です。
    子どもが「できません」「うまくいきません」と言ったとき、教師が「じゃあ別の方法でやってみよう」「だったらこうしてみたら」と返してみる。これらの一言が、挑戦の連鎖を生んでいくことになります。
    国語の授業であれば、
    ・「書けない」→「じゃあ話してみよう」
    ・「意見が思いつかない」→「だったら反対から考えてみたら」
    ・「まとめられない」→「キーワードだけ並べてみたら」
    この発想は、思考の柔軟性を育てていくことにもつながります。
    実際、私の学級でもこんなことがありました。
    「『帰り道』(光村図書6年)の話の続きを考える」という課題に取り組もうとしながらも、ノートを前にしてまったく鉛筆の動かない子どもに「だったら、シンキングツールを使って箇条書きしてみれば?」と別の子どもが声をかけたのです。すると、それまでが嘘だったかのように、ロイロノートのシンキングツールに物語の骨格を箇条書きすることができ、最終的にはその子なりの解釈の加わった成果文を書き上げることができました。
    「だったらこうしてみたら」は子どもに「考え続けていいんだよ」というメッセージを送り、心理的安全性を教室内に生み出してくれると思っています。

    まとめ

    私はこの本からたくさんのことを学びました。
    この本は決して教育書ではありませんが、実は、この視点は最新の教育政策とも響き合っており、「論点整理」(2025年9月25日 文部科学省教育課程企画特別部会)で示されたことと多くの共通点が確認できます。
    この本が述べている「失敗を歓迎する空気をつくり、子どもの挑戦時間を確保」することができれば、『生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手』が育つのではないかと考えています。 また、私が積極的になりきれないときや、うまくいかないと感じるときに読み返すと、不思議と力が湧いてきます。

    併せて読みたい本

    • ・M.チクセントミハイ『フロ-体験喜びの現象学』世界思想ゼミナール 1996年
    • ・荒木香織『ラグビー日本代表を変えた心の鍛え方』講談社 2016年
    仲野和義先生

    仲野和義(なかの‧かずよし)

    大阪府・富田林市立向陽台小学校教諭

    全国国語授業研究会/日本国語教育学会/日本学級力向上研究会

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