「筆者の考え」と対話しよう ―「カミツキガメは悪者か」―
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執筆者: 安達 真理子
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本教材の明快な筆者の考えや主張を受け、なぜそう言い切れるのか、その根拠や理由を追究し、筆者と対話してゆく授業づくりについて、安達真理子先生(カリタス小学校)にご提案いただきました。
実体験に基づく筆者の強いメッセージとタイトルの問いかけを生かして、子どもたちの自分事としての主体的な読みを引き出します。
目次
本教材では、「筆者の考え」がキーとなる
説明文の教材で、本文中に筆者の考えが強く打ち出されるのは、中学年からと言える。知識を伝授するタイプが多い低学年教材に対して、中学年の教材では読者に問題を提起して自分の考えをもつよう促すタイプの文体が出現する。筆者の立場や専門性が明確で、豊かな経験や研究実績に基づいて書き下ろされた教材が多くなるのである。
本教材は、特にその傾向が強い。筆者・松沢陽士は、外来種の撮影をライフワークとする水中カメラマンであり、外来種が生態系や人間の生活にもたらす問題に関心をもってほしいという願いが、本教材で表現されている。
「終わり」の叙述を見ると、筆者はカミツキガメに対して「幸せではない」「悲しい生き物」と明言している。また、「そんなカミツキガメが幸せではないことは、きっとだれにでも分かるはずです。」(⑰段落)、「カミツキガメのような悲しい生き物をふやさないためには、どうすればよいのか。わたしたち一人ひとりが、生き物をかうときのせきにんとルールについて考えなければなりません。」(⑱段落)にある文末表現には、「明言」を超えて「断言」ともいえる程強い主張がある。
これらの筆者の考えに対して、3年生がどのような反応を示し、どのような考えを形成することができるかが鍵となる。
